第三十八話「感動空間」が生まれて
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第三十八話「感動空間」が生まれて
食事をしながら軽く「製紙」に関しての知識をすりあわせて、どうにか実用段階になるのは冬頃だと言うところまで話を煮詰めたところで、一区切り。
お仕事だと言うことでじっと待っていてくれた母上が、にっこり微笑んで指を指す。
「ねーねーふーちゃん、あの娘さんすごいわね」
指さした先では、あれな紳士が、女性に乱打されていた。
「へー、すごいじゃないか。まるでレナだね」
「そうですねぇ、レナさんの「レナパン」みたいな連打ですねぇ」
いやー、結構にてるのですよ。
「はう、はう、はうっ!」とか言いながら連打してるのです。
・・・・
「実験をしてみるのです」
そういった僕は、カーボンロッドと釣り糸、そして「えさ」を錬金で準備。
「ふーちゃん、このダンディーなおじさまの人形は何?」
「餌なのです」
ぶうぅぅぅぅんとロッドで振り投げられた「人形」がアレな紳士に直撃。
みればその少女、人形に抱きついたのです。
「フィッシュ!」
練金の応用で人形を使って抱きしめさせた僕は、一気に引き戻したところ、人形ごと少女が釣れたのです。
「・・・かーいーよー、おーもちかえりーーー!」
ダッシュで走ろうとしていますが、人形に抱きつかれて身動きできなくなっている少女を僕たちはのぞき込みました。
「・・・もしかして、レナ、なのですか?」
「ふぇ? もしかして、梨花ちゃん!?」
「「レナ!?」」
ここ、この場において、すでに言い訳はできない。
だから、僕や詩ぃ、魅ぃが、生まれる前の記憶があって、その記憶で友達だったことを母上に話したのです。
そうしたら、ころころほほえんで、受け入れてくれたのです。
「子供の頃はそういう遊びが好きよね~」
・・・やばい、妄想戦士扱いなのです。
とはいえ好都合かもしれないのです。
その路線で行くのですよ、と視線を双子に向けると、二人とも親指を立てて了解。
うんうん、こう言うときだけ空気が読めるのは良いことなのです。
えー、衝撃的事実なのですが、レナ、エルフなのです。
練金で「実物大着色ケンタ君」をあげたところ、大喜びのレナがフェイスチェンジを解いてしまい、正体が露見。
大騒ぎになるかと思いきや、大拍手にあったのです。
わざわざエルフの仮装、その勇気がすごい、と。
なんだか解らず照れてるレナはおいておいて、その場のノリのまま構内を案内、結構大騒ぎになりましたが、同じく巡回中のティファニアに遭遇したときにこの台詞がでたのです。
「はう? このこ、おばさまの若い頃にそっくり」
聞けば、レナの叔母の若い頃の肖像画があり、その絵にそっくりなのだという。
これを聞いたティファニアは大いに盛り上がり、詳しい話を聞きたがった。
だったら、ということで、寮の僕の部屋にみんなを招待したのでした。
「・・・これが「物語」の部屋」
「ここで、リカちゃんが物語を書いてるんだねぇ・・・。」
二人とも僕の物語を好んでいてくれるみたいで、二人で交わしながら、物語を読んでいるのです。
「ふーちゃん、姉妹って良いわね」
「母上、妹二人は長期計画すぎるのですよ」
「あら、ふーちゃんがいるんだから、妹一人で良いでしょ?」
「母上、僕は男なのですよ?」
「うんうん、わかってるわ。ふーちゃんは男の娘、そうよね?」
「「「「「そーでーす♪」」」」」
なぜか部屋にきたみんなが答えているのです。
ぐす、泣くもんか、なのです。
「はあああああ、リカちゃんかわいいよぉ~、おーーーーーもちかえりーーーーー!!」
「ぐぎゃーーーー、レナ、力が強い、ティファも掴まないのでほしいのですぅ!!」
「フレデリカは私の嫁ぇぇぇ!!」
「ルイズ、掴まるなのっかるな引っ張るななのです!!」
「・・・私は二番目で良い」
「そういいながら足に掴まらないのです、タバサ!!」
「美味しい匂いに誘われてやってきました、ジョゼット三等兵、いきまーす!!」
「ぎゃーーーー! 混沌の使者きたのですーーー!」
「宮廷工作に明け暮れて、ささくれた心を癒しに来たカトレア推参!」
「カトレア姉様、キャラ、違う違う!」
「きぃー、出遅れたわ!! こうなったら・・・・ヴァリエールジェットストリームアタックよ!!」
「「はい!!」」
「どんな攻撃ですかぁ!!」
もう、本当にパニックなのです。
梨花ちゃん、もてるわぁ。
あのヴァリエール三姉妹を誑し込んでいるだけじゃなくて、ガリア王家も誑し込んでるっていうのがすごい。
加えて、モード家の系譜と、それの復権を約束させているというのだからどんな政治力よ?
