第七話 想像?それとも妄想?
作:優 様
弥生さんのくすぐりの刑の後、
えも言われない疲労(弥生のくすぐりの刑)のため、
僕はうつぶせになって、突っ伏していた。
「葉月ちゃん、女の子に『重い』『太ってる』は禁句よ、良く覚えておいてね」
弥生さんは僕をくすぐり終えた後、すっきりしたような顔で言う。
「わかったよ・・・」
僕は元気なく返事をする。
「葉月ちゃん、済まない」
和広さんは僕に謝る。
何もしなかったのを詫びているのだろう。
傍観をしていた事を許してあげようかな。
僕はそう思い始めたのだが・・・・
「夫婦喧嘩は何とかも食わないと言うし、みてて面白かったから・・・」
和広さんは、思いだすように言う
面白いってどういうことですか?
和広さんのその一言で僕は許す気は無くなった。
「お爺さん酷いよ・・・面白いだなんて・・・」
僕はうつ伏せのまま、呟くように言う。
「お父さん、『面白い』はないでしょ、そう言われたら、私も傷つくわ」
「す、すまんつい・・・」
和広さんは、慌てて謝る。
その後数分間、和広さんは僕に謝りつづけた。
「葉月ちゃんいる?」
皐月が部屋を覗くように顔を出す。
そして、固まる。
うつ伏せになって、寝そべっている元父。
どこかすっきりしたような顔をして立っている母。
それに頭を下げて謝っている祖父。
まあ、ものすごく不思議な光景には間違いないだろう。
「皐月どうしたの?そんなところで固まって」
「お母さん、何があったの?」
皐月は弥生さんに問う。
「ちょっとね」
弥生さんは何があったかを言いたくないようだ。
「それより皐月、貴女葉月ちゃんに何か用があったたんじゃないの?」
弥生さんは話をべつの方向へ向ける。
「うん、でも葉月ちゃん寝てるから」
皐月は僕のほうに視線をむけて言う。
「寝て無いよ」
そういって、僕は立ち上がる。
「は、葉月ちゃん、その顔どうしたの?ものすごく疲れているみたいだけど・・」
皐月は僕の顔を見て驚いたような声で言う。
「うん、ちょっとね」
僕は曖昧な返事をする。
「大丈夫?」
皐月は心配そうな顔で、僕を見る。
「大丈夫だよ、それより僕に用があるんだろ」
「うん、もうそろそろ春香が来るから葉月ちゃん呼びに来たの」
と皐月が言い終わると、
ピンポーン
チャイムが鳴る。
「は〜い」
皐月が返事をし、ぱたぱたと音を立て、玄関へ向かっていく。
僕はそれを少し見て、自分の部屋へと歩いていく。
「あ、春香いらっしゃい」
「来たわよ、皐月」
「さあ、上がって」
「お邪魔します」
という声が聞え、僕は自分の部屋へと入る。
バタン、ドアを閉める。
そして、一応座布団を敷き、どれから見ようかなとビデオを探っていると、
コンコン、ドアをノックする音が聞える。
「はい」
僕は返事をする。
ガチャ、ドアが開く。
「今日は」
ドアから入ってきた、春香ちゃんが挨拶をする。
「今日は」
僕が挨拶を返すと、「葉月ちゃん、どれから見るの?」
と、皐月が僕に尋ねる。
「う〜ん、これにしようと思ってるんだけど・・・」
そう言って、僕は袋の中から一本のビデオをだす。
そのビデオの名前は『魔法の双子みらくる☆ティンクル』と書いてある。
僕はビデオを取り出し、再生のボタンを押す。
約90分後、ビデオを見終わると、
「面白かったね」
僕は二人の法に向き直って言う。
「「うん」」
皐月と春香ちゃんがそろって返事をする。
「私もこれが欲しいな」
皐月がビデオの表に描かれている双子の持っているステッキを指して言う。
皐月・・・そんなもの欲しがらないで・・・。
如月さんが出てきて、そんなものを本当に置いていきそうだから。
僕はそう願うしかなかった。
「ねえ、葉月ちゃん」
皐月が何か欲しそうな声で言う。
「何?皐月さん」
僕は皐月が何を言うか予想がついた。
「お婆ちゃんが何か他に残していたものは無いの?」
皐月が僕の予想通りの質問をする。
「皐月アニメと現実をごっちゃにしたらだめよ」
春香ちゃんが夢見る皐月に注意する。
ありがとう春香ちゃん、君のおかげでこれ以上如月さんの
