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2013年11月10日放送

崖崩れ 安全対策が出来ない 仰天の理由

今年は多くの台風が首都圏を直撃しました。
その影響により、各地で崖崩れが多発。生命財産に影響する事案が多数発生しました。
中でも崖崩れが多く発生した場所の一つ、鎌倉市。
ここでは、一年半前に崖崩れが発生し、復旧が進まない現場がありました。
その場所は、鎌倉駅からほど近い住宅地。市街化区域に指定されていますが、周囲は小高い山に囲まれており、谷状の地形の中に住宅地が整備されています。
昨年の6月に、その中の一か所で土砂崩れが発生しました。
崩れた土砂や大木は、がけ下の住宅2軒を襲い、屋根や壁が壊れるなど大きな被害をもたらしました。
住宅の復旧の大部分は保険で補うことが出来たものの、崩れ落ちた土砂や大木をかたずけるのも住民が自費で行わなければならず、数百万円を負担することになりました。
住民は、お金よりも崩れた崖の安全対策を早くしてほしいと要望しています。
このような場合、崖の土地所有者は住民への損害賠償や、崖の安全対策工事を行う責任があります。そこで、登記簿を確認して所有者を探したものの、そこに記された住所には該当する所有者は居ませんでした。
崩れた崖地は所有者の所在が不明な土地だったのです。
一方、神奈川県ではこのような大規模な崖崩れを復旧するために、「急傾斜地法による安全対策工事」を行っています。この事業の一定の要件に該当し指定を受けられれば、安全対策工事の費用は、国・県・市が負担して、工事が実施されます。
しかし、神奈川県の場合、工事の申請や様々な同意などは、崖所有者が行わなくてはいけません。
しかし、市役所の職員が探しても、土地所有者とは連絡がつかず、崖の安全対策工事が進められないと言うのです。
県と市と住民は、どのようにすれば安全対策工事が実施できるか、協力して対応方法を検討しています。
「今後、少子高齢化が進み土地の相続人が不在の土地がさらに発生する可能性がある」と取材した弁護士は指摘します。
所有者が不在で、所有者と連絡がつかない土地を、今後どのように扱うのか?
会社法に基づいて清算して土地の処分を行うにも、住民票で利害関係人を全員見つけだし土地の処分を行うにも、大きな費用が掛かります。
到底、住民が負担できる金額ではありません。
国交省の担当者は、「公共事業全般にかかわる問題。」と慎重な発言にとどまります。
安倍内閣が掲げる「国土強靭化」。このような問題を解決しなくては国土の強靭化は「夢のまた夢」と終わる可能性もあります。
また、今回取材した、鎌倉市と神奈川県の崖地の担当者は、大きな台風が接近し不眠で対応も行わなければならない状況の中で、崖地の安全の為に最前線で対応していました。
そこには、住民の生命財産を守るために、必死に取り組んでいる様子も見てとれました。
本当の「国土度強靭化」は、このような部署にスタッフを手厚く配置するのも重要だなと、
鎌倉市役所を後にしたときに感じました。

(ディレクター 笹岡正之)

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