思わず、妾でも良いからもらってもらえないもんかと聞きたくなったよ。
まぁ、時間もあるし、学校の間は無茶はないってことで製紙革命の方が本命かな?
リカちゃんのお母さんに妄想戦士扱いされたのは痛いけど、それでも仲良くなれたのはうれしく感じる。
こんな母親ならよかったのになぁ、と思わなくもないけど平民に生まれるよりましだという感じもある。
相応の地位がなければリカちゃんに出会うことすらできなかったわけだしね。
で、色々と騒動の途中で、リカちゃんを呼びに来た男が現れる。
「団長! 歌唱のじかんっす!」
何でも、ロマリアの教皇が来ているらしく、宗教的な圧力軽減のために美少年による合唱を披露して機嫌をとろうということになったのだけれども、独唱をリカちゃんにさせることになったらしい。
で、聞けばリカちゃん「ロマリア」が大嫌いだそうで、拒みまくったけれど仕方なしに独唱だけは引き受けたそうだ。
「なに歌うの、リカちゃん」
「秘密なのですよ、ミー」
合唱の方は、確かにすごかった。
本職の合唱隊のような練度には驚いた。
でも、それ以上に驚いたのが「独唱」。
リカちゃんといえば、「雛身沢」でも有名な歌い手で、老人連中を虜にしてきたけど、このハルケギニア通用するのだろうかと思っていた。
思っていたのだけれども、それは、杞憂だった。
どこからか取り出したマイク型の杖。
ぐっと握って見せると、伴奏が始まる。
「こ、これは・・・・」「天城越○!?」
そう、不朽の名曲天城越○!!
それがリカちゃんの声で歌われるのだ!!
やばい、ということでハンカチ装備。
あ、レナも装備してる。
リカママも装備ってことは知ってるんだ。
で、逆に三姉妹や学院の生徒たちはキョトンとしてる。
ああ、知らないんだね、知らないんだ。
それは幸せだ。
ならばその幸せをかみしめて、その裾を涙でぬらすのだ!!
伴奏も終わり、オリジナル魔法「カラオケ」も終了。
万雷の拍手に礼をして演台を降りたところで、みんなが集まっていたのです。
「リカちゃん、あの天城越○から津○海峡冬景色までのエンドレス大泣きコース、最強すぎだよ!」
「梨花ちゃま、教皇様も衣服がたるむほど涙を吸い込ませていましたわ」
ぱーんとハイタッチの僕たちだったけど、他は大泣きのまま。
母上は久しぶりに聞けてうれしかったわ、と言っていたけど、ルイズたちは涙で目を真っ赤にしてる。
「ふ、ふ、ふれでりか・・・すごく良い歌詞だったよぉ・・・」
と、学園三人組は口々にほめてくれ、ティファニアも涙ながらに笑顔を向けてくれた。
「・・・やっとわかりました。想いが連なって闇に転じることもある。想いが明るいものばかりではない、やっとわかりました」
うんうん、と頷くレナがティファニアを抱きしめているのです。
「ふ、ふ、フレデリカ。ガリアでも公演しないかい?」
「イザベラ様、僕は歌手ではないのです」
「で、で、でも、アレをみんなに聞かせたい、そう思ったんだよ」
「そこまで評価していただき有り難うなのです」
「フレデリカ! 歌って、式で歌って!」
「フレデリカ殿、私からも是非!!」
御花畑カップル、ここでそういうことを言えば、どうなるかわかってるんでしょうねぇ?
「だったら、ガリアの式典でも・・・」
「・・・ろ、ろ、ろまにあでも、おねがいしたいですねぇ・・・。」
現れたのですね、涙ぼろぼろの変態の親玉。
・・・ちぃ。
「祖国のためには歌いますので、その際にお聞きに来てはいかがですか? 教皇様」
「・・・前向きに検討しよう」
それを聞いた御花畑’Sは、ひどく感動したかのような視線でこっちをみてますよ、まったく。
本当だった、本当だった。
以前、フレデリカが「教皇なんで向こうから参加させてほしいといってくるのです」なんて言ってた。
どんな策謀や陰謀が渦巻いているかと思いきや、「歌」を聞きたくてやってくるというのだ。
はじめは疑った、そして最近まであきらめていた。
それなのに、それなのに、フレデリカは「やってくれた」。
本当に私のフレデリカに対する借財は嵩む一方だ。
これで体を求められたら逃げられないかもしれないと思えるほどだった。
・・・
というか、それでチャラにしてくれるなら、私もうれしいのでそっちの方がいいのだけれど。
・・・
なぜかフレデリカが背筋をふるわせている。
何でかしら?
振り向くな、振り向くな、フレデリカ、振り向くな!
やばいやつからレーザー出てます!!
気をつけろ!!w
※今回の元ネタ
実物大着色ケンタ君 ・・・ カーネ○・サンダ○ス
(3,670文字)