第二十話 「死亡フラグ」が生まれて
おどろいた、というか、信じられない思いだ。
四大魔法をスクエアレベルで使えるという噂は聞いていたけど、さらに別のアプローチをしていたとは信じられなかった。
そう、我々の世界にあって我々が関わることのない魔法、「エルフの魔法」。
正直に言えば、はじめは恐怖したが、それを扱うことができる人間が貴族であるということを考えると、心強いばかりであるという認識に変わった。
教会に知られれば只ではすまないだろうけど、知られれば、というだけにすぎない。
逆に「フレデリカならアリかも」とかいう評価になる可能性も少なくない。
「もちろん、今日のことは秘密なのですよ?」
「そりゃ、こんなこと知られたら、国や教会が黙っていないだろ?」
「ちがうのですよ、アラン。」
「どうちがうんだい?」
「御師匠様に対抗手段を採られないために、秘密にしなければならないのです。」
「ああ、お母様なら、エルフの魔法ぐらい打ち勝つし、逆に「やりこめた」って話も聞いたことがあったわ」
「カウンターなんて反則を、どうやって破ったのか疑問なのです。」
あー、国よりも教会よりも怖い「烈風」。
本当に怖いみたいだな。
「ああ、そういえば・・・・」
今思いついたかのようにフレデリカは微笑む。
「・・・かの御師匠様が、僕たちの騎士団を視察にくるそうです。」
・・・死んだ、神は死んだ、そして絶望した!!
あー、フレデリカにつきあうと、疾風怒濤というか、毎日が戦争だっていうか、恐ろしいまでにレベルがあがるわ。
アラン、レイナールは共にトライアングルまで後一歩というところにきてるし、ギーシュはトライアングルに到達した。
キュルケ、タバサはスクエアまであと一歩まできている。
私は、まぁ、「狙撃」がヤバくなった。
精度が上がったのと爆破の範囲を限定することが。
いまなら、あると仮定した相手の心臓だけを爆破できるし、髪の毛一本単位で爆破できる。
昨日、メイジ崩れの山賊をとらえたときに、毛根の一本一本を「狙撃」していったら、十本目で泣きを入れてきて、二十本目で「殺してください」と土下座を始めた。
たかが髪の毛で、と鼻で笑ったけど、フレデリカの一言で私がどれだけ残酷なことをしていたかを知った。
「・・・ルイズ、胸を0.1サントス毎に小さくなる魔法をかけられたらどう思うです?」
絶望したわ、自分の残酷さと非情さと非常識さに。
とはいえ、男相手に十二分な拷問だと解ったので、これからも拷問用に使い続けることを宣言すると、ケトッシー組が微かに震えて一歩離れた。
なによ、あんた等にするとは言ってないでしょ?
「ルイズ、胴回りを魔法で自由自在に増やせるから、拷問に使うって宣言したようなものなのです」
くぅ・・・・、さすがに目の前が真っ暗になったわ。
その説明でキュルケやモンモランシーまで一歩離れた。
「い、いいのよ、私の魔法は、悪を懲らしめる刑罰の鞭なんだから!」
「・・・無知からくる発言なのです」
「フレデリカ、あなたまで私を避けるの?」
「避けませんが、怖いと思ったのは事実です。」
「フレデリカも男ね~」
「何度も言いますが、僕は男なのですよ?」
ま、男だものね、フレデリカは。
でも、それが一番の絶望なのよ、たぶん。
だって、フレデリカが大浴場を使うとき、上級生はみんな避けるもの。
これって、キュルケなんかが入浴するときに上級生が避けるのと同じ理由だと思うし。
というか、ねえ様たちからこっそりと「それ」の話を聞いている。
だからこそ、「あの」神扱いなんだろう。
そんなこんなで、学院まで戻った私たちは、帰りの分の収入を山分けにして、訳ありっぽいものは国庫に進呈、そしてフレデリカ曰く「ヤバイ」ものは学院の宝物庫に放り込んだ。
というか、あのきれいな指輪は欲しかったかも。
あははははは、やばいやばいやばい。
炎の指輪なのですよ、炎の指輪!
