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【社会】建設範囲大きく超過 新国立競技場デザイン二〇二〇年東京五輪のメーン会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の建設計画で、昨年十一月に国際コンペで採用した新競技場のデザイン案が、公募条件の建設範囲を大きく超えていたことが分かった。事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は問題を把握しながら、案を採用。直後に逸脱部分の削除を決めていた。 (森本智之) 新競技場の建設をめぐっては、建築家の槇文彦さん(85)らが「巨大すぎる」と批判。七日に文部科学省や都に計画見直しを求める要望書を提出した。JSCは公募条件作成やデザイン選考の過程を明らかにしていない。 採用されたデザインは、英国のザハ・ハディドさんの作品。新競技場から北側に延びるスロープが、隣接する首都高速やJR中央線をまたいでいた。公募条件では「計画対象範囲」を現競技場を中心に一一・三ヘクタールと明示。スロープの大部分にあたる百メートル以上が範囲を逸脱していた。 JR東日本によると、線路をまたいで通路などを造る場合は、列車の運行を妨げないようJRと綿密な計画を練る必要がある。担当者は「工事時間帯も終電後の夜間に限られ、一般的にかなり時間がかかる」と言う。首都高の場合も同様で、一九年三月完成のスケジュールを考えると、スロープ設置は事実上、不可能だった。 公募条件を定めた要項は「要項に違反するもの」を審査対象から除外し、入賞の後でも取り消すことがあると明記している。 コンペには四十六作品が応募。JSCの審査委員会は講評でハディドさんの案に「アプローチを含めた周辺環境との関係は修正が今後必要」と認めつつ、流線形のデザインを高く評価。「強いインパクトをもって世界に日本の先進性を発信」できると称賛した。 条件を外れた案に決めたことについて、JSCの担当者は「『審査講評』が全て」とする一方、「誰のデザインでも法律などに照らし、妥当性は再検討する。今回は、五輪に間に合わないと判断し、選考直後に変更を決めた」と説明する。 JSCは当初、ホームページなどでスロープを含むイメージ図を公表していたが、現在は削除している。 コンペの審査は、建築家の安藤忠雄氏ら十人による審査委員会が担当。技術的に建設が可能かどうか検証するための下部組織も設置し、全四十六作品を採点したが、審査委の議事録も下部組織のメンバーも公表せず、各案への判断がどうだったか、検証不可能な状態になっている。 JSCの担当者は、公表しない理由を「公表すると、今後の意思決定の中立性が損なわれる可能性がある」と話した。安藤氏は取材に応じなかった。 PR情報
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