第七話 伝説の始まりが生まれて
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えー、見た目「男の娘」状態のフレデリカですが、身体の一部が「神」です。
そのへんは、幼い頃から年上のお姉さんにもてあそばれた経験によるものです。
第七話 伝説の始まりが生まれて
朝食の席が男子と女子にくっきり別れましたのです。
僕は一応男なので、男子側で食事をしていたら、新入生の男子に絡まれました。
麗しいとか可憐だとか薔薇をくわえながらいうので、冷たくあしらうと、なぜか不満そうな顔になります。
「あのですね、君はなんで男の僕を誘っているんですか?」
「え? 男?」
「そうなのですよ。男なのです。」
「で、でも、君、男子寮にいないだろ?」
「男と知っても僕を襲おうとする馬鹿がいるだろうから、という学院長の配慮なのです」
「・・・たしかに、君が男と聞いても確かめるまで信じない、というか無視するかも・・・」
「そ、そうだな、これだけ可愛ければ別に男でも・・・。」
「こんなに可愛い子が、男なわけがない!!」
「そうだ、そうだ!!」
「男ぶってんじゃねーぞ!!」
「どうせ女のみたいな小っさいだろうなぁ!!」
「「げははははははは」」
新入生の話に被さってきた上級生は、僕に覆い被さるように肩を組んできました。
「どうだよ、おれに穴を貸せば、守ってやるぜ?」
「穴がしまってるあいだだけだけどなぁ!」
「「「「「ぎゃはははははは」」」」」
実に下品な手で、僕のズボンをおろしにかかります。
「そら、どうした、怖いのか? 縮みあがったのをみんなに見せて・・・・Oh,my、GOD・・・。」
おろされたズボンの中を見て、上級生が二歩三歩と下がってひざまつきました。
「許してくだせぇ、許してくだせぇ、神がそこにいたとはしらなかったのでございます。」
べったり五体倒地する上級生とその仲間たち。
そういえば、一緒にお風呂に入ったエレオノールねえ様たちに色々とされていたせいか、見た目がスゴいことになってるんですよね「これ」。
「もうズボンを上げてもいいのですか?」
「あたりまえでさぁ。あっし如きが恐れ多くて触れないのでごぜぇます」
まぁ、降り懸かる火の粉がなくなったと思っていたのですが、スゴい早さで広がった噂の影響で、かげながら男子生徒から手を合わせて祈られることになったのでした。
我が友、フレデリカ。
彼は魔法に優れ、知勇に優れた真なる貴族である。
彼の執筆した物語は男足る者が歩くべき道を指し示すものであり、貴族たるものの在り方を示すモノが多い。
中でも、かの著作「三従姉」は見事な内容だ。
かの王国につかえし三人の娘たち、「マティー」「ヒルダ」「グリエダ」が織りなす宮廷内の騒動を知恵と勇気と愛と友情で乗り越えるという物語であった。
これは一見すると女性中心の子女向けの作品に思えるが、実はこの三人は「マンティコア」「ヒポグリフ」「グリフォン」の三親衛隊を表したもので、宮廷風刺と正常な政治運営への渇望が絞り込まれた「政治的に正しい国家運営」の物語なのだ。
これを見た父上は、実に苦々しくほほえんで見せたほどであった。
母上はいまいち理解なさっていないようであったものの、本が嫌いな兄上たちも興味津々に読み下し、私と同じ感想を持ったようだ。
つまり、我が友の書物は、読んだ人間によって理解できる内容が変わるというわけだろう。
まるで読んだ人間を映す鏡のようだとも言える。
とはいえ、これはなかろう?