悪戯(と言っていいのかわからないけど)の犠牲者を出さなくて済むよ。
僕は心の中で春香ちゃんに感謝した。
「でも、現実の例がそこにいるわ」
皐月は僕を指差して言う。
げ、現実の例って・・・。
僕は額に汗が出ているのを感じた。
「それもそうね」
春香ちゃんは皐月の言葉に納得する。
春香ちゃん・・・・そこで納得しないでよ。
今度は心の中で春香ちゃんにつっこむ。
「さ、皐月さんもしあれと同じものがあったらどうするの?」
僕は少し顔を引きつらせて言う。
「勿論、それを使って魔法少女になって・・・・」
皐月が何をしたいかを語る。
「もし、あのビデオと同じような状態だったらどうするの?」
僕は皐月に突っ込みを入れる。
「樹にもやってもらうわ」
皐月は少し考えてから言う。
「樹さんが嫌がったら?」
「嫌がってもやってもらうわ」
皐月は僕の質問に即答する。
僕はその光景を想像してみる。
『「ね、姉さん嫌だよ」
皐月にステッキを強制的に持たされた樹が反論する。
「樹・・・そんな事言うと七五三の事皆にばらすわよ」
皐月は樹を脅迫する。
ちなみに七五三がどうして樹の弱点になるのかと言うと、
あれは、皐月と樹が三歳のころ・・・皐月と樹はそっくりだった。
皐月より樹の方がおとなしく、皐月に泣かされる事は再々だった。
そして、七五三の時・・・弥生さんと如月さんが何か話しているのを耳にした。
「弥生、七五三のことなんだけど」
「もう皐月の着物はできてるわよ」
「違うのよ、樹にも着せたら似合うかなと思ったのだけど」
「でも樹は男の子よ」
弥生さんはビックリしたような声で言う。
「似合ってたらそれでいいじゃない」
「でも和樹さんやお父さんが何ていうか・・・」
「いいのよ、内緒ですれば・・・ね」
と言う会話があったのを、僕は聞いていたのだ。
そして、七五三の日には樹と皐月が同じ着物を着て写真をとったのだ。
ただ、その写真から誰も樹と皐月を見分けられなかったのは、
家族だけの秘密である。
それから二年後の5歳の時は普通に樹一人で写真を取っている。
また、二年後の7歳の時・・・・・。
如月さんと弥生さんの画策により、
樹は女の子の着物を着て、皐月と一緒に写っている。
ただ、親戚の人に見せると「こっちが皐月ちゃんでしょ?」と、
樹の方を指して自身たっぷりに言う親戚が後を絶たなかったのは、
僕と弥生さんの秘密である。
ただ、7歳の時の樹はかなり嫌がっていたが、
弥生さんと如月さんの迫力に圧倒され、泣きながら着させられていたのは、
可哀相だった。
僕はやめるよう言ったのだが、弥生さんと如月さんには勝てなかった。
樹、それを止められなかったお父さんを許してくれと、
息子を哀れに思ったのも記憶に新しい。
七五三が終っても、樹が人を困らせるような事をするたびに、
女の子の格好強いられ、泣いていた。
たまに、居直って『姉さんより奇麗だろ』と皐月に向けて言うと、
『何ですって〜』と言って、頬を引っ張るなり、くすぐるなりするのだ。
樹に同情して、50%は皐月の攻撃を抑え、40%は女装させる事を、
やめさせたのだ、勿論和広さんにも手伝ってもらったんだけどね。
如月さんが亡くなってから、そういうことはなくなったのだが、
樹はそれにより、精神的なトラウマを植え付けられたのは悲しい事実だ。
と、これが七五三で、話を戻す。
「ね、姉さんずるいよ、そんな昔のことを引き合いに出すなんて」
樹は悔しそうな顔をして皐月を睨みつける。
「そんな顔をして良いのかな?」
皐月は七五三(7歳の時の物)をどこからともなく出し、
樹に見せつける。
「○○、○○、○○○・・・・」
下手をしたら、ジャ○にお問い合わせが来そうな言葉を並べる。
「樹〜〜そんな事言うと、本当にこの写真ばら撒くわよ」
皐月は、にっこり笑って言う。
ただ、その笑顔のうらにはものすごい、殺気がでているのだ。
「ご、ごめんなさい」
樹は慌てて謝る。
どうもうちの家系のものは女性には逆らえないみたいだ。
「樹、許して欲しかったらそのステッキを使うのよ」
