第四十四話「○○○ー止め」が生まれて
試作品「原稿用紙」は、実に好評で、実はアルブレヒト三世閣下からも融通するように言われている。
無論、契約を無視しろとの言いつけなんだけど、じつは梨花ちゃん、アルブレヒト三世閣下からの強制は予想していて契約書の中に盛り込まれていた。
~製法についての開示は禁じるが、製品を販売すること自体は禁止せず。~
つまり、私らの最良でやっていいけど損するなーという事になる。
まったく、人の使い方をわかってるなぁ、と感心してしまった。
「おねえ、どの辺のを持っていきます?」
「製品版をひとしめ、かな」
「「ティッシュ」も持っていきません?」
「まぁ、うちの基幹産業にしようかってもんだしね、献上ぐらいはするけど・・・最高級?」
「プラス、溶ける紙も、ですね」
うん、かなりの需要をみこめるんだよねー、これ。
とはいえ、あんまり調子にのると、出る杭扱いになるから、その辺が難しい。
「・・・んー、原稿用紙、ティッシュまでにしとこ。それ以上は異端の嫌疑が掛かるし」
「すでに原稿用紙の製法を明かさない時点でヤバヤバなんですが」
「まぁ、その辺は黒猫印だってことで、梨花ちゃんに押しつけよう!」
「・・・おねぇ、卑怯ですね」
「格調高く卑劣つうことで」
ここはおひとつ、ハイタッチでお互い了解の意志を交換した。
「「ま、この程度の面倒は、梨花 (ちゃん)(ちゃま)には軽いだろうけどね」」
過大評価気味だけど、まぁ、頼らせてもらうよ、こっちの力が付くまではね。
さーて、せっかくの光の国への招待です。
僕も本気で行くことにしたのですよ。
作戦目標は一つ。
無事帰還。
次段目標は、いくつか。
たとえば、教皇の心の目的は何かとか、次期教皇の勢力図とか、政体への民意はどのレベルで反映されているかとか・・・・
基本情報収集ですが、いろいろと楔を打ち込まなければならないのです。
そんなわけで、今回は女子部の参加お断りなのです。
「ま、正論だけど・・・だが断る!」
無用に男らしいルイズ。
「向こうで御花畑な姫様が人質になるんでしょ? だったら女子がいないと入れないところがあるじゃない」
無用に論理的なキュルケ。
「・・・わたしはフレデリカの剣であり盾。」
一歩も引く気配のないタバサ。
「団長、いや、我が友フレデリカ。あきらめが寛容だと思うぞ」
くぅ、ギーシュのくせに、生意気だ。
ギーシュのくせに生意気なのです」
「あー、我が友、声に出てるぞ?」
「ん? まぁ、結果は変わらないのでいいのです」
「大変失礼だな、きみは!!」
「ふふふ、イジられキャラが切れても、愛らしいとしか思われないのですよ?」
「大変不快だな!!」
まぁ、ギーシュいじりはこの辺にして、三人に向き直るのです。
「今 回は、最悪の場合、ロマリアと事を構えるのです。御花畑'sの救出と領民の解放、そして二度とこんな事を考えないように恐怖を刻み込まなければならないの です。それはスゴく反宗教的行為なのです。僕一人ならば姿を消すだけで済むかもしれないですが、みんなが一緒だと、これはハルケゲニア全体を巻き込むこと になるのですよ?」
「でも、それなりに手は打っていて、その最悪は避けられるのでしょ?」
「・・・過信はできないと行っているのです」
気軽なルイズにくぎを差すと、なぜか三人はそれぞれ書状を出した。
「これは、皇后様から」
・・・めんどくさい宗教から脱却できるならそれもまたよし。
「これは、アルブレヒト三世閣下から」
・・・坊主、ムカつくだろ? 一戦構えるなら援軍出すぜ? あと、歌いに来いよな。
「・・・これはジョセやんから」
ムカつく坊主丸焼き? いいねーいいねー、かの「戦国物語」の武将のようじゃないか。しびれるねぇ、あこがれるねぇ。なんなら戦艦出すか? いっちゃう? 出すなら呼べよ?
僕は全力で倒れたのです。
なんか、知ってる人たち全員壊れているのですよ。
「つまり、私たちはそれぞれの名代よ。」
「それなりに戦力もあるからいいでしょ?」
「・・・猫の騎士団だけでも十分」
まぁ、たしかに。
うちの猫の騎士団は「学園祭」でも模擬戦をやって、各国の騎士団を下しているのですよ。
もう、王宮からは「学生騎士団」の「学生」を取れと矢の催促がきているのです。
ガリア聖衛騎士団との対戦の時に使った、ドットメイジトライアングルゴーレムなんかアカデミーで研究させろと大騒ぎになったぐらいなのです。
以降、ギーシュの字は「超合金」。
無駄に格好よくなったのです。
閑話休題
そんなこんなで、猫の騎士団全員と三人娘を連れて、僕はロマリアに行くことになったのです。
はぁ、まぁ、一度実家によってからなのですが・・・・。
凄い量だった。
ド=リステナーデの屋敷から運び出された絵画、というよりも怪画と詩集、いや死臭などの怪文章、そして怪しげなアイテムの数々。
それが切り札その一だそうだ。
「どうみても黒歴史でしょ?」
「だからこその切り札なのです」
なるほど、人質ならぬ記憶質なわけね。
「ルイズが脳筋じゃなくなって寂しいのです」
「そうね、なんか知的で、ルイズじゃないみたい」
「・・・中の人が変わった」
「あんたたち何気にとんでもないこと言うわね! それに中の人ってなによ、中に人はいないわよ! これが生身よ!!」
「うんうん、そういう設定なのですよ」
「・・・さすがルイズ、身のあるつっこみ」
くそぉ、フレデリカに純粋培養されたボケを振るうタバサには勝てない・・・。
「それにしても、よくもまぁ、これだけ怪しい内容を寄贈できるわね」
「ロマリアには、輸出規制しているので、どうしても暴走しがちなのです」
「ちなみに、どこで止まってるの?」
「「始祖みて」でいうと、「レイニーブルー」なのです」
「「「・・・・げ」」」
あの状態で情報停止? 暴動が起きるわよ・・・・。
「もしかしてさ、今回の暴挙って、輸出規制撤廃が目的なんじゃない?」
・・・・・
フレデリカの笑顔は硬直していた。
「とりあえず、簡易装丁版を大量に持ち込むのです」
どうやら完全に想定外らしい。
V&R出版によって、希少在庫をかき集めた私たちは、やっとロマリアに出発できたのだった。
というわけで、「レイニー止め」が生まれて、でした。
・・・なんか既に展開が読めているかも・・・・w
※今回の元ネタ
「プラス、溶ける紙も、ですね」・・・ スパイメモ
それ以上は異端の嫌疑が掛かるし・・・魔法で解析できない、理解不能の技術=異端 となる懸念がある
だが断る! ・・・ 某作品内の某漫画家
「戦国物語」の武将・・・織田信長公
「レイニー止め」・・・小説「マリア様が見てる」のレイニーブルーという作品の後、暫く出版がとまっていた為、展開が気になってファンがヤキモキしていた時期のこと。ネットでもかなり荒れていた