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日本版NSCの正体 - 参謀本部、内閣情報室、満鉄調査部
日本版NSCと秘密保護法の問題を考えている。前回、東京裁判で満州事変に関する審理が始まった件を簡単に紹介した。J-NSCは戦争と監視のための組織だが、何より、そこで作業されるのは謀略の立案である。1928年の張作霖爆殺事件、1931年の柳条湖事件、1936年の第一次上海事変、日本軍が中国侵略の過程で惹き起こした謀略は数多いが、それらの歴史を一つ一つ確認して詳しく検証することが、今、まさに求められているように思われてならず、手元にある本を読み始めた。加藤陽子の岩波新書「満州事変から日中戦争へ」は、昨年購入して、軽く斜め読みしただけだったが、今回はマーカーを引いて付箋紙を貼りながら熟読している。正直なところ、読み直し始めてすぐに顔面蒼白になった。感想が昨年と全く違う。おそらく、この本を読んでいる誰もが同じ気分で慄然となっているはずで、ということは、他ならぬ著者の加藤陽子自身が、眼前で進行中の政治に直面して身震いする毎日だろう。あまりに現在の政治の姿が生々しく投影されていて驚かされる。本の半ば、張作霖爆殺事件の件を読んでいて、次のような記述を見つけた。「事件は、関東軍高級参謀・河本大作らによって準備されたものだった。河本は、21年3月から23年8月まで北京の公使館付武官補佐官を、その後24年8月まで参謀本部支那課支那班長を務めた人物であった」(P.90)。


「事件から一ヶ月余り前の4月27日、参謀本部第一部長(作戦)・荒木貞夫と第二部長(情報)・松井石根宛て河本が出した書翰が残っている」(P.90)。この一文に釘付けになった。理由は、J-NSCの組織編成が念頭に浮かんだからだ。11/9の産経の記事にこう説明されている。「外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)の事務局『国家安全保障局』(安保局)の組織編成の全容が8日、分かった」「実務を担う約60人のスタッフは『総括』、テーマ別の『戦略』『情報』、地域別の『同盟・友好国』『中国・北朝鮮』『その他地域』の6部門に配置。総合調整役となる総括が筆頭部門に位置づけられ、トップに防衛官僚を起用する」「情報部門のトップには内調出向中の警察官僚を充て、安保局と内調の情報共有を徹底させる」。J-NSCの組織は、旧参謀本部がベースになっていて、旧大本営と旧内閣情報局が一体になった恐るべき国家機関に他ならない。これは、左派が標語で言っているような「戦争ができる国になる」というような悠長な性質のものではない。戦争こそが唯一の任務であり、戦争と戦時体制の司令塔なのだ。「戦争ができる国になる」というのは間違いで、「戦争を始める」のである。今後、国民はこの組織に長くお世話になる。この司令塔の下で戦争を戦い、指示と命令に従って生きるのだ。設置法案はすでに与野党多数の賛成で成立、安保局も来年1月に稼働が始まる。

ネットの情報から、「参謀本部」の組織について見てみよう。第一部と第二部に大きく分かれていて、第一部の中に作戦課(第2課)があり、第二部の中にソ連課(第5課)、欧米課(第6課)、支那課(第7課)、謀略課(第8課)が置かれている。「謀略課」、堂々とした組織名称であり、さすがに参謀本部である。その謀略課の中に「総括班」という名称の小組織もある。J-NSCの「総括班」は、旧参謀本部の「総括班」を意識し、意図的に連想させるものに違いなく、安倍晋三らしい趣味の悪さと内外への挑発の思惑を示している。こうやって二重写しにすると、J-NSCの目的と機能は論を俟たず明白で、その組織の設計思想(アーキテクチャー)もよく伝わってくるではないか。J-NSCの「戦略班」が参謀本部の第一部(作戦)であり、J-NSCの「同盟・友好国班」「中国・北朝鮮班」「その他地域班」が参謀本部の第二部(情報)だ。J-NSCの「中国・北朝鮮班」が、まさしく参謀本部の「支那課」と「謀略課」である。J-NSCの筆頭部門に位置する「総括班」は、産経の記事にあるとおり「総合調整役」であり、横の連絡を束ねる事務局中の事務局で、もっと言えば、安倍晋三を天皇とする御前会議を仕切る事務局なのだろう。J-NSCの「戦略班」は、実際に軍(自衛隊)を動かす作戦を考案するチームで、米軍と密に連携して指図に従い、また国際法や国内法や自治体との対処を勘案して、戦闘行動や動員態勢の法的整合性を図る部署だ。

J-NSCの「情報班」は、内閣調査室の軍事版であり、簡単に表現すればJ-CIAである。敵国の諜報活動を探査し、国内の要注意市民を監視し、それらに対して破壊と抑止の工作を仕掛ける秘密警察の司令部だ。注意する必要があるのは、単に内調の軍事版ではなく、そこに戦前の内閣情報局と満鉄調査部の役割が大きく入り込んでいる点である。安倍晋三の趣味の反映でもあり、日本右翼の長年の悲願を実現した形でもある。内閣情報局について、ネットの情報を見てみよう。「1940年12月6日に発足し、戦争に向けた世論形成、プロパガンダと思想取締の強化を目的に、内閣情報部と外務省情報部、陸軍省情報部、海軍省軍事普及部、内務省警保局図書課、逓信省電務局電務課の各省・各部課に分属されていた情報事務を統合して設置された日本の内閣直属の機関である。国内の情報蒐集、戦時下における言論・出版・文化の統制、マスコミの統合や文化人の組織化、および銃後の国民に対するプロパガンダを内務省・陸軍省などとともに行った政府機関である」。何とも毒々しい説明だが、この機能をJ-NSCの「情報班」が持つ。つまり、電通が入る。「情報班」は基本的に警察(内務官僚)のミッションとテリトリーだが、警察(内調・公安)だけでなく、警察と電通の二枚看板なのである。電通はマスコミとネットを工作する主役だ。おそらく、私や岩上安身や田中龍作や孫崎享などがご厄介になるのは、この「情報班」だろう。