皐月は命令口調で言う。
「わかったよ」
樹は渋々皐月の言う事を聞く。
「ルミット」
樹がそう呪文を唱えると、樹は魔法少女へと変身する。
良く皐月に似た少女ができあがる。
皐月も可愛い方なのだが、変身した樹はそれを上回る可愛さを兼ね備えているのだ。
ちなみに皐月は変身済みである。
「姉さんこれでいい?」
樹はおずおずと皐月に質問する。
「駄目よ♪あれを試さなきゃね」
皐月は何時の間にか殺気が消え、今度は満面の笑みで言う。
「あれ・・・本当にやるの?」
樹は露骨に嫌そうな顔をする。
「いいの?樹・・・これをばら撒くわよ」
皐月はチラッとさっきの写真を出す。
「そんな・・・やめてよ」
樹は泣きそうな顔で講義する。
「・・・・わかったわ」
皐月も自分に良く似た顔で泣かれるのは嫌だったのだろうか、
写真をしまう。
ちなみに、あれをやった後は、樹は表に出してもらえず、
皐月が、ハイティーンな女の子を楽しむだけなのだ。
だから樹はものすごく反発する。
まあ、女の子になるのもかなり嫌なのだろうけど。』
と言った日常が訪れるのかな?
自分の想像があまりに現実的だったことに苦笑した。
「葉月ちゃん、何考えてるの?」
春香ちゃんが興味深そうに僕を見つめている。
「いや、皐月と樹をこのアニメに当てはめたら・・・・・」
僕は想像していたことを七五三の事を抜いて春香ちゃんに話してみた。
春香ちゃんは樹のトラウマ原因を知らないだろうからね。
「葉月ちゃん、それじゃあ樹君がかわいそうだよ」
そう言ってるが、笑いをこらえるのがやっとのような顔をしてるよ。
「春香ちゃんその顔で言っても説得力ないよ」
必死に笑いをこらえている春香ちゃんに突っ込む。
「だって、葉月ちゃんの言ってる事、本当にありそうなんだもん」
そう言うと、春香ちゃんはこらえきれず笑い出した。
「春香どうして笑ってるの?」
何時の間にか語り終わった皐月が、僕と春香ちゃんを不思議そうに見ていた。
それから数分後・・・春香ちゃんの笑いが止まり、皐月がせかし始めたので、
次のビデオを何にするのかと迷っていると・・・・。
「これがみたいわ」そう言って、皐月が取り出した物は、
『魔法少女♪奈里佳』だ。
皐月のその提案を僕たちは受け入れ、それをみる事となった。
約90分ほどで見終わると、僕たちはその魔法のすごさに、
圧倒されていた。
「す、すごいね」
「「うん」」
僕の一言に二人は頷く。
「魔法はすごいけど、主人公の男の子可哀相だね」
皐月がビデオの感想を言う。
「あたしはあれだけ魔法が使えたら、いいと思うけど、
あの女王様みたいな性格にされたのが記憶に残るのはきつそう」
僕は二人の感想を聞いて、樹をこの少年に当てはめた時の事を想像してみる。
作者注・・・何故樹を当てはめるのかというと、適当な男の子がいないからだと思ってください。
『「やっぱり嫌だよ、こんな格好」
と魔法少女が魔法生物?に怒って文句を言う。
「いいじゃないですか、似合ってますよ」
『どうして?』と言ったような顔で、応対する魔法生物。
「そう言う問題じゃない」
過去に女装させられた経験があるためか、物凄い拒否反応を、
起こしているようだ。
「どうして怒ってるんですか?」
頭の上に?マークを追加させる魔法生物。
ちなみに、今の樹は金髪の髪を黒髪に変えれば、皐月と良く似ている状態なのだ。
ガチャ、ドアが開く。
そして、皐月が入ってくると、
「樹、今日どんな格好にしてくれるの?」
と嬉しそうな顔をして、尋ねてくる。
「姉さん、俺が変身するたびにそんなことを聞きに来るのはやめてよ」
樹はうんざりしたような顔で皐月に言う。
「だって、結局は魔法を使うんでしょ?教えてくれたっていいじゃない」
「そうだけど・・・姉さんすごく嬉しそうだね」
「うん♪普段できないような格好ができるからね」
皐月は本当に嬉しそうだ。
そんな、性格を持った姉がこの魔法少女になったら、
魔力がたまるのが待ち遠しくて仕方ない状態になるだろう。
そして、変身する時は何かポーズをとったりするのでは?
