泉こなたの災難

「ここ…どこ?」
いつの間にか不思議な森に迷い込んだ制服を着た青いロングヘアー高校生
泉こなたの第一声はこれだった。

学校帰り、彼女はいつものように歩いていたら、知らない間にこの森に迷い込んでいたのである。
いくらなんでも説明不足と思うだろう、しかしこれは事実。 どうしてこうなったかは彼女もわからない。

この世界が彼女がいた世界とは全く違うということを彼女自身は気づかなかった。

こなたはしばらく自分の周りをきょろきょろと見回しているとこの森がなんだか幻想的な雰囲気でできていると気づく。
「なんてゆーか、明るいねぇ…」
そう、この森は真夜中なのに明るい、
彼女は蛍の光が森を照らしていると思っていたがそれは違っていた。

この森を照らす光は妖精が放っているものであることを彼女は気づかなかった。

しばらくボーッとしていたこなただったが、しばらくして…
「ちょっと回ってみるか…」
と、彼女はスックと立ち上がった。
このままいても何も変わらない なんとなくそう感じたからである。
(とりあえず…前に行ってみるしかないか…)
西も東もわからない状態のこなたはまず歩くことから始める。
彼女は風を突き抜けるように急ぎ足で歩いていく。
森の中はわりと明るいため、転ぶことも無いだろう。
(明るくてもやっぱこわいなぁ…) こなたはちょっとだけそう思った。  それでも彼女はそれを振り切った。

何かをしないと何もおきない  これはよくある言葉である。




ドォン!!

「えっ!?」
出口を探していたこなたはその大きな音に驚いた。
(もしかして人がいる?) ここに迷い込んだ自分と同じような人がいるかもしれない
こなたはそんな淡い期待を少しだけ胸に秘め、その音のした方向に走った。 すごい勢いと速さで。

大きな音のした所で彼女が見たのは
うつ伏せになって倒れている青いジャケットを着た金髪の青年と、
頭に三つの角がある裸当然の女性がその青年を見下ろしている光景だった。



その女性の名は魔神皇アシュタルテー。
彼女はダークロアに所属していたが、同じくダークロアに所属していたあるMB(マインドブレイカー)の裏切りによってマインドブレイクされ、その裏切り者の僕(しもべ)と化していた。
そして現在、彼女は己の主を追う男と戦い、これを撃破した所であった。

「ふん、我が主の計画の邪魔するからこうなるのだ」
アシュタルテーははき捨てる。 この男は彼女とは知り合いだったがそれは過去の事である。
今の彼女にとって彼は『主の計画の邪魔をする敵』としか認識していないのであった。

そんな中、彼女は『ひ弱な』人間の気配を感じる。
「そこにいるのだろう? 人間」
彼女は嘲笑うかのように気配のする方向を向く。
そこには、どこかの学校の制服を着ている青い長髪の少女がいた。
その少女とは言うまでもない、こなたの事である。



「ひぃっ!」
こなたの背中に何かが走る。
親に0点のテストを見つけられた時のような『戦慄』である。
(ひえ〜ばれちゃった… どうしよ…)
こなたはどうすればいいのか短い時間に色々と思考するが、何も思いつかない。

「そこの人間、もしや見ていたか?」
アシュタルテーは問いかける。 彼女からは殺気に近いオーラが走っている。
「い、いえいえ! 滅相もございません! 何も見てない」
こなたは慌てて弁解する。 彼女の両手は自分の目を隠すように覆いかぶさっていた。
彼女自身突然森に迷い込んで、とりあえず森を出ようとまっすぐ歩いたらこんな光景に出くわすとは思っても見なかっただろう。
「まあいい、主からの命は下僕を増やせとのことだったから…」
アシュタルテーの体に巻きついていた大きくて白い蛇がピクリと動き始める 
「…え?」 こなたは戸惑う。
「貴様には私の下僕となってもらおう!」
その宣告と共に、白蛇がこなた目掛け飛びついてきた。

ダッ
「ひいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!! 何もみえない」
こなたは訳のわからない言葉を叫びながら一目散に逃げ出す。
彼女の足は速かった。 ただ、
「シャーッ!!」
白蛇の方が彼女よりも早かった。
そして、こなたは白蛇に巻きつかれてしまい身動きが取れなくなってしまった。

「ひぃ… ホントに私は何も…」
こなたはホロリ涙を流しながら言い訳しようとする。 ただ、その涙は「なんでこーなるのー?」と言わんばかりのものであるが…
「私は何もお前を殺そうとは思っていない」
アシュタルテーは半ば呆れ顔で言った。
その言葉を聞いたこなたはホッと胸をなでおろす。 (なぁんだ…てっきり殺すものかと思った)
といっても手は胸をなでる余裕など無い、何しろ体を蛇で締められてるのだから。
しかし、アシュタルテーの言葉が心の安息を突き破った。
「ただ、さっきも言ってたように、貴様には私の下僕として働いて貰おう」

