第二十四話「男の夢」が生まれて
えー、今も敵襲にさらされているんですが、ボクは今執筆中です。
以前書いた「三ヶ国英雄物語」の主要英雄を「女性」に入れ替えて、一人の男を競いあう物語にしたところ爆発的に広まってしまい、ルイズ達が同行して原稿取りしなければならないほどになりました。
いま、一番ファンレターが多いのも「これ」。
不本意ながらラ・ヴァリエールも増産に踏み切りました。
こういう男性向けの物語の執筆は、御師匠様により制限されていたのですが、市場が馬鹿に出来ないと言うことで執筆許可がでたのです。
で、今まで少量の「男性向け作品」で糊口をしのいでいた変態達が、目の前にあふれた作品を資金の限り買い集めたものだからさらなる市場付加が加わり、出版すればするほど儲かる状態になってしまったのです。
もと居た世界の出版業界が聞けば、泣いて悔しがる状況なのです。
で、今書いているのも、その「男性向け」の女体英雄物語で、こちらも馬鹿みたいな人気。
これを読んだ変態の一人が、主役の女性を娶った主人公をヴァリエール公爵だと思いこみ、真の男だと誉めたたえたとか言う逸話まで。
・・・実に、その、トリステインに帰り辛い状況なのです。
エレねえ様やカトレアねえ様から「自重せよ」とのご意見まで手紙でいただいて、もう、その、がっくりなのです。
で、騎士団連中は「もちろん」大好物の物語を綴る時間を作るためということで、修羅が如くの活躍を見せ、一日の終わりには綴られた文の原稿を回し読んで身悶えるという気持ち悪いサイクルになっているのです。
「団長、俺たちは生涯ついていきます!!」
「「「「「ついていくっす!!!」」」」」
「あー、もー、変態騎士団自重!!」
「ルイズ、それはひどい。」
「我々は紳士だ。淑女を助けることにこそ真価のある紳士だ」
「あんたらは、変態って書いて「紳士」とよむってやつらでしょ?」
「・・・いやぁ・・。」「正面から誉められると、ちょっと」
「「「「「なぁ?」」」」」
「誉めてないわよ!! 蔑んでるわよ!!」
「「「「「あああ、なんかなんだか、こう、もっと蔑んでくれ」」」」」
「いやーーーー! もう、この変態止まれ!!」
ルイズの狙撃が次々と命中するものの、身悶える騎士団たち。
毎晩毎晩の光景なのでいいのですが、ここまで「変態」になったのは、ルイズの調教があってのことなのですよ?
さすが御師匠様に最も近い性癖を持つ三女なのです。
「フレデリカ、いま、すんごく不快なこと思わなかった?」
「・・・・てへ、なのです☆」
「否定しろーーーーー!!!」
魔法というものは、発現した途端に完成しているものではない。
発現後にも手を加えることにより強化できるし、その強化の方向性だって様々なのだ。
初めてフレデリカ団長が「火の矢」を作った光景は未だ忘れない。
いくつもの工夫が加えられた数十もの赤い矢が、一本に束ねられたときの輝きを。
「これはお日様と同じ色なのです。」
最初は意味が分からなかったが、今ならわかる。
単に作り出した「火の矢」の数十倍もの密度であるということを。
ちょっとやそっとの風では遮れない。
水や土の壁でも遮れない。
すべてを「消し炭」に変える炎。
あの「風サイコー」ですら、フレデリカの「炎」をみて言い訳しながら逃げていった。
で、この「炎」。
一人じゃなくても出来ることを示唆された。
「君たちは、一人一人は「火」なのです。でも、君達なら集まって一つに同期したそのとき「大きな炎」になるのです。炎になったぼくたちは「無敵」なのです!」
正直に言えば、その台詞は知っていた。
フレデリカの著作「最高峰をめざせ」という物語の中で病魔に蝕まれた指導者が生徒達に言う台詞。
でも、物語以上に現実に即していた。
いま、現実にその台詞を言われた俺たちは、物語の「ノノリリ」や「ケイズ=ミー」よりも真摯に受け止めることができた。
そう、俺たちは「炎」なのだ、と。
始めた同期訓練は過酷だったが、成果は目の前に出ていた。
「いくぞ、火の同期トラアングル!」
「「おう!!」」
三人同期で炎の矢が着弾した途端、地面は液状化し燃え上がる。
そしてその熱により爆発し、山賊達を脅かす。
蒸発までした地面は空中に舞った瞬間に冷えて灰になる。
絶対にドットメイジの魔法ではあり得ない結果だった。
「いくぞ、ゴーレム同期トライアングル!!」
「「「おう!!」」
こちらの同期トライアングルは結構実践的だ。
造形するもの、命令を半自動で与えるもの、表面を魔法加工するもの。
そんな仕事振りで作られた王城壁すら越える大きさの巨人。
これが我々「青銅小隊」の真骨頂!
