某所から「偽装表示についてどう考えるか教えてください」とコメント依頼をもらったのですが、ぼくは別段考えることがないので、差し控えました。すみません。
たかがエビくらいで騒ぎすぎ…
そもそも不思議なんですが、別にエビが芝だろうが伊勢だろうがカニだろうが、そんなに大騒ぎするほどのことなんでしょうかね。さすがにエビだと偽って、ジョロウグモを出してきたら怒る気持ちもわかりますが…(ジョロウグモはエビの味がするらしいです)。
偽装は間違いなく悪いことですが、鬼のクビを取ったように攻撃する方が、ぼくにとってはよっぽど悪く思えます。以下、その理由を記しておきましょう。
あなたは被害を受けたのか?
偽装表示にかぎらず、この種の問題については怒る人がたくさんいます。
が、まず問いたいのは、「あなたは実際に被害を受けたのか?」という点。
今回騒ぎ立てている人の大半は、偽装表示とは無関係でしょう。ぼく自身も、報道を見るかぎり、偽装表示されたものを口にしたことはない思われます。一流ホテルも行かないし、百貨店で買い物もしませんしね。被害を受けたことがないのに怒るというのは、変な話です。あなたは何の関係があるのでしょう?
さて、市民社会に生きている以上、実際に口にしたことはなくても、企業の悪い振る舞いについては糾弾すべきだ、という意見もあるでしょう。
この意見にはある程度賛同しますが、それは後述するように、被害(迷惑)の度合いによって変わってきます。ぼくはエビがどうだろうとくだらない話だと思うので、関係のない市民が騒ぐのは変な話だと思ってしまいます(「関係のある」食品業界・飲食業界の方が自浄的に振る舞うのはいいと思いますけどね)。
どんな迷惑を被ったのか?
さて、もしもあなたが偽装表示された食品を口にしたとしたら、あなたはどのように振る舞うべきなのでしょう。「許せない!損害賠償だ!」と怒り、糾弾するのか、「まぁ仕方ないか」と許し、改善を待つのか。
健康被害が出ているわけでもなければ、「まぁ仕方ないか」と静観するのが「大人」だとぼくは思います。何か甚大な被害が出て、金銭的、精神的なコストを負担しているというなら別ですが、特段の迷惑を被ったわけでもないのに、いざ事態が発覚したときに「許せない!!」と騒ぎ立てるのは、やっぱりおかしい話でしょう。
あなたにも責任はないのか?
さらにいえば、偽装表示問題に関しては、市民であるぼくらも責任があることに留意すべきです。偽装表示は、「高いものを安く手に入れたい」という、ぼくらが持っている消費者的願望がもたらした悪果です。市民が欲望の起点にある以上、「企業が悪い!」と一概に批判するのは無知・盲目だと思ってしまいますね。
気持ちがいいから攻撃をしていないか?
関係のない市民が変な正義感を背負って企業や個人を糾弾するのは、得てして「ストレス解消」であることも指摘しておきましょう。
明らかな落ち度のある人間を叩くというのは、非常に気持ちがいいことです。相手はぐうの音も出せず、頭を垂れて謝罪します。叩いた人間は、「わたしは正しいことをした」という快感に酔いしれます。
が、そういう快感は不健全であることに気をつけましょう。快感と正義の執行は、厳密に分けて考えるべきです。これを一緒にしてしまうから、まるで根拠のない生活保護バッシングなどが発生するわけです。
というわけでまとめ。
・偽装表示を「叩く」ことには違和感がある
・そもそも叩いている人は、被害者であったり、関係者であるのか?
・被害を受けたとしても、そこまで騒ぎ立てることなのか?
・偽装表示については、そもそも市民にも責任がある
・「気持ちがいいから」企業を叩くのは、悪いことである
それでもなお「偽装表示をした企業を叩くべきだ!」と考える人はぜひご意見をください。皮肉とかではなく、そうした考え方にはとても興味があります。
ぼくはこういった「どうでもいい問題」を容赦なく叩く市民が溢れる方が、よっぽど市民社会にとって悪影響だと感じます。