J-NSCの「情報班」には、実際に電通の関係者が入り込んで工作に従事するはずだが、具体的に活動内容が明らかにされるかどうかは分からない。J-NSCの内部は秘密保護法の刑事罰によってシャッターが閉じられ、鉄のカーテンが引かれた極秘空間になる。その真実にアクセスを試みた者は刑務所に送られる。電通の工作員が、TWをどのようにアドミニし、トレンドを巧妙に細工し、アカウントに手を加えてキーワード検索の表示を操作しているか、それらは重要な「特定秘密」になるだろう。Yahooトップページのトピ表示の介入も、各掲示板の管理工作も、電通と警察だけが知るところで、重要な「特定秘密」とされて隠蔽され、日本が敗戦して降伏したときに証言で実態が明らかにされるだろう。オーウェルの「1984年」の世界は始まっている。それは最早、「近未来のディストピア」ではない。今のわれわれの社会の現実だ。現在の電通の不気味な正体について、よく戦前の満鉄調査部に擬せられて語られる。言い得て妙であり、本質を射抜いた指摘だ。これまで、日本政府の中枢は霞ヶ関の大蔵省(財務省)だった。大蔵省が官僚の中の官僚と言われ、国税を握り、現業官庁を牛耳り、政治家を動かし、政府の重要政策を決めてきた。だが、J-NSCの安保局(J-NSA)が設置された今後は、少し権力構造の中身が変わってくる。霞ヶ関と永田町の権力の中心で大蔵省が全体を睥睨した時代は、戦争のない平和な時代の話だったということになる。

戦争(中国との戦争)が内政を方向づけていく今後は、法律も予算もJ-NSAが優先権を持って官僚機構に指令を出し、J-NSAの方針に従わせる構図になるだろう。平時ではなく戦時だから、国家権力の中心も変わる。統帥権の独立であり、軍部の台頭だ。事実上の国家権力の最高意思決定機関になり、戦争指導部となり、旧ソ連KGBのような国民を戦慄させる秘密警察の親玉となる。60人体制で来年1月に立ち上がるJ-NSA。産経の記事にはオフィスの立地が示されていない。通常、官邸(永田町)に近い霞ヶ関と考えられるが、市ヶ谷が言い張り、安倍晋三が毒々しい趣味と挑発で悪乗りして、またぞろ恐ろしい事態になるのではと危惧を覚える。まさかとは思うが、三宅坂の元の社民党本部ビルの場所が狙われているという可能性はないだろうか。陸軍参謀本部の建物があった近くだ。現状、左派による秘密保護法反対の言説は、「米国の言いなりになって」という一面が強調されすぎていると思う。それは誤りではないけれど、その点ばかりが喧伝されると、何か日本政府が米国に無理強いされて、嫌々ながら軍事法制を、というニュアンスの捉え方に聞こえられがちだ。だが、それは違う。日本右翼の方がむしろ中国との戦争準備を急ぎ、戦時体制への移行に執着し、戦前・戦中の日本のレジームの復活に狂奔している。この点を看過してはいけない。われわれは、秘密保護法の阻止に全力を傾注しないといけないけれど、日本版NSCの内実にも目を凝らす必要がある。

どこの国にもNSCは存在するなどと言うような、そんな安易な認識と了解で済ませられるような生易しいものではない。J-NSCは、野心的な軍事官僚が謀略を企画立案する部署だ。河本大作や石原莞爾や板垣征四郎や辻政信が跋扈し暗躍する軍事中枢の巣窟だ。J-NSCの密室で軍略国策を主導したところの、安倍晋三(天皇)の覚えめでたい臣下たちが、中国との戦争の前線で指揮をとり、戦時下の国政で主要閣僚に昇進して権勢をふるい、日本の敗戦で戦争が終わった後、A級戦犯の被告人として断罪されるのである。そうした参謀たちが謀計を策す場だ。そして重要なことだが、次の戦争が侵略戦争だから、J-NSCは議事録を残さないのである。なぜなら、戦争に負けて戦犯になったとき、謀略と奇襲を計画した主犯として証拠を押さえられる。責任追及されたときに法廷でシラを切るために、謀略作戦の証拠はすべて隠滅する。それがJ-NSCの正体だ。日本の市民一般は、左派も含めて、あまりに現在の政治の真相に鈍感すぎる。先日、秘密保護法反対の官邸前デモに参加したとき、主催者の一人が、ギターを抱えて、「秘密、秘密、秘密、秘密、秘密のアッコちゃん」とか替え歌に興じていた。私はこういう風景に出食わすと、反射的に嫌悪感と羞恥心でいっぱいになり、次からは絶対にデモに出るのはやめようと決意する。何でこういう軽薄な文化が左派で愛好されているのか、よく分からないが、必ずと言っていいほど立ち合う。その表象は、緊張感のない福島瑞穂の護憲マンネリズムに重なる。

平和ボケなのだ。柳条湖事件が、真珠湾攻撃が計画されようとしているときに、戦時下に入ろうとしているときに、バッドセンスな「秘密のアッコちゃん」の替え歌。



by thessalonike5 | 2013-11-12 23:30 | Trackback | Comments(0)
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