第六話 学院新世界が生まれて
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当作の主人公「フレデリカ」の中の人は、勿論現代のオタですが、外枠に影響されて記憶程度しか持ち越していません。それがよかったのか悪かったのか?
第六話 学院新世界が生まれて
ルイズと共に学院に到着すると、どうやら寮に入るべく集まった人たちで一杯になっていたのです。
さすがに全員一緒にと言うわけにはいかないので、貴族の位階の高い順だとか喚いている頭の悪い新入生を後目に、僕とルイズはその場を離れました。
本当にその意見が通ると、貴族としての地位の自己紹介大会が始まり、じつに面倒くさいことになるからなのです。
ルイズは「ラ・ヴァルエール」ですから、たぶん無茶苦茶注目されて彼女自身がイヤな気分を味合わされるでしょうし、ボクはボクであまり地位が高くないので、ルイズの腰巾着扱いされて、ルイズが気分を悪くするのでしょうし。
だったら、夕食前までに部屋に入れれば問題ない、と中庭をプラプラしていたら、一人の少女に捕まったのです。
「・・・貴方がフレデリカ=ベルンカステル=ド=リステナーデ?」
青髪の少女の名前は「タバサ」。
家名も何も名乗りませんが、あの国で青髪の意味を知らないわけではない僕は、一応スルーしておきました。
だって、無表情っぽい彼女が、目をきらきらさせてるのですから。
「・・・貴方の新作を毎回楽しみにしてる。寝食を削って読んでる」
とてもうれしかったので握手をすると、逆にすごい力で握り返されてしまいましたのです。
とりあえず無視すると後が怖いのでルイズも紹介すると、タバサは目を再びきらきらさせた。
「貴女が、「はじめの物語の人」」
物語を作り始めたきっかけが、ルイズと共に童話を書いたことだと知っているらしく、尊敬の視線をタバサはルイズに送った。
「あー、その呼ばれ方は好きじゃないの。だからルイズって呼んでくださる? ミスタバサ」
「・・・私もタバサでいい」
なんだか女友達ができたルイズなのでした。
そろそろ人混みも消えたかなっと、先ほどの場所に戻ると、ほとんどの人が消えていたのです。
これで寮の部屋を探せる、と思ってみたら、壁に部屋と名前が細かく書かれているのです。
どうやらこれを見せて自分で行かせたみたいです。
結構貴族の扱いが乱暴なのですね。
割と好みなのですが。
で、その表をみて、奇妙なことに気づいたのです。
ルイズの部屋はすぐに見つかり、タバサの部屋もその近くでした。
で、なぜかボクの部屋がタバサとルイズの部屋に挟まれているのです。
・・・とりあえず、僕は男の子ですよ?
そうその場でつぶやいてみましたが、何の意味もないので、とりあえず学校の教師に話を聞いてみると・・・。
「おお、貴方が「フレデリカ」ですか!! いやー、貴方の作品はすべて読ませていただいておりますぞ!!風サイコー!!」
なんというか突き抜けた男性です。
「失礼ですが、お名前を聞いてもいいのですか?」
「オオ、これは失礼。私は学院で「風」を教えているギトーともうします、風サイコー!」
「・・・お姉さま好きの?」
「・・・ふふふ、物語の中だけの話ですよ。」
脂汗をかいて視線を逸らしても無駄なのです。
僕のプロファイルは間違いないのです。
ギトー先生の案内で学院長部屋に通された僕、ルイズ、そして何故かついてきたタバサは、老人の前に立ったのです。
肩にネズミを乗せた老人は、オスマン学院長。
とりあえず・・・・
「何で僕が女子寮の名簿に載っているか答えるのです」
「では逆にお聞きしましょう。男子寮で男子に襲われるのと女子寮で女子に襲われるのと、どちらがお好みですかな?」
「・・・うぐ・・・。」
襲われること前提なのですかぁ!?
