＜明日香さん＞

　井上陽水、中島みゆき、チャゲ＆飛鳥などヤマハポピュラーソングコンテスト、通称ポプコン出身の歌手は多い。１５日登場のシンガー・ソングライターの明日香さんもそのひとり。８２年、「花ぬすびと」で優秀曲賞を受賞し、世界歌謡祭ではグランプリを獲得した。今どうしているのか。

「今月２７日、地元の愛知県江南市の市民文化会館で『明日香３０周年記念ライブ～心つないで～』をやるんです。ゲストに相曽晴日さんと浜根浩司さん、それと、もしかしたらもうひとり、サプライズゲストが来てくださるかもしれません。今はその準備の真っ最中です」

　名古屋は今池のカフェで会った明日香さん、こういって目を輝かせた。
「あと、実は今、がんの治療中でもあるんです。５年前、乳がんの手術を受け、治ったと思ったら、去年４月、腫瘍マーカーの数値が上昇してるのがわかりましてね。その治療の最中に今度は乳がんが脳に転移してできた脳腫瘍が見つかり、放射線治療のために２回入院しました」

　おいおい、大丈夫か？
「レントゲン検査で肉眼でも２７個の腫瘍が確認できました。しばらく前から指先のシビレやロレツが回らなくなるなど自覚症状はあったんですが、まさか脳腫瘍だとは思いませんでしたね」

　通院しながら抗がん剤治療を受けている。
「日常生活はなんとかできるし、ピアノだって弾けます。ホント、くよくよしてちゃ始まらない。いつもの明るいキャラでガンバってます、ハハハ」

　さて、愛知県犬山市出身の明日香さんは名古屋音大ピアノ科１年だった８２年５月、ポプコン本選大会に出場し、「花ぬすびと」で優秀曲賞を受賞。また、同曲で世界歌謡祭グランプリを獲得した。ちなみに、一緒に出たカナダの歌姫、セリーヌ・ディオンは金賞だった。

　グランプリの賞金は１万ドル。当時は１ドル＝２４０円前後か。
「何に使ったのか。ウ～ン、覚えてませんね」

　１１月にレコードデビュー。
「それから１年間に全国１３０カ所でコンサートがあり、その合間にテレビやラジオの収録でしょ。目が回る毎日だったけど、本業はあくまでも音大生だから授業に出なくちゃならず、１コマの授業のために名古屋に戻り、トンボ返りで仕事場に戻るなんてザラでした」

　音大卒業後は音楽活動を続けながら、名古屋テレビやＣＢＣテレビの情報番組リポーターやＦＭ愛知、ＦＭ三重のパーソナリティーとして活躍。その一方、おニャン子クラブの高井麻巳子のセカンドシングル「メロディ」の作曲や数多くのＣＭ曲を手がけた。

　９６年、ライブで訪れた札幌で知り合った男性と結婚。１男１女に恵まれた。ところが、先天性股関節脱臼による臼蓋形成不全を発症し、０５年、治療のために子供を連れて実家に帰省。数回に分けて手術を受けるうち、０７年春に乳がんが見つかり、５月に切除した。

「同じ年の８月に離婚もしました。いろいろあって、落ち込みましたよ。でも、音楽を支えにやってこられました」

　１０年８月に「Ｎａｔｕｒａｌ」、今年３月に「あ・し・た」と２枚のミニアルバムを発売。

「死の恐怖がないといったらウソになります。不安はいっぱい。ただ、これも神様がくださった私の運命。それを受け止めるだけです」

　中２の長女、小４の長男、実母と暮らす。