「火の同期トライアングル、乗せるぞ!!」
「「「おお!!」」」
土の力の巨人に、俺たちの火の力が乗せられる。
火と土の「同期ヘクサゴン」マジック、おまえ達に味あわせてやる!!
「「「「「いくぞ、ブレストファイヤーーー!!」」」」」
薙払われた山賊達と根城は、俺たちの「同期ヘクサゴン」によって滅んだ。
この活躍でフレデリカの創作意欲がわいてくれるといいのだが。
えー、信じられないほどの火力なのです。
計算上は出来ると思って訓練したのですが、ここまでいくとは思わなかったのです。
ルイズもさすがに目を剥いているのです。
「あの「ブレストファイヤー」って、・・・なに?」
「火の系統の魔法を収束させることが出来る「火の魔石」を練金して装備させたゴーレムに、火の魔法を放たせるとああなるのです」
「・・・ほかに武装は?」
「カッタートルネードに酸を混ぜて吹き付ける「ルストハリケーン」と、ゴーレムの腕の中身を「火薬」に練金して敵陣へ叩き込む「ロケットパンチ」なのです。」
「・・・フレデリカ、あんた戦争でもするつもり? 外交でしょうが、外交!!」
「いやー、巨大ゴーレムは男の夢なのですよ」
「女にゃ悪夢よ」
最近、ルイズの言葉に知性のきらめきを感じるのです。
きらめきは宇宙、実にすばらしいのです。
とはいえ、さすがにこのままじゃまずいので、周囲復旧を土のメイジ組と僕でやったあと、外交使節歓迎団と合流したら、団長である第一王女のイザベラ様に質問責めにあってしまったのです。
とりわけ、理論的には難しくない話なので説明すると、使節団の人々が驚きで身を堅くするのです。
「・・・フ、フレデリカ? そんな機密魔法を国外に漏らしたら、まずいんじゃないかい?」
「そんなことないのですよ? やり方簡単、結果絶大。その気になれば誰にでも出来る事なのです」
「し、しかしだね、いままでそんなことが出来たなんて話は聞いたことがないよ?」
「それは、気位だけが高いドッドメイジが手を取り合うなんてシーンが無かっただけなのです。逆に起きた現象を研究すれば直ぐにバレることなのです。」
「・・・そ、そうかい?」
「それに、トリステインからの技術供与という形を取れば、お互いの利益になるのですよ?」
「はぁ・・・本当に怖いやつだね、あんたは。」
苦笑いで右手を差し出すイザベラ様。
「ようこそ、ガリアへ。」
「しばらくお邪魔するのですよ、イザベラ様」
設定や世界の有り様につきましてはご都合主義です。
魔法の出来具合はチートです。
で、シリアス・・・なにそれ、美味しいの?w
※今回の元ネタ
三ヶ国英雄物語」の主要英雄を「女性」 ・・・ 真恋姫無双
「最高峰をめざせ」 ・・・ トップとねらえ
ゴーレム同期トライアングル ・・・ マジンガ○Z
きらめきは宇宙 ・・・ ○○のステルビア