「うえええぇぇぇぇ!?」




「ちょっ! 下僕って…」
こなたは戸惑いながら問いかける。 今更…
「まあ、貴様が思っているほど悪いものじゃない 寧ろいいものだ」
アシュタルテーは答えた。 しかしそんなことを言われても、こなたにはその言葉の意味が全くわからない。

「まあいい、やれ」
アシュタルテーの一声でこなたの体に巻きついていた白蛇は体と両腕から右腕にスルリと移動する。
そして、「あうっ!!」
こなたは突如、肉を貫く感覚に襲われた。
蛇はこなたの首筋にガブリと噛み付いていたのである。



「ひっ! ひああ… うぐぁ…ひぃ…」
白蛇に咬まれ悶絶するこなた。こなたはその蛇を引き剥がそうとするが、いくら引っ張ってもびくともしない
それどころか蛇がこなたの首筋に噛み付く力はどんどん増していき、それに反比例するかのようにこなたの体は麻痺していく。
「どうだ? 私の白蛇の牙にはある毒が備わってある このまま私の蛇が貴様を咬みつき続ければ貴様は私と同じ悪魔となるのだ」
アシュタルテーはこなたに噛み付く蛇に関する事をべらべらと説明する。
「ううあぁ…ぐぐっ、ああっ!」 しかし、その『毒』が全身に回っているこなたにはアシュタルテーの説明が届かない。
「まあ、ただの人間ではもう聞こえないか…」
アシュタルテーは、蛇に咬まれながら苦悶の表情を浮かべるこなたを見てフッと鼻で笑った。


「んぐぅ…あうぁ…ぐああっ!…あ、あはぁ…」
さっきまでは蛇に咬まれ苦しんでいたこなただったが、口からは苦痛と快感が入り混じった声が漏れ始める。
「んあぁ…ふあぁっ!」
こなたの口から次第に苦痛が消え始め、それとは逆に喘ぎ声が強くなっていき、
激しい快楽にこなたは口から舌をだらしなく出す。 そしてその口から涎をだらだらと垂れ流す姿はまさに獣。
これは白蛇の牙から発する人外の快楽という『毒』にこなたは翻弄されているのである。
無意識のうちにこなたの両手は蛇の頭を撫でる様に押さえつけている。 牙から注ぎ込まれる快感をもっと味わうためである。
(咬まれてるところからキモチイイの…来ちゃうよぉっ!!)
そう想うたびに彼女の心は体と共に蕩けていく
蛇の牙から流し込まれる快感に恍惚の表情を帯びるこなたは終幕を感じる。

「んああああっ!!」
ついにこなたは絶頂を迎えた。
その絶頂は彼女の中の快楽の第一幕を降ろし、次に変化という第二の幕を開けた。


こなたの青くて長い髪は紅色に変色し、長さは尻のあたりまで伸びる、
それが終わると今度は、小麦色の肌が血の通わぬ人外の蒼へと変色していく、
さらに、それが終わると吐き出すかのように出している舌の色、もとい口の色は肌よりも濃い青色に変色する、
さらにさらに、それが終わると両方のこめかみから直線的な角が生えていき、それと同時に耳はナイフのように尖っていった。
「そろそろいいだろう」


ピクリ 白蛇はアシュタルテーの言葉を聞いたのか、こなたの首筋から離れ、アシュタルテーの方に戻って彼女の体に巻きついた。
「立て」
アシュタルテーはヒトならざる者に変貌したまま倒れているこなたに命令する。
すると、こなたは目を瞑っているまま、「はい」と答え、ムクリと立ち上がった。
「そして、目覚めよ!」
その命令を聞いたこなたは目を開ける。
その眼は白目の部分が黒になっており、瞳は金色になっていた。その眼はまるで満月の夜のような眼だ。
そして彼女の背中のあたりに、堕天使を連想させる翼が生えていた。

その姿、まさに魔神。

「気分はどうだ?」
「はぁい、とってもキモチいいですぅ!
 夜は綺麗だし、満月も美しいし、風もキモチイイし、皇様がくださったこの体は心地いいし
 皇様の言ってた『いいこと』ってこの事だったんですね」
「そうか、それは良かった」
こなたは今の姿に心酔し、舌なめずりをする。 その表情は挑発的で官能的だった。
「では、我がしもべ魔神アシュタルテーよ、貴様に最初の命令を与える!」
「アイアイサー!!」
「まだ何も言ってないだろうが…」
主である魔神皇アシュタルテーに向かい敬礼する魔神アシュタルテー『こなた』に、皇は呆れた。
(コイツは馬鹿か…)と…。



