第四十三話「野望の手」が生まれて
そろそろ小雪が舞おうかという時期に、不幸の手紙がやってきたのです。
内容は同じようなものなのですが・・・
父上「ロマリアに行ってくれ。領民を人質に取られた。」
なんでも、敬虔な教徒をロマリアに招待という形で移送されたそうです。
あの変態の親玉、キモ過ぎなのです。
枢機卿「ロマリアに行幸予定あり。」
つまり、あの畑、結婚式の予行演習を大聖堂でしませんか? とかいって誘われやがったのです、絶対に許せないのです、あの畑!!
アルビオン「ロマリアへ行幸予定あり。」
あんた、元敵の総本山に何しに行くんだよ、反乱の陰にいたオリバー君、忘れたんかい!? ええ、種!!
母上「変な詩集と絵画で部屋がいっぱいです。何とかしてください。」
・・・母上、ごめんなさいなのです。心底ごめんなさいなのです。
「・・・ロマリアに行くの?」
「行くしかなさそうなのです」
心配そうな声を出すなら、原稿用紙から視線をあげるのですよ、タバサ。
「ちゃんと手を打っとかないと、喰われちゃうわよ?」
いま食べてるお菓子の総カロリーを理解した方がいいのですよ、ルイズ。
「まぁ、どうせ、信じられないぐらいにドロドロの手を打っておくんでしょ?」
キュルケ、君は誤解しているのです。
僕ほどの平和主義は、このハルケギニアに存在しないのですよ?
「「「うっそだー」」」
うぐぅ、な、泣かないのですよ。
そんなわけで、悔しいけれどどうにもならないので、あきらめていろいろと手を打つことにしたのです。
とりあえず、製紙関係は順調なので、春まで手放しでいられるほど。
この今書いている原稿用紙だって、試作品といいながらもかなり良い出来なのに安いのです。
これで本の値段も落ちて、もっとみんなが買いやすくなるのです。
で、す、が、ロマリアには流していないのです。
ムカつくまねをしてくれた報復は、ぜったいに足に来るほどカマスのです。
本の販売も順調で、そろそろ際物も出せるかな、と感じているのです。
も、ち、ろ、ん、ロマリアには流していないのです。
当然なのですよ?
で、逆に付加価値が高まっているので、偏在を使って、「教皇おすすめ」も複写してますし、外交特産物はこれでいいでしょう。
あとは、某地下鉱脈に対する僕の見解を叩きつけて決別、「4の4」に対する態度もきちっとしないと、いいように使われてしまうのです。
実際のところ、原作知識がどこまで通用するかも不明ですが、あの「男色」教皇とは同じ旗の下に立てないのです。
ならば、徹底抗戦を「政治経済」でするしかないのです。
もちろん、ド=リステナーデとラ=ヴァリエールの常駐軍があれば、聖堂騎士ごとき紙っぺらなのですが、いまだ宗教の楔が離れていない世界での行為としては悪手すぎるのです。
だから、向こうの派閥工作も手を抜けないのですよ。
ロマリアなんてところは、共和制政治の皮を被った共産主義なのです。
それも宗教という偽名を名乗った頭の悪い政治形態の負の遺産を押しつけるだけの詐欺商法を各国に押しつける悪党集団なのです。
山賊野盗の分際で、「聖なる」ものを語る時点で反吐がでるというものなのです。
「フレデリカ、悪党顔になってるわよ」
「ルイズ、言い方を変えてほしいのです」
「じゃぁ、王族顔」
な、な、な、なんて酷いことを言うんですかぁ、ルイズ!!
「あー、うちの閣下に似てるかも」
ガリアのアレな閣下に似てる笑いですかぁ!?
「・・・お姉さまが好みの物語を読んでる顔に似てる。」
・・・ちょっと光栄かもしれないですが、そういう顔になるですか、イザベラ様。
さぞや三等兵も肝を冷やしているでしょう。
なむなむ~。
梨花ちゃんが譲ってくれた物語。
かなりの量を持ち帰ったのに、誰も読もうとしなかった。
・・・某姪は別だけど。
結構落ち込んでたんだけど、しばらくすると夜のうちにやってくる人がバラバラと増えてきた。
はじめは奥様方の暇つぶしだったんだけど、子供が、大人が、最後には青年たちが読みに来てくれるようになった。
みんな一様に「続きは」という質問だったけど、持ち帰れる限界を超えていたので、持って来れなかったことを告白すると、みんながみんな落ち込んだ。
でも大丈夫! 本の入手先は押さえたし、ビシャーダルも覚えてもらったし。
「だから、新刊はこれからもよろしくね、ビシャーダル!」
「「「「「よろしくーーー」」」」」
なぜか膝から崩れ落ちたビシャーダル。
なんでかな、かな?
老評議会は紛糾していた。
何しろレナが持ち込んだ書籍のせいで、かなりの市民が蛮族に興味を持ってしまったのだ。
それもかなり好意的に。
その責任を追及された私だったが、すでにこの可能性は出発前に指摘していたし、あんな化け物が居るとは考えていなかったのは誰も一緒なのだ。
「・・・たしかに、な」
かの蛮族、フレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデが従えたという統括精霊存在「精霊王」の存在を報告した際、本気で健康を疑われた。・・・主に頭の。
しかし、薬の使用や精霊直接から聞いた情報で真実だと確認され、老評議会はパニックになった。
その騒動中にレナが「物語」を布教してしまい、今では老評議会のお膝元は「物語」に汚染され尽くしていた。
さらには新たな物語を求める声も高く、私はその役目を背負わされかけている。
・・・なんたる屈辱的な。
「ビシャーダル、して、その蛮族は虚無か?」
「いいえ。しかし、蛮族の魔法すべてが使え、精霊魔法も土地との契約なしで全力で使えます」
「・・・・そうであったな」
ぐったりと、評議会員たちはうなだれた。
「その蛮族と、友誼を結んでいるのは・・・」
「リィナァ、・・・レナ、ですね」
「むぅ・・・。」
まぁ、この先は見えた。
情報収集と意識確認、さらには同意の上で連行して薬による調査、必要であれば暗殺。
そんなところだろうが、かの蛮族を殺せばこの先エルフは精霊の加護を失うとまで言われているので、暗殺まではないだろうがな。
「では、議決をとる。ビシャーダルに全部押しつける、賛成のもの、起立を」
がたがたと立ち上がる評議会員。
・・・って、まちたまえ!
「賛成多数で議決。ビシャーダル、あとはまかせた」
「数の暴力だ!!!」
「数の評議会に訴えたまえ」
「横暴だーーーーーー!!」
原作キャラの一部が不幸なのは、筆者のシュミですw
※今回の元ネタ
三等兵 ・・・ プライベート ・・・ ジョゼット
「数の評議会に訴えたまえ」 ・・・ 「言葉の警察に・・・」 ・・・ 化物語の台詞より