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お兄さんも無茶を言いますねぇ。
戻ってきた返信は、結構面倒な話でした。
いわゆる「思いやり」作戦ともいえるものです。
だって、官軍とその周囲に花を持たせろ、だなんて。
なにを考えているのでしょう?
というか、まぁ、わからないでもないのですが。
現在、戦功をぶっちぎりで一番なのは「黄忠軍」なのは間違いないですねぇ。
そして二番手に「董軍」、そして「曹軍」、かなり離れて「袁軍」でしょうか。
まぁ、細かい比較は別にして、これを機に躍進をねらう諸侯にとって「黄忠軍」は目の上のたんこぶです。
集積所の襲撃なんて言う戦功をあげてしまえば、一方的な妬みの的になるでしょう。
ということで、この討伐における戦功の一番星で誰かが的になってくれないかなーというのがお兄さんの希望でした。
では誰か、というと、第一目標が「曹軍」、第二目標が「董軍」だとのことです。
実にわかりやすい話なのですね~。
さすがお兄さんです。
曹操に戦功が渡れば、この情報の対価は正しく受け取れますし、董軍であれば必要以上に借りと感じるでしょう。
つまり・・・
「董軍と繋ぎをとりますよ~」
「程将軍、よろしいので? 曹軍の方が近いですが?」
「私の勘が「曹操やばい」と訴えるです~」
「・・・はっ」
とりあえず、伝令を走らせて一休みですね~。
では、お兄さんの絵姿でも眺めていましょう。
これは結構こころの安らぎになるのですよ~。
今話題の「黄軍」の主力部隊からの伝令と聞いて、私と月は緊張した。
何しろ私たちは、ほぼ無断で彼女らの領地を横断していたからだ。
むろん、勅命による行軍なので、大きく問題はないが、無茶の一つや二つ突きつけられる可能性も少なくない。
そんな緊張と共に受け取った書状は、なんとも奇妙なものだった。
簡単に言えば、
「手柄を山分けにしませんか?」
というもの。
現在の戦功と風評は「黄軍」が一番だろう事は間違いない。
続いて、ウチか「曹軍」だろうけど、庶人の人気は「曹軍」に軍配があがるだろう。
なにしろ、ねっちこい采配がきいていて、風評を操作することに長けすぎている。
少なくとも戦功の三倍の風評は得ているはずだ。
が、それだけの拡大をさせても、「黄軍」の戦功と風評に追いつかないと言うのだから、恐ろしい話だ。
「詠ちゃん、どうしよう?」
「難しいわ、月。この申し出自体はおいしいけど、この先を考えると不味いわ」
そう、不味い。
現在、この混乱を餌にして立身を狙っている手勢は多い。
曹家なんかもその一つだし、袁家もそうだ。
いや、立身と言うよりも功績の上積みだろう。
誰にも否定できない功績をたてることで、出世にかかる賄賂を減らすのが目的ともいえる。
で、この競争において、うちの恋が黄巾三万を散らした功績が有名だったけど、実際のところ討ち漏らしはかなり多い。
三万中一万ほどしか打ち取れていないだろう。
が、黄忠城は黄巾数万を落命させ、討伐に至っては同じく万を討っている。
数十万とも言える黄巾の何割を殺せたのやら?
そんな黄軍と共同作戦なんて、絶対に何かある。
そして、功績をいくら挙げても、双軍が一の名ばかり上がることだろう。
「・・・詠ちゃん、受けよう」
「月」
決意を秘めた瞳で月は私を見つめた。
「損得で考えれば未来を見通すことが必要だけど、今は一人でも多くの庶人を救うべきだよ」
私の胸の内が熱くなった。
そう、彼女こそ、王たる人物だ、と。
「わかったわ、月。受けましょう」
董卓軍がウチに合流したのは了解の返事をもらって三日後のことだった。
拙速とも言える判断だけど、庶人を多く救うためという書状をみれば、その意志が知れる。
まぁ、なんというか、お人好しなんだろうと、俺が言うと、軍師軍団は皆、苦笑。
なんでや?
