秘密保護法案:衆院で審議入り 首相「知る権利、尊重」
毎日新聞 2013年11月07日 20時34分(最終更新 11月07日 23時39分)
国家機密を漏らした公務員らに厳罰を科す特定秘密保護法案は7日、衆院本会議で趣旨説明と各党の質疑が行われ、審議入りした。安倍晋三首相は秘密解除のルールについて「一定期間の後に一律に秘密指定を解除するのは困難」と述べ、期限を切った一律の公開に否定的な考えを表明。個々の秘密指定のあり方についても「行政機関以外のものが行うのは適当ではない」と述べ、第三者がチェックする仕組みの導入に消極的な姿勢を示した。
特定秘密保護法案は、閣僚ら行政機関の長が(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動(スパイなど)防止(4)テロ防止−−の4分野で特定秘密を指定し、漏らした国家公務員に最長10年の懲役を科す。指定期間は原則5年で更新も可能。30年を超えてる場合は内閣が承認すれば延長が可能になる。
法案を巡っては、特定秘密への指定をチェックする仕組みが不十分なため、指定が政府によって恣意(しい)的に行われ、都合の悪い情報が隠される恐れが指摘されている。また、内閣の承認があれば無期限に指定を延長できるため、いったん秘密指定されると永久に公開されない危険があるとの批判もある。
政府は外交・安全保障の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案とともに今国会で成立させたい考え。首相は「情報漏えいの脅威や、外国との情報共有は情報が各国で保全されることを前提に行われていることにかんがみると、秘密保全法制の整備は喫緊の課題だ」と強調した。一方で、国民の知る権利が損なわれるという懸念があることについて、「(知る権利は)憲法21条の保護する表現の自由と結び付いたものとして、十分尊重されるべきだと考える」と理解を求めた。
7日の衆院本会議では、行政の情報不開示決定の妥当性を裁判所が検証する「インカメラ審理」を盛り込んだ民主党提出の情報公開法改正案も同時に審議入りした。同党の枝野幸男元官房長官は答弁で「情報公開制度の充実なしに、特定秘密保護法のみが制定されれば、知る権利を侵害する恐れを払拭(ふっしょく)できない」と述べ、改正案の成立なしには秘密保護法案には協力できないとの認識を示した。
一方、日本版NSC設置法案は7日の衆院本会議で自民、公明、民主、日本維新の会、みんなの5党の賛成で可決された。参院で8日に審議入りし、月内にも成立する見通しだ。