関門橋、挑む「あと100年」 開通40年で初の大補修
北九州市と山口県下関市を結ぶ関門橋が14日、開通から40年を迎える。高度成長期に造られた橋やトンネルの老朽化が社会問題となる中、累計3億6千万台の車両が利用した関門橋も例外ではない。管理する西日本高速道路(NEXCO西日本)は「あと100年の使用」を目指し、1973年の開通以来、初の大規模補修を進めている。ただ、国内で長大つり橋の長寿命化は「未知の領域」(NEXCO西日本)。「不惑」の関門橋はいつごろまで頑張れるのか、検証した。
片側3車線のうち2車線が通行規制され、工事車両が並ぶ。橋では今、傷んだ舗装の交換やコンクリートの補強が続く。工事は断続的に8年間にわたり進められる。工事を担うNEXCO西日本関連会社の〓野暢亮(すぎののぶあき)さん(42)は「頑丈な構造に驚いた。当時の技術力の高さと職人的な仕事の丁寧さがうかがえる」と語る。
関門橋ではこれまで、パトロール車による毎日の目視点検とメーンケーブルや鉄骨の年1回の点検を基本に、塗装のはがれなど金属劣化を招く箇所を対症療法的に補修してきた。
今回の補修計画は、有識者などによるNEXCO西日本の「大規模補修検討会」が約1年かけてまとめた。(1)道路舗装やコンクリートの劣化補修(2)鉄骨の亀裂修復(3)腐食したボルトの交換(4)塗装の全面塗り替え-が柱。委員長の日野伸一・九州大教授(橋りょう工学)は「メーンケーブルはまだまだ健全。ただ、細かい部分の劣化が致命的な損傷につながらないよう大規模補修が必要だった」と説明する。
一般的な橋の耐用年数は60年とされるが、関門橋が挑む「長大つり橋の長寿命化」は国内で前例がない。北九州市で10月末にあった開通40年記念シンポジウムでは、1883年に開通した米国のブルックリン橋など、海外の100年超の長大つり橋が紹介された。専門家は「海外では長寿命化に成功している例がある。関門橋もあと100年を目指してほしい」と求めた。
それは可能なのか-。「鍵を握るのはメーンケーブルの健全性」と日野教授は強調する。重量約2万トンの橋桁をつるすメーンケーブルはまさに橋の「命綱」だが、構造上、交換は事実上困難とされる。NEXCO西日本はケーブルの劣化を防ぐさび対策を検討中という。
インフラ老朽化問題に詳しい土木学会の高木千太郎氏は「交通量が多く、潮風にさらされる厳しい環境下で、どの部分がどの程度、腐食や劣化するのか。あと100年、橋を長生きさせるには、経年劣化の詳細なデータを蓄積し、20年、30年の長期的視点に立った保守管理が必要だ」と指摘する。
※〓は木へんに「久」
=2013/11/09付 西日本新聞朝刊=