第二十五話「男子歌劇団」が生まれて
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第二十五話「男子歌劇団」が生まれて
いやはや、この外交使節団の行軍中に書き上げたという男性向き作品には驚いた。
なんつうか、エロくないのだ。
男性向き作品と言えば、基本、エロエロであったはずだ。
しかし、今回の作品は、こう、雰囲気が違う。
確かに男の視線で書かれているが、こう、なんというか、そう、私たちがトキメく内容なのだ。
今書いているのが続編なので、ということで一巻目から見せてもらったところで気づいた。
これは、「始祖みて」の男子版だと。
それも、主人公があの「ユミーナ」の弟!!
なんという、なんという「萌」!!
聞けばこの作品は「禁忌」っぽいので流通制限をかけているそうで、最新作が読めるのは学院と抱き込みが完了しているロマリア教皇だけだという。
「フレデリカ、最新作をこっちにもながしな。」
「・・・異端審問官が怖いのですよ」
「教皇抱き込んでんだろうが!」
「そんな薄っぺらいトップなんか信用できないのです。金と女に狂った異端審問官に恨みは買いたくないのです」
「・・・くそぉ・・・・」
どうにかロマリアを黙らせないと、私の手元に「始祖みて」男子版が届かない、そういうことかい!?
「・・・とりあえずですね、「ロッテ」経由でなら・・・。」
「・・・そ、そうだった、そう、あたしにはあの子がいるじゃないか!?」
ロッテ、ああかわいいロッテ。
私に「始祖みて」男子版を届けておくれ!!
「あー、我が娘よ。とりあえず、外交使節との会合中に飛び込んできた無礼は目をつむるから、そろそろフレデリカ殿を解放せぬか? わしも色々と話したいのだが。」
「・・・/// 申し訳ありません、おとうさま、いえ、国王様!!」
「よいよい、そなたの政務が進む燃料だと思えば安いことだ。」
うんうん頷きつつも、ギラリと視線を光らせる王。
「で、フレデリカ殿。」
「はいなのです。」
「・・・男子歌劇団というものを作ってみませぬか?」
女子の理想を女子が作る。
それが少女か劇団の理念。
では、男子の妄想は?
その答えをガリア王は出そうとしていた。
声変わり前の少年に少女役を、体の線が細い少年に女性役を、そして目麗しい男性に男役を。
尽くす女性、勇ましい女性、か弱い女性。
勇ましい男、女々しい男、死をおそれぬ男。
そんな男と男の介添え女の物語を書いてほしいという依頼だったのです。
イーヴァルディーの勇者でも書けばいいのかと思ったのですが、オリジナルで劇団の華になるようなものを、という要望まで来たのです。
・・・難しいことをホイホイと・・・。
と、そこで思いついたのは「シャルロット」。
彼女の名誉回復を主眼に台本を書いてしまおうというものだったのです。
王家の名誉とシャルロットの名誉を両方守る形でシナリオをかいて、シャルロット自身に許可をもらい、そして王に見せたところ、大いに喜んでもらいました。
悲劇とその回復、彼女の自信の出自を知らないながらも他国から彼女の友人達が駆けつける。
理不尽な魔法薬、そしてその効果を打ち消そうと躍起になる「猫の騎士団」。
大暴れと努力と友情と勝利が渾然一体となった大剣劇。
もちろん、話の主題の「復権」は広まること請け合い。
「ふむ、イザベラから聞いたときにはまさかと思っていたが、この手法ならば言伝も易かろう。」
「とりあえず、剣劇無視の緩い方もトリスラニアに送っておきましたので、同時公演が望ましいのです。」
「・・・なぜだね?」
「お父さんはガリア、娘さんはトリスタニア。どっちもいきたい家族は、何度も往復して実においしいのです」
ラグドリアン湖あたりを中継地点にして、一日のうち何便も船を往復させて、虚無の日前後や夏期休暇周辺でバリバリ観光収入を増やすのです。
で、その際の関税を安くすれば、商人たちも乗ってくるですし、一人当たりの乗車賃も安くなるので大歓迎。
トリスタニアとガリア友好ある限り、この劇場観光は盤石の収入源になるのですよ。
「・・・これは、おどろいたな。こんな外交カードを切ってくる使節なんていなかったんじゃないかい?」
「常識に捕らわれては新しいことが出来ないのですよ」
「・・・ふむ、これはトリスタニア王宮ものんでいることなのか?」
「王、ぼくは王宮に対して貸しがありすぎて、王女自身が泣きすがるほどなのです。のませられるか、ではなく、呑ませてくださいと頭を下げてくるのですよ?」
「なんとも怖い使節団長だね」
「心強いと言い換えてもいいのですよ?」
そんなわけで、少年歌劇団設立時の協力とトリスタニア王宮の説得を主軸にした外交交渉がまるっと完了しつつあるのでした。
もちろん、着地点は「不可侵国交」。
せめて自分たちの代だけでも王名で戦争はしないでおきましょうという前向きな条約が交わされることが決まったのです。
・・・じつに原作ブレイクなのですよ。
