中国の習近平指導部が初めて独自の政策を示す重要会議の直前に爆発事件が起きた。テロはもちろん許されない。だが、社会に積もったひずみを正す改革の方向を打ち出す時でもある。
山西省の党委員会前で起きた爆破は、中国指導部にとって最悪のタイミングの事件であった。
天安門に車が突入した事件の余波がさめやらず、党の第十八期中央委員会第三回全体会議(三中全会)が九日に開幕する直前という、政治的に敏感な時期である。
爆発は、省最高幹部が集まる党ビル周辺で起こった。死者が出たのは、政府の不公正な行政に対する庶民の抗議を受理する「信訪局」の前だったとの情報もある。
山西省は命の危険と隣り合わせの炭鉱ぐらいしか産業がない貧しい地区で、貧富の差も大きい。
党や政府は、汚職腐敗や格差などに対する国民の不満が臨界点に達していると深刻に受け止め、一刻も早く社会のゆがみを正す動きを見せてほしい。
全国人民代表大会(全人代)の時期には毎年、全国から一万人もの人たちが、「上訪」と言われる陳情のため北京に押し寄せる。
中央指導者に地方の不正を知られぬよう、地元政府や公安関係者が、陳情者を無理やり地元に連れ戻すようなこともある。
不正を覆い隠し、抗議活動を警察力で抑え込むようなやり方では、マグマのように煮えたぎる庶民の不満を解決することはできないと知ってほしい。
習指導部は今回の「三中全会」を、改革開放路線に踏み出すことを決めた一九七八年の「三中全会」に匹敵する、歴史的なものにしようと意気込んでいる。
市場の力をフル活用して改革を深化させ、民間への規制緩和も大胆に進めるのではないかと、期待されている。
だが、最も大切なのは耳に心地よい改革のスローガンを打ち出すことではない。
国有企業など既得権益層の反発を毅然(きぜん)とはね返し、格差是正や汚職防止など庶民の社会的不満の解消につながるような具体策を打ち出せるかどうかである。
中国で「群体性事件」と言われるデモや抗議は近年、二十万件近いという。今や表だって党中枢を狙うような事件も起き始めた。
抑え込むばかりでは、事件の連鎖につながりかねない。習指導部は改革は待ったなしであると胸に刻み、会議にのぞんでほしい。
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