「ついに来たか、西新井にも」ーー。
突如、街中に現れたデモ隊を見つめていた地元在住の男性は、IWJの取材に対しこのように答えた。
2013年11月10日、東京都足立区で初となる排外差別デモが行われ、保木間公園を出発した約30人のデモ隊はシュプレヒコールを唱えながら西新井駅に向かった。デモの呼びかけ文には、以下のような趣旨が書かれている。
「足立区は外国人生活保護費が東京で800件(2012年)とダントツ。生活保護費も420億円で区民税収374億円を超し、受給者は約2万5000人で都内23区では最も多く、なんと生活保護費が税収を上回る体たらくの、足立区でデモを行います。今や日本の生活保護は大きな問題です。
憲法25条が定めた”国民が最低限度の生活を営む権利”であるにもかかわらず、当の日本国民がなかなかもらえない生活保護。これこそ、日本人差別ではないでしょうか?」
彼らは、外国人受給者が多いがゆえに、税収を上回るほどの生活保護費を足立区が負担しているかのように訴えているが、そもそも、税収と生活保護費を比較することに何の意味もない。
安田浩一氏、「何を主張したいのか全く分からない」
市町村及び都道府県が支弁した生活保護費の4分の3は、国が負担しなければならないと法律で定められているほか、残りの4分の1も東京都との合算である。足立区の生活保護費は区が全額を持ちだしているわけではないのだ。「日本国民がなかなかもらえない生活保護」という主張も、外国人が受給していることと何の関連性もない。
しかも、「違法!外国人 生活保護不正受給糾弾デモ in 足立」と称したこのデモだが、区としては国籍の把握は不要であるとし、外国人が不正受給しているというデータは一切存在していないという。
「デモ隊のシュプレヒコール自体が破綻している」と語ったのは、取材に訪れていたジャーナリストの安田浩一氏だが、安田氏は「外国人が生活保護を受給するのがいけないのか、不正受給がいけないのか、デモの主張が全く分からない。おそらく彼らは生活保護制度というものをまるで理解していないのだろう」とIWJのインタビューに対して語った。
地元男性、「みんなでうまくやっているのに」
デモコースとなった竹ノ塚から西新井周辺には、新大久保でいうところのコリアンタウンのような町並みはないが、足立区は新宿区と江戸川区に次いで外国人が多く居住するエリアだ。デモが散会した後に地元の男性に話を聞くと、「(新大久保で行なわれているデモが)ついに来たか、西新井にも。この地域には外国人が多く住んでいる。問題が全くないわけではないが、それでもみんなでうまくやっているのに」と答え、眉をしかめた。
これまで、新大久保の排外差別デモに抗議してきた足立区在住の男性もカウンターとして参加。「自分の地元ということで、いつにも増して怒りと嫌悪感があった。次回も行なわれるのであれば、デモの前になんとか止めたい。区役所や警察署に苦情を入れたり、周囲にもこんなひどい連中がいるということを地元の友人などにも周知し、差別主義者を増やさないように声を高めていきたい」と語った。
約1時間ほど続いたデモでは、「在日ゴキブリ朝鮮人」、「朝鮮人を叩きだせ」など、新大久保と変わらない文言も飛び交っていた。(IWJ・ぎぎまき)
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