産経新聞 11月3日(日)7時55分配信
インターネットへの投稿の“支持率”を示すフェイスブック(FB)の「いいね!」や動画の再生回数を水増しするサービスが横行している。数千件を水増しして手数料は5000円程度。新商品の評判や個人の権威を箔(はく)付けする「新手のステルスマーケティング(ステマ)」との指摘もあり、だまされないよう注意が必要だ。(伊藤鉄平)
■大半は外国人
インターネットを使った選挙運動が解禁された今年7月の参院選。比例で出馬し、落選した金子善次郎元衆院議員(70)=自民=が公示直前に開設したツイッターは十数件の投稿しかなかったにもかかわらず、わずか約1カ月でフォロワー(読者)数が約1万人に急増した。
一部国内の支持者を除けば、その大半は外国人。FBの「いいね!」も開設後約1カ月で2千件を突破したが、8割超はトルコ人だった。
自民党の公式ツイッターでも当時フォロワーは6万5千人程度。金子氏の秘書は「トルコとの政策上の交流もなく、なぜ増えたのか分からない」と話す。
■海外に“工場”
インターネット上にはFBの「いいね!」などを販売するサービスがある。ネット業者のホームページ(HP)には水増しの価格表が掲載され、「効率的に宣伝を」などのあおり文句が並ぶ。増やしたいページを指定し、代金を支払えば「いいね!」が増える仕組みだ。ツイッターのフォロワーや、動画投稿サイト「ユーチューブ」の再生回数を増やすサービスもある。
同サービスを1年ほど前に始めたという20代の会社員男性は、取材に対し「アルバイト感覚で始めた。どうやって増やすかは企業秘密だが自分でやっているわけではない」と述べた。
関係者によると海外にはFBの「いいね!」などを量産する“工場”が存在する。中国やバングラデシュなど人件費の安い国が中心で、複数のアカウントを使って架空の人物になりすまし「いいね!」を繰り返す。
国内のサービス業者も受注後、こうした海外の工場へ発注している可能性が高く、中には「フォロワーの国籍は選べません」などとただし書きをしているサイトもある。
参院選における金子氏のケースも発覚当初、水増しの疑いが持たれたが、同氏の秘書は「スタッフにも確認したが利用した形跡はなかった」と説明。同氏は活動を休止し、9月末で事務所も閉鎖されたため、真相はやぶの中だ。
■ステマの一種
インターネット事情に詳しいネット広告大手「アイレップ」の紺野俊介社長(38)によると、こうしたサービスは海外が発祥で、2年ほど前から確認されている。
紺野氏は「企業の新商品など『いいね!』が増えれば、注目度も高まる。一見広告に見せかけない、いわゆるステマの一種だ」と指摘。「『いいね!』やフォロワーの内訳を細かく見れば、外国人だらけなど不自然な点が多く水増しはすぐに分かるが、普通はそこまで細かく見ない。消費者を誤信させる行為だ」と批判する。
紺野氏によると、ネット上では「評価されるものが評価される」という法則が強く働く。例えば、再生回数が上位の「注目」動画ほど人々の関心を集め、さらに再生回数が増える。いったん高評価を受ければ、その後は“雪だるま式”に評価が高まる傾向にある。
評価の水増しは、こうした現象を起こす引き金になるほか、フォロワー数を水増しした個人が「ネットの専門家」を標榜(ひょうぼう)し、コンサルタント業としての権威を高めるケースも散見されるという。また「ネットでの宣伝活動がうまくいっていると上司に報告するため、企業の担当者が、社内向けに水増しを図るケースも多いのではないか」とも述べた。
■依頼者側に行政処分も 景品表示法違反
口コミなどを装い、一見して広告に見せかけない「ステマ」。消費者庁は昨年5月、ガイドラインを改定し、商品やサービスについて、ネット上での評価を不当に高めるなどの行為は、景品表示法違反にあたる可能性があると注意を呼び掛けている。
同庁によると、改定は昨年1月に発覚した飲食店の人気ランキングサイト「食べログ」での評価偽装問題を受けて行われた。
同問題では、飲食店側から金銭を受け取った「やらせ業者」が高評価の投稿を繰り返して、順位を操作していたことが判明した。
その後、宣伝を依頼されたタレントら芸能人がブログで商品をほめるなどといった「ステマ」が発覚し、批判を浴びた。
同庁によると、悪質なケースには行政処分も科されるが、これまでに実際に処分されたケースはない。処罰の対象はやらせ業者でなく、依頼者側になるという。
最終更新:11月3日(日)14時38分
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