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「キラキラネーム」をつけるのはやめよう

今日の大分は朝方は雨が残っておりましたが、昼過ぎからスッキリ晴れました。

ここ数日間、家族と大分のほうに行って温泉に浸かっておりました。「おんせん県」というネーミングはいかがなもんかと思いますが、そのクオリティはさすがでした。

さて、最近斜め読みした本をじっくり読みだしたら面白いことが書いてあったので、その紹介を。

人の名前というのは、親からもらったものであり、もらった子供のほうとしてはまったく自分のコントロールの効かないものであるということはご存知の通り。

ところがこの名前というのは、子供にとっては重大な影響を与えるもので、とくにアメリカのような多民族国家では、表向きは階級や差別が存在しないことになっていても、たとえば就職活動などではつけられた名前によって採用の判断が大きく異なってくるというパターンが出てきます。

たとえばアメリカの北部と南部では経済格差があり、とくに南部に多い名前(ファーストネーム)はボビー(Bobby)というもの。

ところが南部は北部に比べて経済的に貧しい人々が住んでいる割合が多いため、ボビーという貧しい階層を想像させる名前は、それが真実かどうかに関係なく、それを見聞きした人(とくに採用する人事担当者など)に、「ああ、彼の家族は貧しいんだな」と判断させる材料を与えてしまうわけです。

この傾向は白人的な名前と黒人によくある名前でウソの履歴書を5千社に送った時の会社側の回答率でも同様で、原著者によれば、白人的な名前(エミリー、アン、グレッグなど)の申し込みのほうが、黒人的な名前(アイシャ、ケニヤ、ダーネルなど)よりも回答率が高かった(10% vs. 6.5%)とのこと。

また、名前が読みやすいものであるということも重要で、原著者は弁護士や議員の名前でも、読みやすいほうが成功しやすい傾向があることを、統計的なデータを駆使して調査しております。

ここからわかるのは、少なくともアメリカでは「名前」からその人の社会の階層や人種などのバックグラウンドを知るためのきっかけにしている部分があり、これによって人を選別しているということになります。

もちろんこのような判断をするのは倫理的にはマズイわけですが、その善悪に関係なく、このような判断材料が存在することは事実ですし、そのような材料を意識的に自分の子供にわざわざ与えてしまうリスクというのは現実に存在することを認識しないといけないわけです。

おそらくこれを読んだ人は、「これはアメリカの話だから日本は関係ないよ」と考えるかもしれませんが、私がこの話を読んでとっさに思いついたのは、最近の「キラキラネーム」というか、いわゆる「DQNネーム}(←差別用語らしいですが)が与える影響。

これは「噂」の域を出ないものなのでなんとも言えないのですが、家族の知り合いの都内の某有名私立小学校の先生によると、「お金持ちがくる学校の子供たちにキラキラネームはいない」とのこと。

もし原著者の「名前が社会階層を反映したものだ」という調査結果が正しいとすれば、程度の差はあれ、日本でも(金持ち、もしくは身分の高い階層の)「わかっている」人たちは、なんとなく「キラキラネーム」をつけることの危険性(親の知性が疑われる、など)を感覚的に察知していて、なるべく保守的で読みやすい名前にしているということも言えるのかと。

これ以外にも、本書では会社の株式(とくに新規公開時のもの)については、読みやすい名前のほうが読みにくい名前のものと比べて株価の成績が良いということも調べて証明しております。

結論からいえば、名前というのはわれわれが思っている以上の驚くほど大きな影響を持っている、ということです。

これから親になる人たちというのは、よくよく考えて子供の名前をつけたほうが良いような気が。

奥山真司
地政学・戦略学研究者。

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