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太陽系惑星探査の世界(ジャンクボックス収録)

「はやぶさ2」が探査する小惑星~第二編・いつも危機的な地球~

今から6500万年程の昔々、ユカタン半島のチチュルブに衝突した天体は、それまで栄耀謳歌していた、地球上で最も大きく成長した恐竜達を絶滅へと追い込むという大規模なものでした。その直径は10kmを超えたであろうとも言われています。

2010年3月5日付けの米科学誌「サイエンス」電子版で発表された、千葉工業大惑星探査研究センター所長・松井孝典氏ら12ヶ国の研究チームによる研究・調査で、絶滅要因はやはり天体衝突によるものだと結論付けられましたが、こうした地球近傍へやって来る小天体とは一体どんな軌道を持ち、どれほどの頻度で、実際にどこまで近づいたんだろう、、、?という天体を探ってみましょう。小惑星、彗星に限らずに。

【こちらでも言いますが、ご批判や修正しろ等はこちら宛にください。】

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接近距離 接近日 天体名 推定直径
1万3000km 2004/03/31 2004 FU162 8m
4万9000km 2004/03/18 2004 FH 30m
8万4000km 2003/09/27 2003 SQ222 5m
10万8000km 1994/12/09 1994 XM1 12m
11万8000km 2002/12/11 2002 XV90 45m
12万0000km 2202/06/14 2002 MN 95m
14万8000km 1993/05/20 1993 KA2 7m
14万8000km 2003/12/06 2003 XJ7 35m
16万2000km 2003/09/19 2003 SW130 7m
16万6000km 2004/07/16 2004 OD4 20m

上記の表は、2004年8月24日現在での地球接近天体です。面白いですね。全部、小惑星番号になっています。彗星は無いんですね。やはり絶対数の違いでしょうか。発見された数......。桁が違いますもんね。それとも彗星軌道の場合は地球近傍を通らない仕組みになっている?そんなはずはありませんよね。だってダストチューブを突っ切る地球なんですからどこかで軌道が交差していてもおかしくない。でも、今から40億年ほど前の天体による「後期重爆撃期」の衝突天体は、ほとんどが小惑星であったと推測する観測データ(メイン・ベルト小惑星分布と地上クレーター分布の比較による)もだされており、、、またまた悩みが出てきましたが、それは置いといて、、、と思ったら出てきました、「地球接近彗星リスト」(下表、1.0AUは太陽地球間の距離)。

1996年物です(国立天文台ニュースより抜粋)。がしかし、小惑星と比べるとやはり危ない距離ではないですね。安心安心、、、でも彗星って次の回帰には軌道が大きく変わっている場合もあるからやはり不安が......。

接近距離(AU) 接近日(世界時) 彗星名
0.0151 1770/07/01 D/1770 L1 レクセル彗星
0.0229 1366/10/26 55P/1366 U1 テンペル・タットル彗星
0.0312 1983/05/11 C/1983 H1 アイラス・荒貴・オルコック彗星
0.0334 0837/04/10 1P/837 F1 ハレー彗星
0.0366 1805/12/09 3D/1805 V1 ビエラ彗星
0.0390 1743/02/08 C/1743 C1
0.0394 1927/06/26 7P/ポン・ウイネッケ彗星
0.0437 1702/04/20 C/1702 H1
0.0617 1930/05/31 3P/1930 J1 シュワスマン・ワハマン第三彗星
0.0628 1983/06/12 C/1983 J1 菅野・三枝・藤川彗星
0.0682 1760/01/08 C/1760 A1 大彗星
0.0839 1853/04/29 C/1853 G1 シュバイザー彗星
0.0879 1797/08/16 C/1797 P1 ブーバール・ハーシェル彗星
0.0884 0374/04/01 1P/374 E1 ハレー彗星
0.0898 0607/04/19 1P/607 H1 ハレー彗星
0.0934 1763/09/23 C/1763 S1 メシエ彗星
0.0964 1864/08/08 C/1864 N1 テンペル彗星
0.0982 1862/07/04 C/1862 N1 シュミット彗星
0.1019 1996/05/25 C/1996 B2 百武彗星
0.1019 1961/11/15 C/1961 T1 関彗星

