答 本来なら、「こうしたらこうなる、しなかったらこうなる、どうしますか?」って言うのが普通でしょう。でも医者の大半はそう言わないでしょう。私たち医者がそういう教育を受けてきたからです。
人を死なしていけない。余計な病気を発症させてはいけない。それが当たり前の価値観だと教育を受けてくるから、例えば血圧が上がったら、下げなければいけないってなるんです。病気の原因を突き詰めて、そこから治療しようという発想ではないんですね。
メタボ健診が始まって医療費が逆に増えた
とにかく、対症療法的に発症を抑えようとする。でも血圧が上がったら常に下げなければならないなんてことはないわけです。少なくとも血圧を下げなかったらこういう危険性があるという説明なら分かりますよ。
でも、ただの危険性に過ぎないんですよ。人によって、年齢によってもまちまちですから。極端な例を言えば、100歳の人に向かって「血圧を120台に下げなければいけません」とはさすがにどんな医者でも言わないわけです。
それは、当然遅かれ早かれ死ぬだろうと思っているからです。
2008年4月からメタボ健診というのが始まったでしょう。40歳から74歳までの公的医療保険加入者を対象に。正式な名前は特定健康診査というのですが、ここで言うメタボの定義や基準、そしてその対処方法には専門家でも賛否両論があるのです。
ところが、現実はどうなっているかと言うと、厚生労働省が決めた基準値を上回ると「要治療」とされ大量の薬を飲まされることになる。全く何のための健診かと疑いたくなりますよ。
メタボ健診の本来の目的は、生活習慣病を予防して医療費を減らしていこうというものでしょう。それなのに、基準値を上回ったら、「はい薬をいっぱい飲んでください」では、グレーゾーンの人を健診で掘り起こして、薬漬けにしているとしか思えない。
糖尿病や高血圧などの病気はほどよくコントロールしてやれば医者や製薬メーカーが儲かると言われますが、メタボ健診はその道具に使われていると思われても仕方がありません。