皐月ならやりかねないと樹は思うだろう。
皐月なら「変心」もいらないような気がする。
元が女の子というのもあるが、そのまま悪乗りして、
女王様の口調で話をしそうな気さえする。
と、これ以上皐月のそう言うところを言うと、皐月がどんな性格の持ち主か、
誤解されそうなのでやめておく。
「樹、教えてあげたら?」
魔法生物は何か心配そう顔をして言う。
ちなみに魔法生物は、樹が皐月にそれを教えなかったときに、
どうなるかは良く知っているのだ。
七五三の写真で脅され、もしそれを断ったとしても、
くすぐりの刑、うにょーんの刑が待っているのだ。
「そうだね、姉さんに逆らったら後が怖いからね」
「そうだよ樹、わかってくれたかい?」
魔法生物のその言葉に樹はこくりと頷く。
魔法生物も皐月に逆らった場合、お仕置きされるのだ。
皐月が魔法生物にするお仕置きとは、まずクルルをダンボールの箱に詰めるという。
名づけて『暗闇の中に一人』の刑。
もう一つは、保育園または幼稚園に行き、魔法生物をその園児のおもちゃ(ぬいぐるみ)として、
貸すと言う刑、魔法生物も園児相手に力を使うわけにも行かず、
為すがままの状態で、園児が飽きるのをひたすら待ち、
園児の目を盗んで脱出して、帰ってくるのだ。
園児には人気があるのだが、魔法生物はかなりの拒否反応を示している。
「樹ちゃ〜んしっかりと聞えたわよ〜、誰が怖いのかな〜?」
皐月が冷笑を浮かべて、樹たちに近づき・・・・・。
お仕置き決定。
といった、感じになるのかな?
僕は少し行き過ぎかな?と思える想像をしていた。
皐月・・・これ聞いたらすごく怒るだろうな。
『ふ〜ん、葉月ちゃんは私の事そんなふうに思ってたんだ』
といって、くすぐりの刑+うにょ〜んの刑+○○○な刑に処されるのだろうな。
結局は皐月より、自分が弱い存在である事を認めているのである。
そんな事を考えているところに、
「葉月ちゃん、今度は何を考えているの?」
春香ちゃんは、興味深そうに僕に聞いてくる。
僕はいきなり確信を突くような質問をされたことに驚き、
「は、春香ちゃん、いきなり話しかけないでよ」
僕は慌てて春香ちゃんのほうに向き直る。
「もしかして、またさっきと同じような事考えていたの?」
ギクッ、図星である。
「図星のようね」
春香ちゃんはそう言うと、二ヤッと笑い、
「どんなこと考えていたの教えてよ」
「でも・・・・」
「言ってくれないと、さっきの話を皐月にばらすわよ」
そんな春香ちゃんの言葉に、
うう、話さなければ良かった・・・。
後悔をするが後の祭りである。
「わかったよ」
僕はそう言うと、想像していた事を春香ちゃんに話す。
話し終わると、春香ちゃんは笑いをこらえるのに必死になっていた。
「何二人で内緒話しているの?」
皐月が突然どこか気に入らなさそうに言う。
「「な、何でもないよ」」
僕と春香ちゃんは、慌てて言う。
春香ちゃんは皐月の一言で、既に笑いが収まっていた。
「どうして、慌ててるの?」
「あ、慌ててなんかないよね、春香ちゃん」
「う、うん」
「まあ、いいわ次のを見ましょう」
皐月は不服そうな顔で言う。
「「うん、そうしよう」」
僕と春香ちゃんは見事にはもる。
そんな会話があって、最後のビデオをセットする。
題名は『魔法少女ラスカル・ミーナ』だ。
約三時間に及ぶ長い物であった。
その間、笑いあり、笑いあり、笑いあり、で涙はなかった。
「面白かったね」
皐月の第一声に、
「「うん」」
僕と春香ちゃんは頷く。
「悪の魔法少女が勝ちつづけるのって珍しいね」
「「そうね/そうだね」」
春香の言葉に僕と皐月はうんうんと頷く。
僕は例によって、想像を始める。
「ただいま〜」
樹がドアを開けて帰宅する。
ゴ〜ン、どこからともなく金盥が落下して樹の頭を直撃する。
「・・・・」樹は気絶したようだ。
「かかったわね」
家の中から如月さんが不敵な笑みを浮かべて、玄関に現れる。
