検査院報告:防災工事、効果上がらず
毎日新聞 2013年11月08日 00時14分(最終更新 11月08日 13時20分)
会計検査院が7日公表した決算検査報告は、人命を守るための防災工事が効果を上げていなかったり、東日本大震災の復興予算が不適切に使われたりしている実態を指摘した。
◇無駄なかさ上げ
岐阜県岐南町の国道21号高架橋では、国土交通省が2011〜12年度、地震による倒壊を防ぐために橋脚60本を厚さ約25センチの鉄筋コンクリートで囲む補強工事を実施した。橋脚は頑丈になったものの、鉄筋コンクリートの重量が負担になり、うち18本で足元の基礎部分の強度が低下していた。同様の事例は埼玉や京都など4府県でも12件確認された。
津波対策として防衛省が11〜12年度に沿岸部の駐屯地などの非常用電源設備をかさ上げした工事では、30件(約60億円)で無駄があった。浸水高を陸上・海上自衛隊は1メートル、航空自衛隊は2メートルと一律に決めて工事をしたが、予想される津波高は0〜5メートルと幅があり、かさ上げが不十分だったり、逆に余分な工事をしたりしていた。
◇ビデオが短すぎ
林野庁が11年度に「アジア航測」(東京都)に委託したレーザー測量では、同社が航空機の飛行時間として報告した約99時間のうち約30時間は別の業務のものだった。福島第1原発事故による放射性物質が飛散した山林の地形を調べるために被災地に向かったが、天気が悪くて引き返す際に他の業務をしたという。同社は不当と指摘された約1900万円を国に返還した。
独立行政法人「放射線医学総合研究所」(千葉市)が11年度に製作した放射線の啓発ビデオは、当初は約1時間の映像を作る予定だったのに、完成した作品はわずか11分43秒だった。分かりやすさのために専門的な内容を省くなどして短くなったという。放医研は国から受け取った補助金約2894万円を全額返還した。【古関俊樹】