「なにが無いのですか? ギーシュ」
「いや、だから、ほら・・・。」
年頃の娘さんたちが男と隔絶された環境で三年間も生活するなんて、信じられないもったいなさ。
「読む前はみんなそう言うのですよ。」
にっこり微笑む友。
そう誘われてアランと一緒に読み進めたところ、まずいことになった。
なんというか、この世界観を認めてしまうと気持ちいいのだ。
今まで男の誉れとか武勇とかを競っていた自分が恥ずかしいとすら思えるのだから怖い。
どうにかしないといけないとガタガタ震えていた私たちに友から新しい書物が与えられた。
「始祖様がみている~ボーイズエディション」
男子だけが集められた学院で起きる、男の友情の物語。
それは短いながらも感動的で、共感できる、そんな物語だった。
さらに、主役の少年が、「始祖みて」の主人公の少女と双子という設定が生きていて、どこかで物語がつながっているという作りも嬉しいものだった。
双子というものは、どこか忌避されるものだったのに、初めてうらやましいとか思ってしまった。
「友よ、この物語は続くのかい?」
「君たちがそう望み、心に描く限り、つづくのですよ。」
最近、男子は男子で集まり、女子は女子で集まっているという。
もちろん、男女で仲が悪いというわけではなく、男子は女子同士仲良くしている姿をあこがれを持って見つめ、女子は男子同士で仲良くしている姿を憧憬をもって見つめているという。
まぁ、在学中に出産なんていう事態がないだけでも助かるのだが、これが実に興味深い影響を与え散ることがわかった。
毎年、数人の自主退学者がでる新入生が、今年は一人も自主退学者がでていないのだ。
寄付金的にも助かるのだが、実際は教育者として今まで気づかなかった事態に気づかされた。
つまり、男性に対する嫌悪や恐怖を持っている子女が退学者の一部を占めていたという事実と、色狂いの上級生による暴行がさらに一部を占めていたという事実だ。
今年は、ある新入生が「神」とあがめられるほどの武威を示した影響で女子に対する胡乱な行動はなく、さらに校内で蔓延している「始祖みて」なる書物の影響で、実に上品な生活になったため、男性に嫌悪感を持つ女子も馴染めるようになったようだった。
もちろん、新入生にいいようにされた上級生の一部が黙っているはずもなく、新入生「フレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデ」に対する決闘が行われた。
結果は、無惨であった。
少しでも噂を信じるならば、あの「烈風」の直弟子であるフレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデに喧嘩を売るなんて命知らずなことをするはずもないだろう。
加えて言うならば、彼はその日、自分にとってもっとも力の劣る系統で勝負していたはずであった。
しかし、そこに生まれたのは焦土。
彼が繰り出した「火の矢」は、数十にも別れて決闘に現れた本人と、風の魔法で姿を隠した上級生たちを薙払った。
さらには「炎の玉」と称された改良魔法は、未だ杖をおろさない上級生たちの中心で弾けて吹き飛ばす。
すでにボロボロとなった彼らは、杖を置き、膝を折った。
信じられないほどの力の差を感じて、一人がどうやったらそこまで強くなったのかを聞いた。
それが一番してはいけないことだったことに気づいたのは、フレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデが幼い頃から繰り返された特訓という名の死亡遊技を連日受けていた話を聞き始めてからだろう。
臨場感ある話しぶりに引き込まれつつも、その凄惨な特訓の内容に背筋を凍らせ、そして「烈風」恐ろしさに肝を冷やさせられた。
誰かが言う、「よく死ななかったな」。
それに対してフレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデは笑顔で言う。
「水の系統に目覚めなかったら、三桁程度は死んでましたのですよ」
その虚ろな笑顔をみて、絶対に勝てないと彼らは悟ったらしい。
以降、上級生の一部では、彼のことを「凄惨なるフレデリカ」と呼ぶようになったらしい。
できれば私は「風」で彼らを圧倒してほしかったのだが。
風サイコー。
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風サイコーw
原作キャラの剥離やリカちゃま暴走にこれからもお付き合いいただけると幸いです
※今回の元ネタ
三従姉 ・・・ 三銃士w
始祖様がみている~ボーイズエディション ・・・ お釈迦様がみてる
原作名:ゼロの使い魔
(3,197文字)