秘密保護法案:秘密の範囲、民主案より拡大
毎日新聞 2013年11月10日 10時58分(最終更新 11月10日 12時23分)
衆院で審議が始まった特定秘密保護法案は、民主党政権が提出を検討していた当時の案に比べ、秘密の範囲が拡大されていることが分かった。法案を所管する内閣官房は「変更はない」と説明してきたが、実際には秘密の対象に「特定有害活動(スパイ活動など)の防止」が加わっていた。警察当局などの情報収集活動が一層チェックしにくくなる内容になっている。
◇スパイ活動防止を追加
民主党政権が提出を検討していたのは「秘密保全法案」。対象は(1)防衛(2)外交(3)公共の安全及び秩序の維持−−の3分野だった。審議中の今回の法案は(1)と(2)は同じだが、(3)は無くなり、「テロリズムの防止」と「特定有害活動の防止」に変わった。法案を所管する内閣官房はこの変更について「より具体的にした」と説明し、秘密の指定範囲には変更がないと説明してきた。
ところが、赤嶺政賢衆院議員(共産)が入手した民主党政権時代の政府資料で、説明は事実と異なることが判明した。資料には(3)について「主として我が国におけるテロリズム防止等に関するものに限定」すると記載。特定有害活動が含まれていなかった。
「特定有害活動の防止」が加わったことで、日本の機密を探ろうとする外国のスパイや日本の協力者の情報のほか、海外からの不正アクセスを防ぐために日本が講じている措置なども対象に含められた。「スパイ」や「協力者」の定義はあいまいで範囲は不明確。さらに、さまざまな情報収集活動を含むため、警察当局などの活動の多くが「特定秘密」となり、知らないうちに市民の情報が集められ、その行為をチェックすることはより難しくなる。昨年、民主党で法案検討のプロジェクトチーム座長を務めた大野元裕参院議員は「スパイ防止は入っておらず、スパイを取り締まる『防ちょう法』を作るつもりはなかった」と証言した。
一方、自民党で法案を取りまとめる際にプロジェクトチームの座長を務めた町村信孝元外相は9月「安全保障が問題になっている時に、日本は相変わらず『スパイ天国』と言われると(米国などから)必要な情報を受けるのが難しくなる」と、スパイ防止の必要性を強調した。【青島顕】