みずほ激震「ヤクザと銀行」元暴力団担当行員の告白

2013年10月26日(土) フライデー

フライデー経済の死角

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「信販会社のブラックリストに載っていたらアウトだから、車の購入者が組員ばかりでは限界があります。で、友だちや知り合いに名義を借りるわけです。オレオレ詐欺と同じで、名義貸しは10万円くらい払えばいくらでもいる。だから230件の大半が組員やないんでしょ」

みずほという組織の脆弱さ

以前、暴力団関係者がホームレスを雇い、銀行の住宅ローンを組ませて融資をピンハネする、という詐欺事件があったが、原理はそれと同じだ。

「ただし、230件という取引も現段階で銀行が発表しているというだけ。私はその倍くらいの取引があるんではないか、と睨んでいます。自動車ローンは大概5年の60回払いやから、100万円の車で月額にすると2万円程度。ローンを組んだ時点で何十万円も手にしているから、2万円を毎月払っていれば問題は発覚せえへん。ヤクザがローンの名義借りした相手の預金通帳を預かり、口座に月々入金するだけ。カネがなくなれば、また新たなローンを組めばいいわけです」

まさしく自転車操業である。そうやって焦げ付きを先延ばしにする分、取引が増えていく。それだけでなく、さらに次なる手もある、と岡野はいう。

「ヤクザは車を持つことが目的ではあらへんし、ええ車に乗るような時代でもない。だから、買った中古車はすぐに売り飛ばす。手っ取り早いのは、ローンを組んだ元のディーラーに買い戻させ、番号(ナンバー)だけ替えて新たな名義人に買わせる。1台の車で、同じ融資がなんぼでも受けられるいうことです」

しかし所詮は、問題融資の隠蔽工作に過ぎない。なにより先延ばしがさらなる大きな焦げ付きとなって発覚する、と岡野は懸念する。こう警鐘を鳴らした。

「問題取引は、銀行役員に報告はするんです。私の場合、問題が発生すると、担当役員から『岡野、処理できるか』と指示を受け、対処してきました。役員会に出てもそれで終わり。他の役員も事実は知っているけど、関係したくないし、知らんふりです。こういう取引は、誰かが身体を張って止めなければならない。簡単にいえば、みずほにはそういう人間がいなかったいうことですやろ。よく言われるように派閥争いもあって、組織がひ弱なのではないでしょうか」

みずほのブラック取引。実態解明は当局の捜査を待つ以外にないかもしれない。(敬称略)

もり・いさお/1961年生まれ。『週刊新潮』編集部などを経てフリーに。『同和と銀行』(講談社+α文庫)、『大阪府警暴力団担当刑事「祝井十吾」の事件簿』(講談社)など著書多数
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