ぼくたち「猫の騎士団」がそろそろガリアを出国しようかというところで、ロマリアから熱いラブコールが何通も来ているのです。
『なぜ、少年歌劇団をロマリアで作らないのかぁ!?』
そんな内容の書簡が毎日のようにいろんな最高司教からくるわ、変態が伝書鳩代わりにくるわでもう大変なのです。
とりあえず、毎日ルイズが狙撃するにも関わらず、平気のへいざで現れるのは怖すぎなのです。
今度変態が来たら、まじで虚無をルイズに仕込もうかと思ったのですが、今度は協会の下っ端を使ってきたのです。
さすがに素人は狙撃できないルイズなのですが、ぼくはとりあえず呪っておくことにしました。
・・・なんとなく「オリバー」君に似ていたから。
それはさておき、今回の書状は「外交」ついでにロマリアに来ませんか? おもしろいものを見せますよ、という教皇からの誘いでした。
もちろん、ノー。
僕は、ノーといえる貴族なのです。
が、追加できた御花畑の手紙が頭痛を呼ぶのです。
~王子との媒酌人に教皇がなってくれるそうなの! ロマリアで打ち合わせしてきて!!~
「ルイズ、そろそろ暗殺が必要な時期だと思うのですよ」
「・・・お母様に連絡しておくわ」
とりわけ、媒酌人の件は御花畑の独走に違いないので、ウェールズ王子に突っ込みを入れてもらい、ロマリアに抗議を入れさせるのです。
さすがにアルビオンからの抗議があれば、バカなことをしないでしょうし。
「えーっと、では、お断りになる、と?」
「今回の巡回で学園の単位がボロボロなのです。受けたい講義も受けられない目に遭わせた王宮の指示など「ポイ」出来る立場にあるのを理解できていない人の策謀など踏みつぶすのですよ?」
「・・・信じられませんな。ロマリアの、教皇の命に背くなど・・・。」
「あなたはこの手紙の中身を把握していませんね? 外交のついでに来ませんか? と誘われているだけなのです。いうなれば断るという選択肢を与えているにも関わらず、国元に揺さぶりをかけるような「人間」を信用できるとおもうですか?」
瞬間、真っ赤になったオリバー似のおっさんでしたが、深呼吸の上でコチラをにらみます。
「・・・教皇様のみこころを知らぬ愚か者が・・・。」
「どうも誤解があるようなので言わせていただきますが、絶対に従わせたいなら「勅命」を下しているのですよ? それを行使できない時点で「個人的」な「依頼」なのは本決まりなのです。それすら理解できない盲信者がバカをいうな、なのです」
「・・・ぐっ。」
真っ赤になったまま、下っ端はその場を去ったのでした。
もちろん、風最高組が気配を消して後を付けていたところ、途中で傭兵ギルドにコソコソ入っていたとか。
さらに待っていると、裏口からボコボコにして追い出されたそうです。
まぁ、当然ですね。
ぼくや「猫の騎士団」はブラックリストに乗っている存在になったのですから。
ぼくらの暗殺や謀略の依頼が入ると、即座に各王宮に連絡が入り、依頼者の素性が詮索されるシステムになっているのです。
バカには牢屋、大バカにはタコ殴り、超大バカには飼い主への報復が入ることになっているわけで、今回は大バカだったらしいです。
「団長、本当にロマリアにはいかないのかい?」
「ギーシュ、あんなヒドいところには何度も行きたいわけ無いのですよ」
「で、大丈夫なのかい? 教皇の誘いだろ?」
「向こうも弱みがあるから「勅命」を出せないのです。だったらぎりぎりまで向こうの出方を探るのです。」
「時間切れになる可能性もあるんじゃないのかい?」
「ぼくが持っている以上の情報は向こうも持っていないのです。」
「・・・じゃぁ、ロマリア教皇が何をたくらんでいるかもわかっているのか?」
ぼくが頷くと、団員たちがどよめきます。
とりあえず、今のところは自分が虚無だとあかして王家に準ずる立場であることを強調して、ぼくへの協力を求める、そんなところでしょう。
加え、各始祖王家に覚えめでたい僕を取り込んで、「あの」現象のために対抗するつもりでしょうが、そんな事の為に利用されるつもりはないのです。
僕には僕のアプローチがありますし、人間だけで対抗しようと言う姿勢がイタダケないのです。
「いやー、さすが我らが団長。そこにしびれてあこがれるな。」
「ああ、王宮も早々に役職に着ける算段をしているが、熱心なファンが反対してるそうだ。」
「つうか、学生騎士団って、卒業後はどうなるんだ?」
「まー、なんつうか、フレデリカ団長以外認められんけどな」
「つうことは、次男三男はこのまま騎士団で軍務か?」
「ありっていえばありだな。」
「ていうかさ、職場としちゃぁ最高だろ?」
「・・・あとは顧問の名前を気にしなければ、な」
「「「「「・・・・・」」」」」
「猫の騎士団」の顧問と言えば、言わずとしてた「ヴァリエール婦人」。
誰もが声を潜めるのですよ。
にゃおーん。
イメージはウイーン少年コーラスです。
※今回の元ネタ
更新なし
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