◆提言の要旨

 1.新しい生活の支援と健康管理・健康不安対策

 ・長期に帰還困難な地域の方々が新しい生活を選択するために必要な判断材料を、国は自治体と共働して提示し、支援を行う責任がある。

 ・帰還困難区域において、放射線量低減と帰還の見通し(地元の意向、何年後にどの程度の放射線量以下になり、今後何年間は帰還困難であるかも含む)を明確に示すこと。

 ・国は自治体の意向を十分に踏まえ、町村内で新たな街づくりを選択する自治体には「町村内復興拠点」、帰還困難な場合には「町村外復興拠点」の絵姿を検討し、住民に早期に示すこと。

 ・転居を決めた住民の方々が移住先での住宅確保が容易になるよう、どのような賠償が可能かを検討し、年内に示すこと。

 ・「放射線量に応じた防護措置の具体化」の検討を急ぎ、健康管理・不安払拭(ふっしょく)に最大限の努力を行うこと。その際、「場の線量」ではなく実際の「個人の線量」を基にし、被曝(ひばく)低減を図るための対策を講じること。

 2.原子力損害賠償

 ・避難指示解除後の賠償の継続期間や早期帰還者の追加賠償のあり方について、年内に結論を出すこと。

 ・避難指示が6年を超える場合の精神的損害の賠償に関しては、状況に応じた追加賠償の方向を年内に示すこと。

 ・原子力損害賠償に関する消滅時効に対する地元の不安を払拭(ふっしょく)するため、時効停止・延長に関する法的措置を含む対応策を、与党と連携して検討すること。

 3.除染・中間貯蔵施設の加速

 ・除染は当面、帰還可能な区域を優先して投入する資源を集中すること。

 ・現在計画されている除染を実施した後の更なる取り組みについては、国は、復興のインフラ整備・生活環境整備という公共事業的観点から、帰還者・移住者の定住環境の整備など、地域再生に向けた取り組みとして検討すること。

 ・中間貯蔵施設は、30年にわたって安定的に継続する事業であり、国が責任を持って管理し、最終処分場に搬送する必要がある。この建設・管理には、費用の確保を含めて国が万全を期すよう検討すること。ただし、その際、復興財源を使うことがあってはならず、エネルギー施策の中で追加的・安定的財源の確保に努めなければならない。

 ・中間貯蔵施設の運営管理の実施体制についても、独立行政法人や特殊会社などの専門組織の有用性について検討し、早期に結論を得ること。

 4.廃炉・汚染水対策

 ・今回の原子力事故からの廃炉・汚染水対策を、東電のみで乗り切らせることは困難である。国、東電、その他国内外の関係者がそれぞれの能力や資源(資金、人材、技術など)を結集し、総力戦で国家プロジェクトを完遂しなければならない。

 ・原子力事業や災害に関する各法律において、「国がより前面に出る」ための国の法的立場を明確にした上で、必要な資金の拠出や実施体制への関与のあり方・規模を早期に明確化すること。

 ・実施体制として、東電の廃炉事業部門を社内分社化することをはじめ、完全分社化する、独立行政法人化するなどの様々な議論があり、明確かつ実現可能な体制を構築すべく検討を行い、早期に結論を得ること。

 5.国民の理解

 ・国が関与する大前提として、東電のより一層の徹底した社内合理化を含めた自己改革が必要。

 ・東電は電力供給という本来の公共的責任も果たさなければならない。今後とも東電の経営を維持しながら、国と連携して諸課題に対応する現実的な体制を考えることが不可欠。