復興加速化案:除染、分担に曖昧さ 国と東電続く駆け引き
毎日新聞 2013年11月12日 12時55分(最終更新 11月12日 14時39分)
与党の福島復興加速化提言は「除染は東電、中間貯蔵は国」との大枠は示したものの、除染をめぐる国と東電の費用分担に曖昧さを残した。除染費用が青天井で膨らむ事態を避ける方向で政府・与党は一致しているが、徹底した除染を求める声も強い。国費投入で東電の費用負担は以前より縮小する見通しだが、なお巨額だ。政府はまず、放射性廃棄物の中間貯蔵施設の具体化を本格化させるが、国と東電の綱引きは今後も続きそうだ。【清水憲司、大久保渉、浜中慎哉】
提言は策定段階から、関係省庁が関わり、事実上、政府・与党の検討方針として策定された。経産省は「将来負担が青天井で経営が見通せなければ、人材流出で廃炉や汚染水対策にも影響が出かねない」とする東電の主張を背景に、負担軽減を働きかけた。一方、国費投入に伴う財政負担を避けたい財務省は「原発事故を起こした東電が最後まで責任を負うのが原則だ」として譲らなかった。双方の主張を踏まえて調整をしたのが自民党の東日本大震災復興加速化本部だった。
提言では、中間貯蔵施設は「建設・管理に、費用の確保を含め国が万全を期すよう検討すること」と国費投入を明記。一方、除染は「現在計画されている(東電に義務づけられた)除染を実施した後の取組は、(国費による)公共事業的観点から検討すること」とした。ただ、「除染」ではなく「取組」と曖昧に記述されている。
政府・与党による今回の仕分けは、現在計画されている除染の後は、追加的な除染を基本的に行わないことが前提だ。財務省や環境省は「除染地域の集中や作業効率化で、東電に請求する費用は2兆〜3兆円程度に収まる」とそろばんをはじく。すでに政府が立て替えた除染費用を東電が支払い拒否する事案も増えており、東電に負担を続けさせるためにも、費用を抑えたい思いがにじむ。
一方、福島選出の与党議員などの間には「住民の希望があれば、幅広く追加除染を実施すべきだ」との意見が根強く、財務省などの想定を疑問視する。ただ、追加除染が必要になった場合、東電が賄うのか、国や自治体の事業として行うのかは明確ではない。
自民党の大島理森・東日本大震災復興加速化本部長は11日の毎日新聞のインタビューに「計画にある除染はすべて東電に支払いを求める」と述べるにとどまり、追加除染の負担については明言を避けた。政府や東電の間で火種になりそうだ。