■戦略的な「ホットポイント」
改めて、陸ではなく海を中心に東アジアの地図を眺めてみよう。パラオの重要性は一目瞭然だ。東経160度線以西の太平洋を担当海域とする米国第七艦隊は、このミクロネシア一帯で海洋軍事力を強める中国とにらみ合っている。
中国の軍事戦略上の概念では、日本の九州―沖縄―台湾―フィリピン・ルソン島―ボルネオ島・ブルネイ・マレーシアを結ぶ線は「第1列島線」と呼ばれる。中国にとって対米防衛ラインだとされる。
その外側にあたる伊豆諸島―グアム・サイパン―パラオ―パプアニューギニアをつないで弧を描くラインが「第2列島線」。パラオはまさにその中心とも呼べる要衝にある。第2列島線は、台湾に有事が起きた際に、中国海軍が米海軍の増援を妨害する海域と考えられている。
軍事力の増強で第1列島線の海域での海軍活動に自信を深めた中国が、いま注目しているのが、この第2列島線だとされる。パラオが中国だけでなく、台湾、日本、米国にとっても戦略的に極めて重要な「ホットポイント」であることが分かるだろう。
■人口2万人の熱烈な親日国
そのパラオが、熱烈な親日国であることは、あまり知られていない。詳しくは番組をみていただきたいが、スペイン→ドイツ→日本→米国と統治国が移り変わったパラオの人々の生活には、今なお多くの「日本語」が息づいている。
パラオ共和国の一部であるペリリュー島は、太平洋戦争中日米間で激しい戦いが繰り広げられた古戦場だ。多くの戦死者の鎮魂のため、今も「ペリリュー神社」が、ひっそりと建っている。地元民の手で戦跡を保護し、悲惨な戦争の歴史を今に伝える努力を続けているのが、パラオ共和国である。
人口2万人の小国といえども、日本を慕い、日本の価値観や文化を理解してくれる国が、南太平洋に浮かんでいる。米中の大国の間に挟まれ、国際政治の風向き次第では、荒波にのまれて沈没しかねない小さな国である。
東アジア地域と世界の平和と繁栄のために、私たち日本人と日本国は何ができるだろう。美しい南洋の島国の地に立ち、取材班がとらえた衝撃的な映像の数々から、「未来世紀ジパング」のあるべき姿が見えてくる。
「私が見た『未来世紀ジパング』」はテレビ東京系列で毎週月曜夜10時から放送する「日経スペシャル 未来世紀ジパング~沸騰現場の経済学~」(http://www.tv-tokyo.co.jp/zipangu/)と連動し、日本のこれからを左右する世界の動きを番組コメンテーターの目で伝えます。随時掲載します。筆者が登場する「沸騰! 太平洋の親日国パラオ」は11月4日放送の予定です。
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