学校と私:母を手伝い家で料理、家庭科でほめられた=ラーメン「博多一風堂」創業者・河原成美さん
毎日新聞 2012年03月26日 東京朝刊
小さい頃から台所で母の手伝いをよくしていました。小学4年生の時だったと思いますが、家庭科の授業でご飯、みそ汁、卵焼きを作ったら先生から「おいしい」とほめられたんです。家ではごく普通にしていた事を思わぬ形で評価されてすごくうれしかった。振り返れば、あれが飲食の道に進むきっかけだったように思えます。
友達と「冒険ごっこ」をする時は、魚肉ソーセージをパンに入れて「非常食」として持って行ったり、中学生になると当時発売されたばかりのインスタントラーメンに野菜を入れ、友人たちに食べさせたりしました。父と兄たちがマージャンする時の夜食を作るのも私の役目でした。中学、高校では「早弁」の“常習犯”でした。昼食時間になると、空になった弁当箱を持ってみんなから少しずつおかずをもらっていました。竹沢君ちのクジラの竜田揚げ、うまかったなあ。うちからインスタントラーメンやお茶漬けを持って行き教室で売ったりもしました。
これまで料理は大体ほめられましたが、一度だけ否定されたことがあります。中学の担任の香月先生。先生からは下宿先で特別に数学を習っていたのですが、ある日先生が「お好み焼きが好き」とおっしゃるので、私が家で振る舞うことにしました。作ったのは福岡の郷土料理ふな焼き。小麦粉を水で溶いて薄く焼いてネギなどを入れて包んだものですが、先生は目をひんむき「これは違う!」。今思うと大人げないですよね(笑い)。
03年から小学校で高学年を対象に出前授業を開いています。ラーメンとギョーザ作りの体験を通して食の大切さや作る楽しさを伝えています。これまで約90校で約9000人。この中からいつか自分のように自信をつけて飲食関連の仕事に進む子どもが出てくるかもしれないと考えるとうれしくなりますね。【聞き手・三木陽介】
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