もう一つ、2011年に地球に接近する(既に接近した)小惑星リストです。(距離の「LD」という単位は「ルナ・ディスタンス」、月と地球の間の距離を「1」とした単位)こちらから→http://oka-jp.seesaa.net/article/211773060.html

接近距離 接近日 天体名 推定直径
0.05LD 06月27日 2011 MD 11m
64.1LD 07月06日 2011 GA55 1km
37.3LD 07月10日 2011 EZ78 1.6km
9.3LD 07月14日 2003 YS117 1km
9.3LD 07月23日 2007 DD 31m
49.7LD 08月22日 2009 AV 1.1km
50LD 09月18日 2003 QC10 1.2km
67.5LD 09月19日 2004 SV55 1.2km
3.8LD 09月23日 2007 TD 58m
77.1LD 10月09日 2002 AG29 1km

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1.登録番号の無い小天体

エルタニンという小惑星があります。正確には「ありました」です。発見時期を示す「仮符号」はありません。

これは、地球海洋に衝突したと見られる天体で、1964年にアメリカの海洋観測船エルタニン号がその海域でサンプル採取を行い、後の1981年にカリフォルニア大学のカイト(Kyte,Frank T.)らによって、成分分布の異常などから天体衝突を指摘されました。「エルタニン」という名前はその観測船に因んでつけられました。その後、1995年の海洋観測船ポーラーシュテルン号のさらなる調査により、その天体衝突が確実となったのです。

~左画像:NASA提供~

ポーラーシュテルン号が行った調査は、「海底から深さ14メートル以上のコアサンプル採取」、「音波探査(海底下300メートルぐらいまでの地層や断層の様子が調査出来る)による海底堆積物の調査」などです。

これらの調査で判明したことは、

  • (1)数100キロメートルの範囲にわたって海底が激しくかき乱されている。
  • (2)コアサンプルからは、衝突の際に生じた強い流れによって運ばれ、堆積した大きなブロックなどが最下層にあり、その上には隕石の破片や短時間海中で懸濁してから堆積した粗い物質が乗り、もっとも上の層に、懸濁し、数週間かかって堆積したと思われるごく細かい粒子がある。
  • (3)採取された隕石の破片から衝突天体はエイコンドライトの小惑星と推定される。

などで、さらには「海底の攪拌領域の広さ」や、破砕の程度などから、衝突天体のサイズは直径1~4km以下と見積もられました。また、衝突年代は215万年程前であることも破壊された堆積物の年代から推定されています。

~国立天文台ニュースを参照~

【時系列で書いておりません。編者の興味本位での順不同な進捗ですから、興味の無い部分は飛ばしまくってください。】

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2.彗星?それとも小惑星?

中央シベリアのツングースカで、1908年6月30日に起きた天体衝突(大気圏内に浸入した時点で衝突とした)によるものと思われる大爆発はとても有名なお話ですが、衝突天体が小惑星なのか、それとも彗星なのか、、、決着はついたのでしょうか。

約2000平方キロメートルの森林をなぎ倒して、マグニチュード5相当の地震を発生させたというのですから、近隣で生活されておられた方々は相当驚かれたことでしょう。でも幸い犠牲者は出なかったんですね。

~左画像、The Leonid Kulik Expedition~

『彗星衝突派の主張』

・衝突天体のかけらが発見されていない。彗星核は氷が主成分であるから隕石が残らなかったのは当然である。

・エンケ彗星に軌道が似ており、この彗星の破片が突入したのではないか。

ふむふむ。。。

『小惑星衝突派の主張』

・理論的計算によると彗星核はずっと高空で爆発する。したがって、ツングースカの天体は彗星核のはずがない。

・突入した天体は、地表上約25キロメートルの高さから分裂を始める。天体にかかる圧力は10キロメートルの高さで最大値に達し、1平方センチ当たり8億ダインほどになる。この圧力によって、天体はすべて直径1センチないし3センチ程度の大きさに砕け、さらにその大部分は放射熱によって溶けて飛散し、破片はほとんど地上に到達しない。だから、衝突天体のかけらが発見されなくても小惑星の可能性は高い。

なるほど。。。

この「ツングースカ爆発」と同じような出来事が、536年頃にもあったのではないかという指摘があります。

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3.天体衝突?それとも火山噴火なの?

