答 ベッカー教授は元々人間科学的な研究をされていて、ハワイにいた時に日本人の死に方に非常に興味を持ったようです。ある時、日本人が臨終の前にいろいろな人を呼んで自分の言いたいことを言い、さぁこれで全部終わりというところで、きれいに死んでいったというんです。
「日本という国はこういうふうに死を受け入れている国なのか、凄いぞ日本」と思ったようです。そして、日本に来て京大で教鞭を執るようになるわけですが、2000年頃に同じ調査をしてみたらびっくり。
今度は世界でも4番目くらいに死を受け入れない民族になっていたというんです。
死が良くないと言う医者が悪い
問 確かに、かつての日本には辞世の句があって、それが象徴しているように死を受け入れていました。しかし、いまはそういう文化は全くありません。どうしてこのような急激な変化が起きてしまったのでしょう。核家族化だけでは説明がつきませんね。
答 医者のせいだと思いますよ。悪いのは。医者はとにかく死はいけないもの。生きていてなんぼのものって、ずっと言い続けてきました。死ぬのは良くない、良くない、良くないで生かし続けてきたんです。
そして、日本人は世界でも稀に見る医者に丸投げの国でしょう。医者の言うことは正しいと頭から信じて疑わない。だから、医者が死が良くないと言えば、国民がみな信じてしまう。
おまけに医者の言うことを聞いていれば、寿命は確かに伸びた。日本の平均寿命は世界でも1、2位を争うようになっているわけですから、医者に対する信頼はますます厚くなった。
平均寿命が50歳くらいだったらそれでも良かったんですよ。しかし、長く生きるようになると、医者の手に負えないことが実は山のように出てくるんです。例えば、歳を取って膝が痛いとか肩が痛いとか・・・。
問 お医者さんではどうにもならないことが増えてきたのに頼りっきりになることで問題が出てきたわけですね。長く生きるなら生活習慣を変えるとか運動するとか自分で解決しなければならないのに。