第二十三話「無茶振り」が生まれて
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アンリエッタはつくろいませんw
正面から、真っ向勝負です。
勿論負けますがw
第二十三話「無茶振り」が生まれて
「フレデリカ、シュバリエの称号を得なさい」
「いやなのです」
「フレデリカ、シュバリエになりなさい」
「だが、断る! なのです」
王宮の無茶振りにノーといえる貴族、それがボクなのです。
突然王宮に呼び出したとたんにバカなことを言い出した御花畑を完全否定したところで帰ろうとしたら、涙ながらにすがりつかれたのです。
ええい、王女の自覚を持つのです、御花畑!
「まって、待ってちょうだい!! 話を聞いてほしいのよ!!」
「・・・だったら初めっから話すのです。」
御花畑曰く、ガリアとの国交樹立とアルビオン復興支援、そして国内不穏分子の狩り出しまでやっていると、完全に人手不足だそうなのです。
で、武力や諜報力を国内に向けなければならない今現在で、重要な案件を任せられる貴族が不穏分子っぽい状況では身動きがとれない。
だったら、国外にも人気が高い「物語のフレデリカ」に親善大使として出向いてもらえば、と鳥の骨が言い出したそうです。
あの、無駄に神経をすり減らしている爺には同情するのですが、巻き込むなっ! なのです。
「お願い、国を、私を助けると思って・・・、いいえ、私の明るい未来のために・・・・。」
「対アンリエッタ借款は、ずいぶんと僕寄りな気もしますが?」
「期限の決まっていない借金なんか後回しよ!」
「いい度胸なのです。ならば、かなりの無茶振りを飲んでもらうのです」
「・・・いいでしょう。国の力見せますわ」
すがりつき姿勢から女王ポーズに移行したアンリエッタ。
ふふふ、ボクの無茶振りに震えるがいいのです。
「身上が真っ白で、地位もそこそこ、名前も顔も上々という男とエレノオールねえ様を成婚させるのです。もちろん、ぼくとの成婚以外で。」
アンリエッタ、膝から崩れ落ちましたのです。
真っ青な顔を両手で支え、イヤイヤと顔を降ります。
「・・・まだ、平民を貴族にしろと言われた方が楽だったわ・・・・。」
いまだガクガク震える足のせいで立ち上がれないアンリエッタの頭をなでるのです。
「・・・これが無茶振りと言うものなのです。国の力でもどうにも出来ないことを学ぶのですよ、アンリエッタ」
「・・・ああ、私はなんて無力なのかしら・・・。」
さめざめと泣くアンリエッタに「条件は今のじゃなくてもいいし、別に後付けで取り引きすればいい」と成果払いで了解するしかなかったのです。
マジ嬉し泣きです、アンリエッタ。
というか、国の力でも無理って、どんだけ評判悪いんですか? エレねえ。
シュバリエ称号は拒絶しましたが、名誉騎士称号は一時的に受けざる得なかったのです。
なにしろ、学生騎士団を率いての「外交」なのですから。
で、その話をした途端、ケットシー学生騎士団、通称「猫の騎士団」は大いに盛り上がりました。
何しろ「王名」で「外交」を「騎士団」として受けられたのだから。
盛大に盛り上がる騎士団全員を連れてゆくわけにはいかない。
せめて「黒」「白」「ブチ」「ミケ」のうちの一小隊だけなのです。
それを聞いても「騎士団」としての誉れであることに変わりないと胸を張る団員。
小隊「ミケ」隊長である「デブ猫」は、肩をすくめて笑う。
「まぁ、うちの隊は後方支援主軸だからね。水のトライアングルを二名ほど引き抜いて行ってもらうだけだろ?」
「さすがは「野火」。よい着眼点なのです。」
とりあえず、誉めれば伸びる子マリコヌル。
「団長。で、どこをつれてく?」
「礼儀と見た目優先で「黒」なのです。」
「わかったよ、団長。われら「青銅小隊」は、団長と祖国の名誉のために杖を捧げよう」
ギーシュが杖を掲げると、周囲から拍手が巻き起こるのです。
むー、自分達の小隊の名乗りは任せたのですが、「青銅小隊」はどうかと思うのですよ。
すでにギーシュはトライアングルに達して、様々な練金が出来ようになったのです。