世界各地の木の年輪測定から、536年から10年に亘って地球の平均気温が3℃も下がったという調査結果がありました。これらは、大規模な森林火災や火山噴火などによるものではないかと思われていましたが、英・カーディフ大学のリグバイ(E. Rigby)氏らが、この出来事がヨーロッパ北部に衝突した「小型彗星」ではないかという研究結果を発表しました。

爆風と共に彗星に含まれている塵などが大きなきのこ雲となり、大気圏を越えて大きく広がり、後に冷えると再び地球に落下することから塵が地球全体を覆ってしまい、太陽光線を遮断する役目をして地球が冷えてしまうということです。これ、「恐竜絶滅衝突」のスモールサイズ版みたいですね。

大気圏に突入した彗星のサイズは、直径300mほどで、「おうし座流星群」の母天体分裂時のそのかけらではないかとの報告もあります。これが3kmの大きさだったら、、、10kmを超えるサイズの衝突って、、、やはり怖い。

一方、GRL(Geophysical Research Letters)地球物理学誌の2007年10月の掲載論文で、「西暦536年に起こった謎の寒冷化が大規模な火山活動と関係していたと結論する」とありました。

以下、http://www.kazan-net.jp/hotvolcanology/080310AD536cooling.htmlより。

~~「火山活動説」の有力な証拠として、グリーンランドや南極の氷床のボーリングコアから、火山噴火が原因と考えられる硫酸塩濃度の上昇を533-534±2年の精度で、検出したそうです。ヨーロッパ各地の樹木の年輪についても分析がされており、その結果から、1815年のタンボラ噴火をしのぐ、最近2000年間では最も寒い夏がこの年の北半球を襲ったと推定しています。~~以上。

ただ、タンボラ噴火をしのぐ噴火は今のところ見つかってはいないそうです。でもWikipediaでは、「クラカタウの大噴火と関連していると考えられている。」などと書いている。研究者は関連する火山噴火は無いと言い、情報サイトのWebペーパーでは在ると書いている。さてさて、、、。

こうしたクレーター状で見つからない天体衝突というのは、その起因特定には研究者の方々も相当ご苦労されているようですね。

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こうした天体の地球衝突で、世界中のいつでもどこででも必ず話題に上るのが「白亜紀末期の恐竜絶滅の要因」ではないかということ。三十歳を過ぎてらっしゃる方々は、小学生くらいで耳にしている話題ではないかと思います。ここで詳細を述べる必要は全く無いと思いますので、自身の感想などをやはりこれも少しだけ。おっと、面白い「作品」を見つけました。。。

恐竜最後の日

それは真夏の暑い日差しが地上に降り注ぐ真昼の出来事だった。どうして真夏で真昼なのか、そんな6500万年も前の出来事の季節や時間まで特定できるのか…出来るのだ。

その日の爆撃は、最大のものがユカタン半島チュクシュルーブめがけて衝突し、さらに分裂した少なくともあと二つの天体がアイオワと北シベリアに衝突していることが検証されている。それら三つが、分裂の始まりとなった太陽近接地点より遠ざかりながら地球に到達するためには、北半球では極地方が太陽に向かって傾斜している夏、そして太陽方向に向かって真正面から衝突していることから真夏の白昼だと推論することができるのである。

最初に恐竜たちを襲ったのは高熱と炎。

衝突したユカタン半島付近は、1キロほどの厚さの硫黄に富んだ無水石膏や、炭酸塩の別形態である方解石などの物質でできた広大な堆積層であった。衝突による高熱の中で、膨大な量の二酸化硫黄と二酸化炭素がこの堆積層から大気圏外縁めがけて放出されたのである。このことがその後の硫酸による地上の遠大な闇の世界を作りだし、強烈な酸性雨をもたらして地上のあらゆる生き物を死滅に追いやった原因の一つとなるのだ。

