ぶんか部物語
暁中学校・高校 競技かるた部(四日市市)
静まりかえった畳敷きの和室で、対戦する2人が百人一首の札を挟んで向かい合う。秋のある日、中学と高校の4組が練習していた。
1試合で使う札は50枚。互いに25枚ずつを自陣に並べて、15分かけて相手陣も含めて全部の位置を覚える。小声で何回も口ずさんだり、指だけを小刻みに動かしたりして集中する。
試合開始。正座している腰を、すっと上へ浮かせて構える。上の句が詠まれ始めると、すぐに畳をたたく音が聞こえる。人によって、シュッと軽やかに札が飛んだり、ダンッと勢いよく押さえたり。勝負は一瞬に着く。使われる50枚に入ってない空札が詠まれると、8人ともぴくりと動いた後、「ふうーっ」とため息がもれる。突き指や、相手の爪が当たっての切り傷はいつものことだ。
1998年に同好会として発足し、2003年に三重県でただ一つの競技かるた部となった。部員は高校生5人、中学生7人。「ほとんどが初心者ですが、久しぶりに10人を超えました」と顧問の澤田晃教諭。全体練習は月、水曜の放課後1時間半で、後は素振りや暗記といった自主練習だ。
かるた部の活躍を描いた人気漫画「ちはやふる」では、主人公の女子高校生が部をつくるために仲間を集めた。同じように、キャプテンの橋本奈央さん(高2)は競技かるたの聖地・近江神宮(大津市)で開かれる全国高校選手権出場に必要な5人をそろえようと仲間を求めた。過去4年続けて、部員不足で出ていない。
声を掛けられて昨冬に入部したのが東田茉莉瑛さん、渡部亜里也君(ともに高2)だ。東田さんは練習を見て「気配が澄んでいて独特な世界」が気に入った。渡部君は百人一首の全校大会で上位に入り、趣味で始めようと思った。「自分の好きな札が取れたときが一番うれしい」と言う。
来年はさらに高校の部員が増える。8月の東京での全国中学生選手権に県代表として初参加した加藤百恵さん(中3)は「かるたを取る先輩が格好よかったので始めた。札を払えるようになり、早く取れて楽しい」と頼もしい。橋本さんは「廃部の危機もあったけど、来年は近江神宮に行きたい」と燃えている。(永井啓吾)
《暁中学校・高校》
三重県四日市市の中高一貫の私立校。1948年に暁中、49年に暁高が開校し、83年に6年制の暁中学校・高校が発足した。生徒数は中高計966人。3年制の暁高校も併設し、部活動では同一チームを組む。高校のハンドボール部やバドミントン部は全国レベル。
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