さらに「物理」知識で、自然界に存在しない物質もぼくと一緒に作り出せるようになった問いのに、未だ「青銅」はどうかと思うのです。
せめて「合金」のギーシュ。
いえいえ「超合金」のギーシュと「超合金」小隊。
・・・無駄に強そうなのです。
でも男のロマンにあふれる名前なのです。
この「外交」で広めてやるのです。
ふふふふふ。
外交使節団、というのは前向きの話。
後ろ向きの話は、この外交使節を快く思わない連中のあぶり出し。
というか、そういう手勢が王宮で踊るのを観察して検挙するのが目的なのだけど、フレデリカにはすべてお見通しだったらしく、竜籠はいらない、護衛に騎士団はいらない、軍はトリスタニア常駐にした上で一部隊を伏せ札にしろとか細かな作戦案が送られてきた。
では、フレデリカが危険かというとさにあらず。
かの「烈風」と渡り合った「猫の騎士団」が共にあるのだ。
街道では目を引くし、町中でも同じ。
町娘、村娘の視線が周囲にあって、日のあるうちに襲撃など不可能に近い。
ならば、国境や山中で狙うほか無し、とばかりに万に及ぶ傭兵が集められようとしたらしいのですが、集まったのは千。
トリスタニアのごろつきや冒険者、そして傭兵は正しい噂を知っていたので、メイジ殺しであろうとも「猫の騎士団」と敵対することなどしません。
集まったのは他国の傭兵や犯罪者、それも喰い詰め者や本当に恐ろしい者を知らないバカだけだったのです。
まぁ、報酬だけなら腰が軽くなるところですが、詳しく聞いて普通の判断力があれば避けますよね?
で、フレデリカ達が旅立った後、二晩ほどたってからガリア国境付近の山が一つ消えたとか、村に立てこもっていたという山賊組織が全員両手両足が折られた状態で発見されたとか、猫耳騎士団が山賊被害にあった村へ身銭を切って施しをしているとか、国境を越えても同じ行為を繰り返しているとか・・・・。
つまり・・・・・
「山賊どもを根絶やしにして、その資金を周囲にばらまいて人気取りをしている、と。」
「アンリエッタ様、そのとおりでございます。」
王座で私は倒れるかと思った。
確かに、先日、ミスタバサの家に里帰り同行した際も同じような行為をしていたと聞いたが、その時はもう少しささやかだったと記憶している。
「推測になりますが・・・・」
枢機卿の推測は納得の出来るものでした。
つまり、
「新開発の魔法の実験台にしている?」
「さようにございます」
まぁ、山一つなくなるような魔法の実験など、国内の中心地でやってもらっては困るし。
「どうなさいますか?」
「とりあえず、放置ね。」
「は?」
「評判はあがるし、治安もよくなる。そして国外の山賊狩り経験値と民意をゲット。何一つ問題ないわ」
「ガリアからの批判は・・・」
「ないない。あそこの無能王もベルもフレデリカのファンだし」
「ほぉ、初めてお聞きしましたな。ガリア王がフレデリカ殿のファンだとは」
「フレデリカの書いた「カインとアベル物語」という初源の王たちの物語を読んで以来のファンだそうよ。」
おお、と家臣たちが声を上げる。
この物語は年輩の家臣に人気がある。
私には今一わからないけど、年を取れば面白く感じるのかもしれないと思い、書籍棚に入れてある。
一冊これを入れておくだけで、私の部屋を訪れた年輩者の態度が変わるのが面白いとも考えてはいるけど。
「フレデリカたちは、予定より二日ほど遅れてガリアに到着すると伝えてください」
「「「「「御意」」」」」
うん、この「御意」っていいわ~。
「三ヶ国英雄物語」の中で、家臣たちが言っている返答をさせてみたら、家臣たちも読んでいたらしく「うれしそうに」つきあってくれた。
女官にも「御意にございます」とか言わせようかしら?
無能王がどこで転んだかが明かされたのです。
元々は聖書の農耕民族と狩猟民族の衝突を物語化したものだったと思いますが、フレデリカ版はあからさまにガリアのお家騒動を描いています。
そりゃ、正気にかえりますねw
※今回の元ネタ
「期限の決まっていない借金なんか後回しよ!」 ・・・ 異世界の聖騎士物語
カインとアベル物語 ・・・ 聖書
三ヶ国英雄物語 ・・・ 三国志
(3,269文字)