「フレデリカ、諦めて。貴方が男子に襲われても大丈夫なのは知ってるけど、そんな生臭い青春を送ってもらうわけにはいかないわ」
「・・・フレデリカ、私は歓迎」
「お嬢様方もこういっておるし、見た目も違和感がない。せめてもう少し雄々しくなってから抗議しに来てくだされ」
何とも納得がいかない話なのです。
仕方なしに女子寮内の僕の部屋に行ってみると、実に広々としたものでした。
が、その壁全体に本が押し込まれているのは、まぁ、仕様です。
その部屋を見た瞬間、タバサの目は鷹の目となり、そしてトロケたのです。
「・・・ここは桃源郷?」
「とりあえず、僕の部屋なのです」
「・・・フレデリカ、わたしもここに住む」
「一応、僕は男なので良くないと思うのですよ」
「ここに住めるならどうなってもかまわない」
実に情熱的な言葉ですが、視線が本から離れないのです。
「無駄よ、フレデリカ。うちにもフレデリカの実家にも、そういう観光客が一杯来るでしょ?」
「ええ、実家にかえって実感しました」
いるんですよ、物語ファンで、実家やラ・ヴァリエールの屋敷のそばに家を建ててしまう人たちが。
そんなことをしても新作を読めるわけではないのですが、そういう空気を共有したいとかなんだとか。
でもタバサの場合は、読み切れないほどの本を前にして我を失っているだけかと。
「ま、しばらくすればタバサだって慣れるわよ。」
「慣れるのが僕らの方にならないことを祈るのですよ」
苦笑いの僕らの背後でノックの音がしました。
「はーい、なのですよ」
扉を開くとそこには赤毛の女性。
原作ではスゴく露出が多いはずですが、目の前にいるのは慎ましやかな程度のファッションの人です。
「・・・お久しぶりね、フレデリカ」
「キュルケ、お久しぶりなのです」
きゅっと握手すると、背後にいるルイズにも小さく手を振るキュルケ。
「わざわざトリステインに留学しなくても、いいじゃない、ツェルプストー」
「ばかねぇ、「物語」のフレデリカが入学するのよ? タイミング合わせるに決まってるじゃない」
この手の英語表現は、僕の物語で広まっているせいか、貴族子女に完全定着してるのです。
逆にこういう「リカ語」を自在に扱えることがステータスだといわれているのがくすぐったいのですが。
「で、また、サインをネダリに?」
「・・・ほら、学院でも配って歩くのよ」
「とりあえず、女子寮に入った女子はみんな持ってるわよ? たぶん」
「・・・そうかしら?」
「あなた、何冊配り歩いたと思ってるのよ。」
「あはははは。」
苦笑いのキュルケに、ルイズは一冊の本を渡す。
「一応、試作装丁版だけど読んでみなさいよ。いつまでも「ロミオとジュリエット」じゃ時代に乗り遅れるわよ?」
「えぇ~、最高じゃない、これ」
「あのねぇ、貴族社会の醜聞をネタにした作品でトキメいているなんて、お年を召した女性だけで十分なのよ。いまは、これ。」
ぱらぱらと流し読んだキュルケは、げんなりした顔をしました。
ルイズと全く同じ反応なのです。
「ねぇ、ルイズ。いくら男にモテないからって、女に走るのはどうかと思うんだけど」
「・・・文句を言わず、始めから終わりまで読む! 途中で読む気が無くなったっていうなら、私とフレデリカで「ロミオとジュリエット」演じてあげるから!」
「ふふふ、それは楽しみかもしれないわ」
久しぶりに泣いたわ、泣かされた。
何なのこの切なさと優しさとやるせなさは!
ああ、この、モジモジとして気持ち悪いまでに内向的な展開のくせに、燃え上がるような情熱とそれに共感してしまう展開は!
くそぉ、確かにロミオとジュリエットだけを語っているんじゃ時代遅れ必至だわ、認める、認めざる得ないわ。
この「始祖さまがみてる」は、おもしろすぎる。
夕食前に一気に読み切ってしまった私は、続編がないかを聞きに行ったところで、装丁前のものを三冊分渡された。
よっぴきで読み切った私は、泣いたわ。
泣きぬれたわ。
今までこんなにおもしろいものを知らなかった自分に絶望したわ。
そんなことを朝食の席で語った私に、ルイズは「さもありなん」と苦笑い。
「私もね、初めて「始祖みて」見たとき、女子だけの学校?誰得?とか考えたもの」
「そうよね、絶対始めそう思うわよね!?」
「でも、スワティーカやセイにとっては必要な環境だしねぇ。」
「やっぱり、そういう娘は学院に来ないのかしら?」
「一応入学はするけど、家の都合とかで途中退学するみたいよ。」
「そうよね、うん、わかるわ。」
そういいながら、何かとガヤガヤうるさい男共を見て、視線を冷たくした。
「あれがフレデリカと同じ男だと思うと、信じられないわ」
私の一言にルイズは違う違うと首を振る。
「フレデリカって、性別「男」じゃなくて性別「フレデリカ」なのよ。私はそう確信してるわ」
「さすがルイズ。」
ルイズの隣の青髪少女タバサは、口一杯のハシバミを飲み込んで、ぐっと親指を立ててみせる。
あ、これは「グットサイン」。
「グッジョブ、ってやつね」
「「ふふふ」」
そんな乙女の会話をしていると、話の通じる女子が集まってくる。
作品の話や新作の展開などの話で盛り上がり、まるで「始祖みて」の中の女学院のような雰囲気に思えた。
「ね、ルイズ、あれ、絶対にヒットするわ。」
「ふふふ、私もそう思うわ。」
「・・・(こくこく)」
なんだろう、私とルイズとタバサ。
まるで「始祖みて」の三人みたいね。
作中に出てくる「始祖様がみてる」は、ロザリオでスールな「あれ」です。
あれの汚染力は皆さんご存知のとおりかと・・・W
※今回の元ネタ
フレデリカって、性別「男」じゃなくて性別「フレデリカ」なのよ。 ・・・ バカテス
原作名:ゼロの使い魔
(3,751文字)