そしてそれより先に、衝突直後に大気の外側に放出された微粒子が大気圏再突入することによって、無限ともいえる莫大な量の熱エネルギーをともなって地球上のほとんどすべての地域にくまなく降り注いだため、地上の生き物にとっては地獄の業火、それらの研究者であるアリゾナ大学のジェイ・メローシュに言わせれば「家庭用のオーブンを”あぶる”の目盛りにあわせた程度」の恐るべき加熱レベルのものであったろうということだ。

なんといっても悲しきは一億数千万年も地球上を支配し続けた恐竜たちの終焉のあっけなさ。だけども人類などたかだか400万年程の歴史でしかなく、やはりこの地球というものは、永遠に続いた恐竜世界であったとも言えるのかも知れないね。

これから先、人類の歴史がページを重ねるがごとく数百年、数千年と積み重ねられてゆき、その最後にあるものは巨大な天体の衝突なのかも知れないし、それによって人類が滅びる、あるいは地球を脱出して他の住み処を求める旅に出るようなことが現実にあるのかもしれない。言えることは、人類の歴史など一瞬のことだということだ。

~~以上。10年余り前のウェブ上に落ちていたH・Aさんの妄想記から。~~

なかなか面白いですね。どこかで聞いたフレーズもありますが、こういう風に書けばみんな似通ってくる、、、そんなもんでしょう。

1980年を過ぎた頃からだったと思いますが、このテーマに関しては世界中のサイエンティストが懸命に取り組み、結論を出すに至るまでそれほど時間は、、、30年掛かったのか......。でもでも、6500万年程の太古の出来事について、ハイレベルの確証を得られたということは、近年の科学技術の発展というものが、とんでもない速度で私たちを確かな時間軸へと導いてくれているのは間違いありません。それと研究者の絶え間ない努力も。

以下ご参照ください。

白亜紀/第三紀における地球外天体の海洋衝突現象(千葉工業大学惑星探査研究センター・後藤和久)

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4.地球は最後の日を迎えるのか?

幾つかの天体衝突を紹介しましたが、まだまだたくさんありますね。今後、加筆するなどしてご紹介することとします。

このような天体衝突の危機が現実にいつか再び起こるのだということは誰も疑う者はいないでしょう。それが何時なのか?数年、数百年先?あるいは数十万年くらいの遠い未来なのか?誰にもわかりません。判っていることは、地上に到達するほどの大きなサイズを持つ天体であれば、地球上で生きるものに対して壊滅的なダメージを与えるだろうということです。

あれ?でも今の時代って、、、小惑星からのサンプリングを成し遂げ、火星への有人宇宙航行がいよいよ現実となろうとする最中にあるはず。天体衝突への備えはどうなっているのか?監視は?その時が来た場合の現実的な対策は?

以下に幾つかの記事をご紹介します。

人類の歴史における天体衝突現象の変遷
デイビッド・アッシャー(通信総合研究所)、日本語訳:吉川真(「はやぶさ2」プロジェクトマネージャー)
http://www.spaceguard.or.jp/asute/a22/Asher22H/Asher22.html
天体の地球衝突シュミレーション~核による防衛を考えるべきか?~
JAXA/ISAS、宇宙情報・エネルギー工学研究系准教授・吉川真(「はやぶさ2」プロジェクトマネージャー)
http://www.spaceguard.or.jp/asute/a23/Yoshikawa23H/Yoshikawa23.html
地球近傍小惑星の観測~小惑星衝突から地球を護る~
日本スペースガード協会、千葉大学大学院人文社会科学研究科、高橋典嗣
http://www.sgu.ac.jp/isi/takahasi-2c.pdf
ニュートンプレス出版、「小惑星衝突」 ISBN4-315-51497-7C0044
http://www.newtonpress.co.jp/library/shizen/impact.html

要加筆

【 ここまでのまとめ 】

まとめと言いながら何も纏めていないですが、やはり二編やそこらじゃ終りませんね。次は第三編ということで......。

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