問 前回、日本はお医者さんは神様と同格で、すべてお医者さん任せにすることが日本の問題だと指摘されました。糖尿病患者も、自分の体を自分の問題として捉えずにお医者さん任せにしているということでしょうか。
人工透析に国の負担は1兆5000億円
答 それもあるけれども、糖尿病ががんのように死と直面することがないために、患者さんが深刻に受け止めないことが問題です。そして、末期腎不全になって人工透析をしなければ生きていけなくなって初めて、ことの重大さに気がつく。
しかし、そのときには既に手遅れなのです。死ぬまで人工透析を続けなければならない。その時点で後悔しても後の祭りです。
最近は透析技術も進歩しているので、若くして末期腎不全となり、死ぬまで40年以上も人工透析を続ける患者さんさえ出始めました。
慣れてくれば苦にならないとはいえ、毎週数回、1回の透析に4時間ほどかかるというのは大変な負担ですよね。きちんと自分の体をケアしていればそのような事態にはならないのに・・・。
でも、もっと問題があるんですよ。人工透析には多額の費用がかかります。ざっとどうでしょう。1人が1年間に500万円くらいかかる。
問 えぇっ。そんなにかかるんですか。
答 ええ。だけど自己負担はゼロ。国が全額補助してくれるのです。簡単に計算してみましょう。日本には人工透析をせざるを得ない患者さんが30万人いて、1人500万円かかる。費用総額は1兆5000億円にも達するんですよ。
人工透析を受けなければ生きていけない患者さんは、1級身体障害者の指定を受けることになります。つまり、自己負担がゼロで透析費用は全部国が出してくれる。
国の負担はそれだけにとどまりません。1兆5000億円というのは医療費だけです。1級障害者になると、例えば東京都営の交通機関は無料になるし、飛行機代は半分、高速道路料金も大幅な割引になります。