第五十三話「真実」生まれて
おねぇが倒れた。
フレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデこと梨花ちゃまの手紙を読んでいる途中のことだった。
何事かとのぞいてみれば、成る程と思うほかない。
なにしろ、見つかったのだ。
前原圭一、そう、あの、けいちゃんが。
それも転生とかではなく、本人が見つかったというのだ。
どうやって、と大いに疑問を思ったんですが、なんとヴァリエールのお嬢様が、使い魔召喚したら出てきたとか。
「その手があったかぁーーーーー!!!!」
絶叫で血の涙を流す「おねぇ」。
まぁ、私らが呼んでも、食費に困る系統の大怪獣が出てきそうだからやめとけと言うのが両親の話でしたので、無理だと思うのですが。
聞くところによると、本気で大怪獣を一族そろって引き当てているので、やめろと言うのは本気らしいです。
まぁ、本人なら色々とあるでしょうねぇ、と思っているところで、がんがん荷物を準備し始めるおねぇ。
「あー、止めませんよ、止めませんけど、一応仕事もあるのを忘れないでくださいね?」
「わかってるっ! でも、でも・・・・」
ええ、ええ、何と言っても公国の王族と婚約の決まった私ですし、余裕抜群なのですよ。サトシきゅーん。
「じゃ、閣下方面は私が商談を進めますから、おねぇはトリステイン方面にいくんですよね?」
「恩にきる!!」
パンパンのバックを担いだおねぇでしたが、一応呼び止めます。
「おねぇ!」
「なに!!」
「これぐらい持っていってください」
投げ渡すのは200エキューほど。
梨花ちゃまに関わる前じゃぁ考えられなかった裕福さだった。
「・・・ありがと」
いえいえ、おしあわせにー
この手が震えて止まらなかった。
失敗魔法とさげすまれた日々。
成功率ゼロの魔法で、使用人にすら微妙な視線で見られていた毎日。
その失敗を逆手にとって、お母様とフレデリカと共に特殊魔法にまで昇華させた特訓。
しかし、本質はそこにはなかった。
真実はそこにはなかったのだ。
「・・・ルイズ、君が今まで使った魔法の中で、爆発以外の結果で終わったことは?」
「ないわ」
「水・風・火・土、そのなかで爆発以外の結果は?」
「ないわ」
「・・・召喚の時に使った呪文に疑問は?」
「水・風・火・土・・・・」
「五角の魔法、最後の一角を思い出すのです」
「・・・・・虚無っ!」
そう、フレデリカはすでにそのことを把握していたようだった。
ただ確信と確証、そして政治的な問題から秘匿してきたという。
何でとは問えない。
私にも容易に想像できるから。
そう、もし、王宮に、姫様にばれれば、
「ルイズ、ああ、ルイズ! 私の大親友ルイズ!! これでトリステインなんて不良債権はあなたに丸投げね! ああ、何と言っても虚無、虚無ですもの!! ブリミル様の正当なる後継者であるヴァリエール王朝に任せたわ! じゃっ!」
とか何とか言ってお空の向こうに逃げ出すに決まってる。
そんなわけで、お母様とフレデリカの話を冷静に聞くことができた。
寧ろ、心から感謝を捧げていたといってもいい。
無論、虚無には虚無の呪文があるのだろうけど、それがどこにあるのかもわからない現時点では・・・・
「・・・というわけで、始祖の祈祷書と水のルビーなのです」
「え、え、ええ? それって国宝でしょ!?」
「ルイズに友人代表で祝を上げさせるから貸せと言ったら、ホイホイ貸してきたのですよ」
グダグダ言わずに中身を見ろと、指輪をつけさせられて中身を見せられたとたん、それを理解した。
それこそが始祖の残した魔法、虚無の魔法だった。
そう、私は、虚無だったのだ。
「とりあえず、魔法実験は許可制なのです」
「な、なんでよ!!」
「虚無、その初歩の初歩の初歩、エクスプロージョンでも、この校舎を粉みじんにする力があるのです」
「・・・・!!」
「その力を目撃されれば、必ず国の力に組み込まれ、そして戦争の「兵器」として利用されるのです」
「そ、そ、そのぐらい、貴族であれば・・・」
「そして、虚無こそが真なる王家として持ち上げられ・・・・・」
「わかったわ、フレデリカ! 絶対にばれないようにする!!」
冗談じゃない、あの御花畑が結婚引退できる環境になんかしてたまるものか!
絶対に私たちに迷惑をかけつつも「大親友」を連発して負債を消しにかかるに違いないのだから。
「流石ルイズ、王族派だの貴族派だのに割れるのはお空の国だけで十分なのですよ」
うんうんと頷くフレデリカとお母様。
・・・ごめんなさい、結構利己的な理由なんです。
まぁ、ゴタゴタとしましたが、じじいに口止めをしてルイズにはカミングアウトしたあと、どうにかこうにか原作路線に舵を切れたのです。
そう、使い魔をつれた初授業。
僕たち、キュルケ、タバサ、ルイズ、僕、そして使い魔*3が教室にはいるとどよめくクラスメイト。
原作ならば「ルイズ、召喚できなかったからって平民さらってくるなよ!」とか騒ぎになるところなのですが、目の前の光景は原作を裏切っているのです。
なにしろ・・・・
「く、くそぉ、あれほど祈ったのに、祈ったのに・・・・」
「美少女、うらやますぃ・・・・」
「くぅ、私も男の娘がよかった・・・」
「僕に似合っているのは、ピクシーサイズなのか、そうなのかぁ!」
なんというか、羨望のまなざしなのです。
加え、原作のルイズなら鼻高々のはずなのですが、目の前のルイズは、賓客をもてなすように圭一を相手しているのです。
「ミスルイズ、そのように気を使わないでください。わたくしは、あなたの使い魔なのですから」
「いいえ、ミスタ圭一。たとえ儀式の中とはいえ、意志ある存在を使い魔にしてしまった償いをしなければなりません。」
実に堂々と、品格ある姿なのです。
やっぱり自分の属性がわかったことに関係してるのだと思うのです。
で、そんなルイズを見て女子も男子も何となく目を輝かせているのが丸わかり。
以前から結構人気のあったルイズなのですが、この貴族として見習うべき態度こそが人気の根幹であることを本人はあまり知らないのです。
「とりあえず、圭一もルイズも、しゃべり方を柔らかくするのです。シェイクハンドから始まる物語なのですよ」
「あうあう~、ホントはキスから始まったのですよ~」
言われてお互いにキスをしたことに気づいたらしく、真っ赤になって握手をしあう二人。
思いの外似合ってるのですね。
・・・圭一には幸せになってほしいので、この組み合わせもありかも・・・・
・・・なんでしょう、この寒気は?
「ウケケケケ」の予感がするのです。
「じゃ、これからよろしく、ルイズさん」
「はい、よろしくお願いします、圭一さん」
目の前の光景は心温まる光景のはずなのに、なぜなんでしょう?
えー、フレデリカたちは貴族派を王族派が割れることを恐れていますが、ルイズは面倒ごとを押し付けられることを恐れていますw
※今回の元ネタ
更新なし