「ごめんなさいね、樹ちゃん、これも運命だと思って諦めてね♪」
言葉では『済まない』と言っているのだが、言っている本人に反省の色は伺えない。
如月さんはそう言うと、不思議な呪文を唱える。
唱え終わると樹は光に包まれる。
光が消えると、そこにはセーラー服を着た金髪の少女が横たわっていた。
「ちょっとこれでは目立つわね」
と言って、指をパチンとならせると、金髪の少女は黒髪の少女となった。
そして、如月さんは、少女となった樹を起こす。
「う〜ん、俺は一体・・・・」
樹は頭を押さえながら立ち上がる。
「樹ちゃん可愛くなったわね♪」
如月さんは樹の前に鏡を持ってくる。
「これだれ?」
樹は鏡を覗いて、如月さんに問う。
「樹ちゃんよ♪」
如月さんは即答する。
「ど、どうして僕が女の子になってるんだ!?」
「どうしてって、今から貴女は悪の魔法少女として、正義の魔法少女と戦ってもらうからよ」
如月さんは、とんでもない事とさらっと言う。
「どうして、俺が悪の魔法少女になって戦わなきゃならないんだ」
樹は如月さんに迫って言う。
「どうしてって、面白いからに決まってるでしょ」
如月さんは楽しそうに樹に返答する。
「面白いって・・・それだけの理由で・・・・」
樹は唖然としてしまった。
いくら祖母だからって、面白いからってこんなことをするのか?
と思っているだろう。
数分後、樹は立ち直り、
「俺はもう元に戻れないの?」
力なく、如月さんに質問する。
「元に戻る方法はあるわよ、正義の魔法少女に負ければいいのよ」
その言葉に、樹は耳を疑う。
「負けるってそれでいいの?」
「ただし、わざと負けた場合には元に戻れないだけじゃなくて、お仕置きも待ってるから♪」
如月さんは嬉しそうに言う。
「お仕置きって・・・・」
「それと、これから魔法の使い方を伝授するわよ」
如月さんはそう言うと、樹は少し引いていた。
それと同時刻・・・・・
「ねえ、皐月魔法使ってみたいと思う?」
弥生さんが皐月に尋ねる。
「うん」
皐月は元気良く頷く。
「それじゃあ、これをあげるわ」
と言って弥生さんは、ぴ○ぴ○ハンマーを皐月に手渡す。
「お、お母さんこれって・・・」
皐月は不思議そうにそれを受け取る。
そして、試しに壁を叩いてみる。
ピコッ♪軽快な音が響く。
「冗談よ」
弥生さんはにこやかな笑顔で言う。
「お母さん!!」
皐月は物凄い形相で弥生さんに迫る。
「こっちが本物よ」
と言って、今度は小型のガンダム・ハン○ーを出す。
「これをもって、空に掲げれば、正義の魔法少女に変身できるわ」
弥生さんは真剣な顔で言う。
皐月は渡されたガンダム・ハン○ーを持って、弥生さんを睨んでいる。
また、担がれるのかと思っているようだ。
「大丈夫よ、今度は本当だから」
「本当に?」
皐月は、まだ疑っているようだ。
「本当よ、とりあえず試してみなさい」
と言われて、皐月は疑いながらも、空にガンダム・ハン○ーを掲げる。
掲げた瞬間、光が皐月を包み、ガンダム・ハン○ーはモーニングスターへと変わっていく。
皐月の服装は、Dr・○ンと同じような服装となる。
「本当だったでしょ?」
弥生さんが皐月に尋ねる。
「うん」
皐月は元気良く頷く。
先ほどの疑いの目も今は全くない。
「これから、魔法の使い方を教えてあげるわね」
弥生さんがそう言うと、皐月は真剣に耳を傾けていた。
そして、両方の魔法の伝授がおわった頃・・・・。
双方の場所に正義又悪の魔法少女が現れたと言う連絡が来る。
連絡方法は・・・・・言わないでおこうジャ○にお問い合わせが殺到してしまうからね。
連絡を受けた二人の魔法少女は、連絡のあった場所で鉢合わせとなる。
ちなみにそれぞれの魔法少女が思っていることをいえば・・・・・。
『早く負けて元に戻りたい』『悪の魔法少女ってどんな人かな?』
そんなところだろう。
そして、鉢合わせになったときの第一声は、
「貴女は誰なの?」
