◆毎日小魚食す
八十歳になっても自分の歯を二十本以上保つ「8020運動」。日本歯科医師会と厚生労働省が一九八九年から推進しており、二〇一一年度の調査では達成率が四割近くとの推計もある。県内でも健康な歯を持つ高齢者は多い。そんなお年寄りや専門家に健康な歯を保つ秘訣(ひけつ)を聞いた。十一月八日は同会が定める「いい歯の日」。
「虫歯になったり、歯が痛かったりしたことは人生でこれまでないねえ」
静岡市駿河区の原科●[●は金偏に圭](はらしなけい)さん(88)はそう言って白い歯をのぞかせた。大正生まれで、今も三十一本の歯が残る。一三年度の静岡市「よい歯の8020コンクール」で最高賞の市長賞を受賞。同コンクール七度目の入賞という強者(つわもの)だ。
歯が丈夫な理由を問うと「うーん」と考え込み答えた。「小さいころから家が地引き網漁をやっていたからシラスや煮干しをよく食べたなあ。今でも小魚は毎日食べますよ」
同じく市長賞の鈴木菊男さん(83)=同市清水区=も「子どもの時から目刺しを食べることが多く、今でも焼き魚は骨ごといただきます。昔からの習慣で時間をかけ、何回もよくかんで食べてます」。現在も二十九本の歯は健在で、今まで虫歯は一本もないという。
◆歯科医師「よくかむと唾液が効力」
二人のように八十歳を超えても健康な歯を保つにはどうしたらいいか。県歯科医師会広報部長の加藤淳一さん(49)は「実は唾液がポイント」と指摘する。
原科さん、鈴木さんとも昔から小魚をよく食べることが共通する食習慣。加藤さんは「カルシウムはもちろん、煮干しなどは固くてそしゃくの回数が増える。唾液が多く分泌されることで、抗菌や歯に付着した食べ残しなどを洗い流す効果もある。唾液が多い人の方が虫歯になりにくい」と解説する。
加藤さんによると、年代によって虫歯になりやすい箇所が異なり、ケアの仕方にも年代ごとに注意が必要。特に中年以降は歯を支える骨が落ちる傾向があり、歯間が広がるため、糸式ようじなどを利用して歯間をきれいにするのが効果的だとアドバイスしている。
この記事を印刷する