――つまり、TAFとACEのどちらからか提案したというわけではないのですね。
アニメコンテンツエキスポ(ACE)の総合プロデューサーを務めた高橋祐馬氏。
高橋 そうですね。弊社(アニプレックス)単体の立場からいえば、弊社は日本動画協会の会員でもあります。そこで、敵対やいがみ合いをしても発展性はありません。ただ、2つのイベントが存在するに至る流れがあったのも事実で、それが単一開催されるのに際して、ファンや業界だったり、状況に対して筋を通さなければいけないという意識はありました。その上で、議論や検討の中で、業界やファンに最もよい形で届けられるのは今回の形態という方向性が、TAFとACEの双方ともに見えてきたのです。
――それが具体化したのが7月というわけですね。
高橋 そうですね。大筋のところを決めたのはその頃です。
――誰かが旗を立ててというわけではなく、業界の仲間として腹を割って話し合った結果だった。
高橋 はい。話し合いを積み重ねる中で、単に単一開催をすることを前提としてではなく、ファンだったり業界関係者が納得する筋の通る形であればということで、話がまとまっていったという経緯がありました。
――筋が通らないという話も当然出たわけですね?
高橋 はい。ですので、単一開催を模索しつつも、まずはファンや業界関係者に何を届けたいか、どうすれば納得してもらえるかを考えながら議論、検討を続けたんです。
――これは以前に取材させていただいた時にも述べていただきましたが、ACEの開催目的は、あくまで都条例のゴタゴタでコンテンツを楽しむ機会を失ったファンを救うという目的もありました。しかし、一連の経緯から、ACEを「都条例改定を原点に東京都が旗を振る対抗イベント」と捉えて残ったTAFと出て行ったACEは対立しているような見方もありました。実態として、そうしたわだかまりがあったり、議論のテーマになったりはしたのでしょうか。
高橋 既に条例が施行されているのは事実で、その上で、ファンや作品のために、アニメ業界や関連業界が条例に対して適切な運用を求める、あるいは意見を述べることは今後もあると思います。ただ、イベントをどう開催していくかは、そうした動きとは別個のものであるべき面もあるという考えを共有してきました。そこへ来てTAFは、民間に完全に移行することになりました。それであれば、同時期に民間で開催するものが2つあるのもおかしいから単一開催が模索されるようになったという経緯があります。
北上 条例とTAFの件はマスコミでは結びつけられますが、私たちとしては別の問題と考えてずっとやっていました。都との関係に関しては、2002年の立ち上げ当初から徐々に民間に移行することが前提で進めてきたものです。7年前に、事務局が都から日本動画協会に移り、そこから年々段階的に負担金も減ってきていたのです。
10年前、12年前とはアニメのイベントの状況も変わってきています。立ち上げ当初は、こうしたイベントはTAFしかありませんでした。ところが、今はACEを含めていろんなイベントにいろんなファンが行くことができるようになっている。ここ2年はTAFの来場者・出展者も減ってきた事実もありましたので、民間に移行してTAFを真剣に見直す時だという判断もありました。
まあ、ACEと話していた一方で、都とは民間への移行も話し合っていたんです。条例があるから都を外すということではなく、既定路線として民間に移行していったという流れです。