皐月は自分に良く似た魔法少女に驚く。
「姉さん!?」
樹は、正義の魔法少女が、姉そっくりなので驚く。
「姉さんって、私には妹はいないわよ」
皐月は『この娘何言ってるの?』と言う顔をして答える。
「姉さん、俺は樹だよ」
樹は一応自分の名前を名乗ってみる。
しかし、皐月には樹の性別が変わっているなど信じられるはずがない。
「悪の魔法少女が私の弟の名前を語るなんて、笑止旋盤」
「姉さん漢字が違ってるよ」
何となくの樹の突っ込みに、
「いいの、細かいところは気にしないのが正義の魔法少女の決まりよ
それに貴女に『姉さん』呼ばわりされる筋合いはないわよ」
皐月がとんでもない事をさらっと言う。
「違うところは直さないといけないんじゃあ・・・」
と、樹が言いかけているところへ、
「すきあり」
皐月はモーニングスターを樹目掛けて振り下ろす。
「えっ?」
樹は何とか身体をそらしそれをかわす。
「どうしてよけるのよ、せっかく上手くいったと思ったのに」
皐月は悔しそうに言う。
理論はかなりむちゃくちゃである。
「どうしてって・・・普通よけるだろ。
それに、姉さんは本当に正義の魔法少女なのか?」
樹が言う事も最もである。
「貴女が悪の魔法少女だから、私は正義の魔法少女なの」
皐月はそれが当たり前のように言う。
「無茶苦茶な事言ってる・・・」
樹は溜息をつきながら言う。
自分の姉がこんなことを言っているのに、少し呆れ気味でもあるみたいだ。
「正義の魔法少女は全ての行為が正当化されるのよ」
そういうと、皐月はモーニングスターを樹目掛けて放つ。
ヒラッ、樹はそれをかわす。
ゴスッ、通行人Aに命中し、バタッ、通行人Aは力尽きた。
「どうしてかわすのよ、貴女のせいで、他の人を巻き込んじゃったじゃないの」
皐月は樹がよけた事を叱責する。
「そんな・・・・姉さんが悪いんじゃないか」
小さく反論しているが、樹はその迫力に圧倒される。
「いい、今度はよけてはだめよ」
皐月はもう命令口調だ。
そして、また、樹を目掛けて放つ。
ヒラリ、ゴス、通行人Bに命中し、通行人Bも力尽きた。
「どうしてよけるのよ、また貴女のせいで他の人を巻き込んじゃったじゃない」
皐月は猛烈に怒る。
自分やっていることは、全て正しいとしか認識していないようだ。
「今度は魔法をぶつけてやるわ」
皐月は呪文を詠唱する。
「炎よ、我の望む者を焼き尽くせ、フレイムアロー」
皐月が呪文の詠唱を終ると爪楊枝サイズの火の矢が数本飛んでいく。
さすが覚えたて魔法少女である、魔法の規模はちまっこい。
樹は飛んでくる火の矢を鞭で叩き落す。
「これが魔法だって?」
樹は魔法の規模の低さにくすくすと笑う。
どうやらこの魔法のおかげで、樹は落ち着いたようだ。
「うるさいわね、万里の長城も一歩からっていうでしょ」
皐月は魔法の規模の低さ慌てて弁解する。
「万里の長城じゃなくて、千里の道だよ」
樹は皐月の誤りを訂正する。
誤りを訂正された皐月の顔は真っ赤になり。
「うるさい、うるさい、うるさ〜い」
と言って、モーニングスターを振り回して、
樹に突進する。
その途中の通行人二十数名が負傷したと追記する。
そして、樹に近づいてぶつけようと振りかぶったその時、
ゴス・・・自分の後ろ頭にモーニングスターをぶつけ、倒れる。
「姉さん・・・」
樹は自分を倒そうと必死になって、向かってきた姉をじっと見つめる。
自分のことを理解してくれなくても、たった一人の姉である。
如月さんに習った、弱い治療魔法を唱えてやる。
樹がそんなことをしているところに、
「樹さん」
そこへリーフとなった僕が現れる。
どうしてここにきたのかというと弥生さんに、子供達の事を聞いたら、
どこか慌てたような仕草をしたため、問い詰めてみると、
何をしたのかを白状した。
そして、心配となりここに来てみればこのありさまだ。
僕は誰もいないところを選んでリーフに変身して、
負傷者の治療にあたっていたのだ、その治療が終ったので、
