突然の方針転換だった。星野監督はこの日、8日から始まる秋季キャンプに備えて、岡山・倉敷市に入った。チーム宿舎のラウンジでコーヒーを口にしながら、田中を15日からのアジアシリーズに帯同させることを明かした。
「向こうでも田中は知られている。当然、来ると思っている。だから台湾には連れていく」
楽天は3日に、球団創設9年目で初の日本一を達成した。前日2日の日本シリーズ第6戦に完投した田中が、第7戦では九回を締めた。長いシーズンを投げ抜いたエースに対し、星野監督は翌4日、一度はアジアシリーズの参加免除を決めた。
だが台湾でも田中の人気は高い。また元中日の郭源治氏が台湾プロ野球CPBLの首席顧問を務めている“縁”もあり、星野監督は一転、田中を台湾に同行させることにした。則本、美馬を含めた3人は、試合には登板しないものの、練習には参加し、ベンチにも入る予定だという。
一方、この日までに、立花球団社長も台湾入りすることになった。当初は同行しない予定だったが、開会式などのセレモニーへの参加を打診されたためだという。
これにより、台湾で田中と立花氏が接触できる舞台が整った。ポスティングシステムによるメジャー挑戦について、現地で会談する可能性が高まったのだ。
立花氏は、新たなポスティングのルールが決まりしだい、三木谷オーナーらの意向を確認した上で、田中と話し合うことを明言している。当初はすでに新ルールが決まっているはずだったが、日本プロ野球選手会の反対で先送りされ、立花氏と田中との話し合いも“凍結”されてしまった。