それからそのすぐ直後、
「ん、んん…」
青年は目を覚ました。
「俺は一体…そうだ、俺はアイツを追って…」
そしてアイツにやられて倒れていたんだ… その事を思い出した彼は辺りを見回す。
「いない…やはりか…」
青年は自分が追っていたヤツはもうここにはいないだろうととあきらめる そんな時、
「ねえねえ、お兄さんお兄さん」
青年は背後から高校生らしいその声を聞く。
その声の方向を振り向くとそこには高校生位の紅いロングヘアーの少女がいた。
しかし、その少女は人間とは違って耳は尖っており、さらにこめかみには角が生えている。
いや、それ以前に青い肌、夜を連想させる目などがある。 その姿悪魔そのもの。
「なんでぇ? 今俺はある人を捜してるんだ 話は後にしてくれよ小悪魔ちゃん」
しかし、人間である青年は自分とは全く違う少女に動揺せずにジョークを交えてそう言った。
どうやら彼は『人外』に抵抗はないようだ。 これは彼自身ダークロアに専属MBとして所属していたからだろう。
そんな青年に向かい少女は問いかける。
「ある人? それってアシュタルテー様の事?」
アシュタルテー様 その言葉に青年はハッとする。
「何!? アシュタルテーだって!」
驚く青年の事を気にせずに少女は続ける。 しかし、その言葉は問いかけではなくなっていた。
「もうわかってるんだよ、あなたが皇様をしつこく追い回してること! ダークロアのMB、バァンさん!」
「クソっ! アシュタルテーめ、既に下僕を送り込んでたっつぅのか…」 青年ことバァンは舌打ちする。
「私の名前はは魔神アシュタルテー! 偉大な皇様によって魔神の悦びを得たしもべ!」
「要は変えられたってヤツかよ!? クソっ!なんて時代だ!!」
バァンはまたも舌打ちしながらも少女とは逆方向に逃げる。 魔神皇アシュタルテーを追う際にカードを全て忘れていたからだ。
「と、まあお約束は置いといてぇ…」
魔神の少女は余裕の表情で一つの光弾を掌から放つ、その光の弾は逃げるバァンに命中した。



(とりあえずアイツの事はあきらめてここから…)
バァンがそう思いながら少女から離れようとするが、少女から遠ざかるどころか逆に近くなっていく。
これは少女の放った光弾の影響である。 この光弾に当たってしまい体の自由を失っていたのだ。
それからバァンは体の自由を奪われたまま地面に座らされていた。
「オイ! 俺をどーするつもりだ? 小悪魔もとい悪魔」
「ひどい言い方だなぁ、殺しはしないよ だってこれは皇様の使命のためだもん」
「使命ってなんだよ…」
「使命ってのはさ 人間と交尾して子孫を生む事」 「それってまさか…」 「セックス」
「ブッ!!!」バァンは噴出した。
見かけが高校生くらい(そもそも制服を着ているのだからわかるものだが)の少女にそんな事言われたら驚くのが普通ではある
「細かい説明は後にして さっそくやらせていただきます」
「ぬぉい! まてコラ! やめろーっ!!」

………


そしてそれから数時間後、
「ふぅ、だいぶイッたかなあ? でも気持ちよかったぁ」
だいぶ激しく交わったのか、少女とバァンの周りにはお互いの服が脱ぎ散らされていた。
その激しさを象徴するかのように少女の陰部の周りには相当な量の精液が付いていた。
少女は散らばっている自分の服をかき集めて着なおす。 その後、少女は倒れたままのバァンに向かって笑顔で感謝の意を示した。
「お兄さん精子いっぱいくれてありがとね って聞いてないか…」
バァンも最初の時は抵抗したものの、少女の淫技によって何回もイッてしまった。 そのせいか彼はだいぶ上の空になっていた。
「じゃ、『子孫』を作る準備も終わったしそろそろ行くか」
制服を着終えた少女は背中の翼を羽ばたかせ、夜空に飛翔した。

その姿は天使のような悪魔だった。




「たく…ここはどこなのよ…」
いつの間にか『ここ』に迷い込んだ制服を着たツインテールの高校生
柊かがみの第一声はこれだった。

学校帰り、彼女はいつものように歩いていたら、知らない間にこの森に迷い込んでいたのである。
いくらなんでも説明不足と思うだろう、しかしこれは事実。 どうしてこうなったかはやはり彼女もわからない。