樹に声をかけたのだ。
「と、父さん?」
樹はビックリして振り返る。
「俺の事がわかるのか?」
樹はおどおどしながら質問する。
「うん、弥生さんから全部聞いたよ、大変だったね」
僕がそう言うと、樹は泣き崩れた。
おそらく、皐月に信じもらえなかったのが辛かったのだろう。
僕は、樹の頭を優しく撫でてやる。
それから数分後、
泣き止んだ樹と一緒に、皐月を支え、家につれて帰る事にした。
その頃家では・・・・・。
「弥生、皐月は負けたみたいよ」
如月さんは嬉しそうに結果を言う。
「お母さん、予想通りね」
この二人には、ある場所から、魔法少女増員計画を任され、
ノルマとして、三人の魔法少女を作る事を言い渡されていたのだ。
そして、そのノルマを今日達成したのだ。
「それにしても、樹を魔法少女にするなんて、
お母さんも人が悪いわ」
弥生さんは苦笑しながら言う。
「何言ってるの、貴女だって皐月をそうしたじゃないの」
「あれは、望んでなったからいいのよ、
それにお母さんは和樹さんまで魔法少女に変えちゃったんだから」
ちなみに三人の一人目は和樹である。
「あれは悪かったと思うわ、でも、もう慣れてるみたいね」
「そうね」
二人はその後、目標達成を記念して、二人だけの祝賀会を上げていた。
ちなみに、本当の指令は、俺っ娘魔法少女一名だったりする。
「これじゃあ、誇大妄想だな」
そう呟き、自分でうんうんと頷く。
「葉月ちゃん、また何か思いついたの?」
春香ちゃんの鋭い?質問が飛んでくる。
「ううん、思いついてなんか無いよ」
言葉ではそういっているが実際はかなりの動揺が見られる。
「嘘、また酷いことを考えてたんでしょう」
春香ちゃんは僕に疑いの目を向ける。
「うっ」
僕は言葉に詰まる。
「やっぱり」
春香ちゃんはどこか確信したような目で僕を見る。
「二人とも何を話してるの?」
皐月は僕たちの会話に無理矢理入ってきた。
かなり不機嫌さがその表情から伺える。
「な、なんでもないから、気にしないで」
僕はあわててごまかそうとする。
この想像?の内容が皐月に知られたら・・・。
いや、考えないでおこう、そのほうがいい。
あくまで刑に処されるまではポジティブに考えないと。
「じゃあ、どうしてあわててるの?」
皐月は僕に詰め寄る。
「そ、それは・・・」
と返答につまり春香ちゃんの方を見る。
皐月はその視線の行方を察知して、今度は春香ちゃんの方へ向き、
「そういえば春香も、さっきは慌ててたわよね」
矛先を春香ちゃんへ向ける。
「あ、あたしはただ葉月ちゃんが皐月の事を・・・むぐっ」
春香ちゃんは僕が想像していた事を言ってしまいそうだったので、
僕は慌てて春香ちゃんの口をふさぐ。
「葉月ちゃんが私の事を何?」
皐月は春香ちゃんの口をふさいだ僕の手を振り払い、
春香に低い声で尋ねる。
「は、葉月ちゃん言っていい?」
春香ちゃんが僕に尋ねてくるが、僕は首を力いっぱい振る。
もしこのことを皐月が知ったら、今までのお仕置き?のオンパレードが来る事間違いなしだからだ。
「春香、葉月ちゃん正直に言ったら許してあげるから言いなさい」
皐月が僕たちに向かって命令するかのように言う。
ここで正直に話しても、話さなくても僕の運命は変わらないだろう。
「本当に許してくれる?」
僕は無駄だと思うけど一応聞いてみる。
「ええ、本当よ」
皐月は即答する。
「本当に本当?」
「ええ」
「本当に、本当に、本当?」
僕はしつこく聞く、皐月が怒った前歴があるからだ。
「しつこいわね、本当よ」
「じゃあ・・・・・」
僕は想像したことを全部皐月に話した。
続
後書
自分で書いてて言うのもなんですが、樹君がかわいそうですね(汗)
今回で樹君というキャラクターが誤解されるかもしれませんね(滝汗)
同じく皐月も(苦笑)
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