第四十五話「苦渋の選択」が生まれて
「これが、光の国、なの?」
キュルケの言葉は実感だと思うのです。
始祖ブリミルを崇める宗教を中心とした、神聖なる国、それがロマリアのはずでした。
しかし、目の前に広がる風景は、そんな想いを叩き壊すものだったのです。
路地にはいつくばる人々、町にあふれる物乞い、絶望を瞳に浮かべた平民たち。
各国の中でもっとも平民に苛烈だといわれているトリステインであってもここまで酷くはないのです。
「前より増えてない? フレデリカ」
「確実に増えてるのです。そして、悪化してるのです」
絶え間ない重税、押さえつけられる活動、商売だってやりにくいはずなのです。
いま、ロマリアを動かしているのは税ではなく、各国から搾り取った寄進。
そしてそれを浪費した後のおこぼれに預かる商人たち。
商売を否定はしませんが、この光景を見てなにも思わない人間と取引はできないのです。
だから、ロマリア内部に入り込んでいる商人との関係を切ったら、本が流通できなくなった、それだけのことなのです。
町間にある教会では炊き出しをしているのです。
こういう巷のの善行は認めるのですが、その炊き出しも巻き上げられた税で賄われているのです。
大体、9官1民って、どんだけですか!
・・・あー、冷静に冷静に。
さすがのトリステイン最悪の領土でもやらない清々しいまでの悪政なのです。
「・・・フレデリカがなんであそこまでロマリアを嫌うかが実感できたわ」
キュルケは忌々しいとばかりに眉をしかめます。
「これは政体としての問題です。ですが僕が嫌っているのは教皇なのです」
「ああ、「アレ」ね」
「ああ「アレ」だものね」
「・・・「アレ」は私もイヤ」
実のところ、騎士団全員も嫌悪している。
まぁ、変態の好みに引っかかるのは二人ほどなのですがね。
「「「「「ちょ、ちょっとまて、そこのところくわしく!!」」」」」」
「本人に言うのは可哀想なので、内緒なのですよ」
「「「「「ぎゃーーー、きがやすまらねーーーー!!!」」」」」
ふふふ、我が騎士団の士気は最高なのですよ。教皇の罠がどんなものか、喰い破ってやるのですよ!
ふははははははは!
しゅーりょーーーーーーーTT
対ロマリア戦略終了のお知らせなのです。
もう、なんというか、深読みしすぎていてごめんなさい、といった感じなのです。
事の起こりは「レイニー止め」。
輸出制限により民にも聖職者にも「物語」が渡らない日々。
そして手元にある最新巻は「レイニーブルー」。
何度も何度も読み返して、何度も何度もやるせない気持ちが高まり、最後には気力消滅。
商工収益ダウン、農産物ダウン、ダウンダウン。
で、起死回生の機会が訪れたということで、「学園祭」に参加した教皇へ望みをかけたところ、自分だけ最新巻まで読んでホクホクと帰って着やがったというわけで、現在教皇窮地。
地位とか立場とかいう以前に命の危機が迫っているとか。
ロマリアは国として財政危機、民は存亡の危機、自信は命の危機。
進退窮まり泣きついてきた、というのが真相だとか。
ルイズ感謝なのです。
レイニー以降を満載した荷馬車を見せたら、教皇、五体倒地で拝んでるのです。
ここは一つ、負の遺産もひっくるめて公開するのですよ。
「は? それは何ですか?」
負の遺産なのです。
というか、萌えない産業廃棄物なのですよ。
先入観、怖いわー。
確かに政体は悪質だし、民衆の心も離れてるけど、今回の騒ぎの大本は「レイニー止め」。
フレデリカによる「物語」輸出制限によるものだった。
つうか、すでに侵略できてるんじゃないかしら?
「キュルケ、その視線は不快なのです」
「あらあら、それは失礼しました、名誉聖騎士殿。」
「了解していないのです!!」
この度、国家荒廃の要因を打ち破った勇者という事で、名誉聖堂聖騎士の称号を送りたいと飛びついてきた教皇を撃墜したフレデリカだった。
けど、称号の乱発は国家の位を下げるものなのだと真剣に忠告している姿は、大嫌いな人間にする行為ではないな、と思わされた。
「だから、その視線をやめるのですよ、キュルケ」
「ふふ~ん、いいじゃない、聖騎士様」
「むか~」
「うふふ」
まぁ、そんな意味のない名誉よりも実用的な取引は行われていた。
基本、大嫌いと思っていても利益誘導という立場に立てば、家族従業員のことを考える一端の承認の顔になるフレデリカは、最大限の情報と対価を引き出した。
現在の教皇が持つハルケギニアの状況と、大地崩壊に関する情報、そして聖戦の意味。
「とりあえず、この件に関して協力はしないのです。この件に僕の家族や仲間を巻き込んだら、徹底抗戦なのです」
「・・・し、しかし、事は全ハルケギニアに関わる問題で・・・」
「すべての人、すべての生命が協力するというなら良いですが、貴方のみているすべては「貴族」、いえ「マギ」だけですね?」
体をふるわせる教皇。
それ以上の話はされなかったけど、彼には大きな楔が打ち込まれたのがわかる。
「ブリミルを蔑ろにするつもりはないです。ただ、過去の亡霊が示したものを何の疑いもなく盲信させられている時点で会話が成立するとは思えないのですよ。」
なにか暗い炎を灯した瞳で、教皇はフレデリカをみていたのが印象的だった。
「ふ、ふ、ふ、フレデリカ、痛い痛いいたたたた!!」
「ふ、ふ、ふ、フレデリカ殿、痛い痛いいたたたた!!」
ダブルアイアンクローで、御花畑'sの教育なのですよ~
「さー、危機感と政治感覚を喪失した王族の教育が始まるよ~」
「一番、ルイズ! 狙撃します!」
「あ、あちちちちち、とても大切な部分の周辺が異常に熱い!!! あちちちち!!!」
「二番、タバサ。凍ります」
「いたたたたた、いたいですわいたいですわ、か、か、かみのけがおもくてつめたくていたたたた!!!」
「三番キュルケ、微熱よ?」
「「あちちちちちちちちち!!! 業火、業火だから!!!」」
とりあえず、猫マスクお休みなのです。
・・・・あれぇ?
なんでこうなったかなぁ?
実は、政治的取引とか教皇周辺のとりまとめとか、人民掌握なんて事までプロットしていたはずなのに、書いてみたらこの有様。
自分にゃぁシリアスが向かないっすよ~
とはいえ、暗い種は植わってしまいました。フラグですね。
とはいえ、聖戦への楔はありますので、いろいろと面倒なことにはなりそうです。
次回もお楽しみに~
追記:そろそろ約束の春(50話)が近い。プロット道理なのでカウントダウン状態ですw