なんでコルベール先生が持っていないのか不明ですが、こうやって回収できたことだけは良しとするです。
そういえば、最後に襲ってきた傭兵、人が焼ける臭いが大好きとか言っていたので、ジリジリと自分の皮膚の表面だけ焼いてあげたら、ほんきで狂喜乱舞して、もっともっと、と要求してくるのが怖かったです。
とりあえず王宮に引き渡したのですが、牢屋の向こうで「フレデリカ様もっと!」と叫んでいるそうなのです。
・・・ルイズのことはいえないのですね。
それはさておき、炎の指輪。
これはさすがに王宮にも宝物庫にもまずいので、それっぽいものにすり替えてぼくが保管することにしたのです。
一応、属性強化のアーティファクト効果もあるので、それなりに便利でしょうし。
で、問題は・・・虚無。
ルイズにこの指輪プラス虚無を教えるかどうか、なのです。
少なくとも進級するときには「人間」を召還してばれてしまうのですが、それまでは「お気楽」な生活をさせてあげたいと思うのは考え過ぎなのですかねぇ?
そういえば・・・、ぼくが使い魔を召還したら「なに」がくるでしょうか?
さすがに思い当たる幻獣はいませんし・・・。
じつは「アカサカ」あたりが召還に応じてくれると面白いのかもしれないです。
~リカちゃん、君を、助けにきた!!~
とか言われたら、男ですが惚れるかもしれないです。
まぁ、バカな妄想はそこまでにして、ぼくもお仕事なのですよ。
我が心の友にして魂の師匠、フレデリカによる秘密講義が始まって五日が経った。
僕やアラン、そしてレイナールが実証の先達として技を見せて、そして騎士団全体でレベルアップを図るうちに、全員がライン以上になっていた。
そんあると教師も気になってくるらしいが、さすがに内容が内容なので参加は断っていたのだけれども、唯一団長にコルベール先生だけが参加を許された。
なぜか?
それは既にコルベール先生の研究が「異端」で、今更情報を規制しても遅いから、だそうだ。
聖なる魔法の力を「道具」に貶める、というだけで異端審問官は舌なめずりで踊りかかってくると言うが、土の魔法による河川整備や道の整備はどうなるのか、と首を傾げたくなる。
まぁ、奴らは奴らの常識があって、それを飛び越えると飛んでくる、というのが真実だろう。
だいたい、あいつ等はおかしいのだ。
自分たちに正義があるとか、自分たちに正しさがあるとか言うのはかまわないけど、その主張が通れば自分たちが「偉い」と本気で思っているのだ。
主義主張が通ることと正義や地位が直結するなんてあり得ないことなのに。
その点で言えばコルベール先生は希有のメイジで、研究と倫理と実践がかみ合っている人だった。
一緒に火や土に関する魔法を研究実践しているうちに、火に関わるスペルが追加され、団員の多くがレベルアップしていった。
中でも「デブ猫」の魔法は邪悪に進化した。
風+火だったけど、火の威力がいまいちで、消えないけれど燃え上がらない程度の「いまいち」だったんだが、フレデリカが余計なことを言った。
「決して消えない種火が、風で運ばれて周囲を覆う。乾燥してたら信じられないほどの火事が起こるのです。まるで「野火」のように。」
火の力の低さに嘆いていた「デブ猫」だったけど、その利用法を聞いて胸を張る。「野火」のマルコリヌ、と。
まぁ、メイジが直接戦闘にでなければならない時点で戦争は半分負けているというフレデリカの話を聞けば、逆に放火や焼き討ちで初戦の勢いをつけるのはメイジ向きかもしれないと思う。
もちろん、初戦失敗は責任多いだろうけど。
そういえば、粉塵爆発の種火にもなるし、練金+水のメイジと組めば、結構なことになるかもしれない。
ふむ? アランとレイナールに相談だな。
捻った方がいいのではないかということで、物理的にひねってみましたw
おもに、運命とか生命とか・・・・
※今回の元ネタ
更新なし
4/4 色々修正なのです