「忠夫様、人のことを言えません」
朱里ちゃん、きついなぁー。
ともあれ、すごい早い行軍で疲れてるだろうなぁということで、将軍の方々はお茶に、兵士の方々にはカルメ焼きを特配することにした。
砂糖自体が高いので、本当に特配なんだけど、向こうの兵士さんには好評のようだった。
「わるいわね。全軍兵士を代表して感謝するわ」
頭を下げたのは眼鏡の少女。
軍師って感じがバリバリでてる。
「ええよ、このぐらい」
「糧食を分けてもらってそしらぬ顔なんてできるわけ無いでしょ?」
いや、これは「警戒」やろか?
「賈駆殿、忠夫殿の行為に裏はないぞ」
「・・・伯珪殿」
ちょっと眉をひそめている。
どうやら自分の名前を名乗るつもりはなかったらしい。
そういえば、董卓の外見って話は聞かないし、彼女が正面にでて何かを意図してるってことなんか?
まぁ、彼女自身に悪意は感じんし、ええけど。
「あらためて、俺がこの黄忠軍の指揮をしている横島忠夫や」
「・・・私は、賈駆よ。董卓軍の筆頭をしてるわ」
お互いに礼をした後で、お茶を、ということになった。
こっちはいろいろとお茶菓子を用意していたんだけど、現れた将の一人のお腹が盛大になったのを皮切りに、うちの食いしん坊組も盛大な合唱になってしまった。
「・・・苦労してるわね、お互い」
「いやぁ、こう言うのもええんちゃうか?」
思わず苦笑いの賈駆殿と俺。
軍議のはずだったのに、いつの間にか宴会になっていました。
はじめは鈴々ちゃんや季衣、そして董卓軍の呂布さんのために食事を作っていたんですが、どこからか趙子龍さんがお酒をもってきて、もうむちゃくちゃ。
兄様も諦めが入っていて、今日は大休止、と号令を出してしまったほどで。
「で、横島殿。本当にうちが先陣でいいの?」
「ああ、うん。うち、目立ちすぎたでしょ? そのへんで都に目を付けられるのが面倒やなぁと」
賄賂だの何だのと無駄な金がかかるしなぁ、といやそうな顔の兄様。
「そう。でも、武勲は必要でしょ?」
「今の主の地位が脅かされない程度に武勲があればいいと思うで?」
「なんで?」
「・・・あんまり強すぎると、都の政争に巻き込まれる」
「・・・・!」
思わず息をのむ賈駆さん。
「うちも、それはうれしくないわ」
「そっか、西涼ならいけるかとおもったんやけどなぁ・・・」
「それなら馬一族ね。あそこはガチガチの漢臣よ、だから逆臣の汚名も平気だわ」
「ぎゃくなんちゃうか?」
「いいえ、漢臣であるからこそ、自分たちが信じる皇帝の言葉を信じるのよ。だから途中でしゃしゃり出てきたバカが勅命を語っても、いっさい通じないわね」
なるほど、勉強になります。
「というか、なんでアンタと堅い話してるのよ、私は」
「いやいや、良い勉強になったで」
「あんただって、そのぐらい思いついてるんでしょ? 罠師殿?」
「いやー、まぁ、そのへんは・・・」
思わず兄様は周囲を視線で見回してます。
すると、こういう話に興味なさそうな季衣や鈴々ちゃんが興味深そうに聞いてました。
なるほど、そういう意図ですか。
「ま、うちの猪たちも聞いててほしかったんだけどね・・・」
賈駆さんの視線の先では、無限にご飯を食べる人やらお酒で上機嫌なひとやら、もう寝ちゃってる人たちがいます。
「がんばりや、賈駆殿」
「・・・うん」
私も心から応援してます。
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