そんな時、一人の少女の声がした。
「あ、かがみぃ〜!」 ちょっとおとぼけた声
かがみはその声の正体を知っている。
「こなた!?」
かがみはその声のした方向を振り向いた。 そこにいたのは予想通りかがみの友人のこなただった。
「よかったぁ こんなトコにいたんだぁ」
親友と再開したこなたは少しだけ涙目になってかがみに抱きつく。
そんなこなたをみたかがみは内心でちょっとだけかわいいと感じる。
「って、泣かないでよ! 恥ずかしい…」
そういいながらもこなたの頭を撫でる。
「だって…すっごい怖かったんだからさ…」
こなたはかがみの優しさに甘え、熱くなっている眼を閉じながら、まぶたをかがみの首筋に近づけた。



「でもね…」
突然こなたは泣くのをやめた。
「怖いのは最初の内…」 「え?」
こなたのまぶたはかがみの首筋から離れ、
「それが終わったら…」
かわりにこなたの唇が、かがみの首筋に近づきそこにキスをした。
「ちょっと…」 親友の唐突な行動にかがみは慌てる。
しかしこなたはそんな事などお構い無しに今度はかがみの首筋を舐める。
「ひゃうっ! もう…やめ…」
「かがみは私のように『闇の快楽』を得られる」
突然の意味のわからない行動と言葉にかがみは焦る。 今のこなたはまるで別人としか思えない
「ちょっ…あんた何か…」 変よ 一体どうしたのよ!  そう言うつもりだった。
しかし、その後の言葉は続かなかった。 何故ならこなたの牙のように伸びた犬歯がかがみの首筋に突き刺さったからだ。
かがみは突き刺される痛みを覚えながら甘美な眠りに目蓋を閉じた。



こなたはかがみの首筋に噛み付いた時には魔神の姿に『戻って』いた。
かがみが『ここ』に迷っている時にこなたは彼女の気配に気づき、人間の姿に『擬態』してかがみに近づいたのだ。
今のこなたには親友を騙した自分を恥じたがそれは一瞬だけで、彼女の心は次第に『親友が自分と同じになる』事への悦びに染まっていった。
(騙してゴメンねかがみ…でも牙から魔力を送り込んだらかがみも私と同じになるからね)
そう想いながらこなたは牙から己の魔力をかがみに注ぎ込んだ。
その光景は吸血鬼に血を吸われる美女のようだった。 ただ、その吸血鬼は魔神という名の悪魔であったが…

それからしばらくして、
「気分はどう? かがみ」
かがみをお姫様抱っこしながらこなたは彼女に優しく問いかける
「うん、とてもいい気分… ちょっと苦しかったけど何で苦しかったのかなんて今はわかんない…」
そう答えるかがみの姿はこなたと同じようにツインテールの髪はこなたと同じ紅色になっている。
さらに両方のこめかみには角が生えていて、耳は攻撃的に尖っており、体の色は血の通っていないような青色になっていた。
眼は白目の部分が真っ黒で、金色に変わった瞳には猫のように細くなった瞳孔が宿っていた。
そして背中には悪魔というより『堕天使』を連想させる翼が生えていた。



「かがみ 私がかがみを騙した事、怒ってる?」 
「何よ突然」
「いや、嘘はついてないけど…」 
こなた自身、彼女を魔神にしたしたことに罪悪感があったわけではない、
彼女はかがみを騙した事にだけ、少し罪悪感に近いものが残っていたのである。
「怒ってないわよ… でも、そんなこと気にしてるんだったら…」
かがみは何の意味も無くこなたの肩をなでる。
「してるんだったら?」
「このまま抱っこしてて… そしたら許してあげる」
かがみは顔を赤めらせて言った。 こんなこといったらきっと嫌われる かがみはそんな不安を感じる。
しかし、こなたはからかいもしないで「いいよ」と答えて微笑んだ。
「このまま皇様の所までひとっ飛びするけど、いい?」
「勿論!」
かがみはとびきりの笑顔で答えた。
「じゃあ出発!」
こなたはかがみを抱えながら翼を広げてここを飛び去る。
(この調子で魔神を増やしてわいわい騒ぐのも悪くないかな)
こなたは満月を見ながら心の中でほくそ笑んだ。
かつてのいつかを思い出しながら
そしていつか生まれ出るであろうお腹の中の子(幼魔)を想いながら

そして夜は過ぎていく…





 魔神アシュタルテー
 ダークロアの魔神皇アシュタルテーが人間を何らかの方法で肉体変化させた存在 通称『魔神』
 他の人間に噛み付いて魔力を送り込みその人間を自分と同じ魔神に変える。
 また、人間等の男性と交尾して『幼魔アシュタルテー』を生み出す。
 魔神の使命は推定であるが子孫繁栄と人間の魔神化と思われる。
 戦闘での特徴としては、相手のコントロールを奪い、操作する光弾を放つ。
 魔神皇のしもべではあるが、その能力は異界から来たダークロア所属のMBを戦闘不能に追い込むほど
 そのため魔神と出くわしたときには細心の注意が必要である。



END