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退職拒否者への出向命令に無効判決
11月12日 17時59分

退職拒否者への出向命令に無効判決
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東京に本社がある大手精密機械メーカーの社員2人が希望退職を拒否したために子会社に出向させられたのは人事権の乱用だとして出向命令の無効などを求めたのに対し、東京地方裁判所は12日、「社員が自主退職することを期待して行われた出向命令とみられ、人事権の乱用だ」として出向命令は無効だとする判決を言い渡しました。

この裁判は東京・中央区に本社がある大手精密機械メーカー「リコー」の40代と50代の男性社員2人が起こしました。
2人は製品開発などを手がけていましたが、おととし、業績の悪化で人員削減を進めていた会社側から、希望退職を勧められ、これを断ったところ子会社への出向を命じられたことについて、自主退職を促すという不当な目的に基づくもので人事権の乱用だとして出向命令の無効などを求めていました。
これに対し会社側は「出向は人員削減とは別に当初から計画されていたことであり、雇用維持と調整のために必要だった」と主張していました。
12日の判決で東京地方裁判所の篠原絵理裁判官は「出向先は立ち仕事や単純作業が中心で原告のキャリアなどに配慮したものとは言い難く、身体的、精神的にも負担が大きいと推察される。原告が自主退職に踏み切ることを期待して行われた出向命令とみられ、人事権の乱用だ」として出向命令は無効だという判断を示しました。

原告社員「速やかに職場に戻して」

今回の判決について原告の社員は「出向命令が無効と判断されて本当によかった。会社は判決を真摯(しんし)に受け止めて、速やかに技術者に見合った職場に戻してほしい」と話しています。
また、原告の代理人を務める棗一郎弁護士は「リストラを目的に企業が何をしてもよいわけではないことが示され、その意義は大きい。リーマンショック以降、希望退職に応じなかった社員に無理な出向を命じるケースはほかの企業でも相次いでいるが、今回の判決を重く受け止めてほしい」と話しています。

出向までの経緯

出向命令の無効を求めた社員の1人は51歳。
入社後、20年余りにわたってプリンターなどに使われる電子回路などの開発を手掛けてきました。
取得した特許は100を超え、業績が評価されて何度も社内表彰を受けたといいます。
しかし、おととし5月、会社が業績の悪化を受けてグループ全体でおよそ1万人を削減する計画を打ち出しました。
男性はその2か月後に上司に呼び出され「退職金を上積みするので希望退職してはどうか」と勧められました。
50歳を超え再就職先が見つかる保証がないため、男性がこれを断ると「残るのであれば意に沿わない仕事になるだろう」と告げられ、その年の9月に子会社への出向を命じられました。
男性はなぜ自分が希望退職の対象者に選ばれたのか会社側に尋ねましたが「人事のなかで総合的に判断された」という説明で、具体的な理由などは示されなかったということです。
男性のように希望退職を断って出向や配置転換となった社員はグループ全体で152人に上ったということです。
男性は出向後、物流センターで働くことになり商品にラベルを貼ったり、段ボール箱に詰めたりする仕事に変わりました。
男性は「これまで会社に貢献してきたつもりだが、突然、出向を命じられ、信じられない気持ちだった。出向は、早期退職に応じないとこうなるという、見せしめ的な意味があったと思う。開発業務に戻って再び活躍したいという思いは強く、早く出向を取り消してほしい」と話しています。

「非常に残念」会社側が控訴

今回の判決についてリコーは「出向命令などが違法かどうかについては当社の主張が理解されたと思っているが、出向命令の有効性については十分に理解されず非常に残念だ。今後の健全な事業の持続や最大限の雇用確保のため高等裁判所の判断を得たい」とコメントし控訴しました。

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