Two persons' hope ~15年前の真実~(牙狼×仮面ライダーウィザード) (カムバック)
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第2話 鋼牙

SIDE鋼牙

俺とカオルは予約していた骨董品屋である「面影堂」に連れてこられる。
扉が開くと、前にも会ったことがある顔が出迎えてくれた。

「いらっ……しゃい?……そういうことね……今、お茶出しますので」

この店主であろう中年の男性は、一瞬戸惑ったように見えたが、どうやら俺達に何が起こったのか、理解したらしい。
俺とカオルはソファーに座らされると、

「僕は奈良瞬平、こちらが刑事の凛子さん、あっちがコヨミさん、で奥でお茶を準備してるのが店主の輪島さんです」

「そんなことはどうでもいい……それより単刀直入に聞くが、あの化け物はなんだ? なぜ、カオルを襲った?」

この店にいる連中の名前など、どうでもいいいことで、俺にとってはあの化け物の正体や目的が知りたい。

「落ち着いて聞いてくださいね?」

カオルを襲ったのはゲートだからで、敵はファントム。
人間を絶望させることを目的としており、さっきの晴人という男はファントムから人の希望を守る魔法使い……か……。
到底信じられる話ではないが、あの光景を目撃してしまった以上、信じざる得ない。
ことの流れを大分、理解した時、「面影堂」の扉が開く……晴人が帰って来たのだ。

「晴人くん、ファントムは!?」

「逃げられた。もうちょっとだったんだけどね」

悔しそうに語る晴人の顔に俺は強い意志を感じた。
この男が俺はどんな過去があるのか知らないが、本当に希望を守りたい……そう感じた。
言葉で表現するのは難しいが、一見、おちゃらけているように見えるが、なぜか信用できるというか、不思議な安心感を持っている。

「あのぉ……ところで絵画の方は?……」

「そうでした!……ただいま持ってきますので」

輪島は慌てて、奥にある部屋から、絵画を取り出し、カオルに手渡す。
その絵画をカオルはどこか懐かしげに見つめる。

「これ、父が書いた作品の一つなんです……」

「金色の狼?……」

「ガロって言います……私の最後の希望なんです」

「ガロ?」

「そう……ガロは旧魔界語で希望という意味だ」

「ふ~ん……ところで、カオルさんを家まで送って行きたいんだけど、借りてもいいかな?」

「ああ……カオルを頼む」

「えっ!?……鋼牙?」

カオルは俺が守ってくれると思っていたのだろう……唖然とした表情を浮かべている。

「カオル、先に俺は帰るからゆっくりしていけ」

「ゲートじゃないから大丈夫だとは思うけど、一応ここにいた方がいいんじゃない?」

「晴人の言う通りよ……ここにいた方が安全だし」

「俺のことは心配いらない。‘ああいう連中‘の扱いには慣れているからな……カオルを頼んだ」

俺はカオルを置き、「面影堂」の外に出るとザルバが喋りかける。

「おいおい鋼牙、魔法使いだかなんだか知らないが、信用していいのか?」

「敵はあいつらの専門分野だ……安心しろ、もしカオルになにかあれば、俺が助ける」

俺達魔戒騎士がホラーを狩るプロなら、魔法使いはファントムを狩るプロなのだろう。
ファントムが俺にとっては未知の敵である以上、専門家である晴人達に任せるのが得策。
それにもし、俺がでしゃばれば、あいつらのプライドを傷つけてしまう。
それに俺は晴人という男の真っ直ぐな目を信じた……あいつならきっと守ってくれるだろうと思う
ただ、指を咥えて見ているわけではない……カオルになにかあった時の為に気づかれないようにカオル達を尾行することにした。
SIDE晴人

鋼牙が帰って数時間後、俺、凜子ちゃん、瞬平の三人でカオルさんを警護しながら、カオルさんの住む家を目指す。
常人ならファントムと言う異形の化け物に狙われていると思っただけで、少なからず、怖がるのだが、カオルさんにはそういった様子がない。 疑問に感じたので俺は素直に質問してみる。

「カオルさん、怖くないの?」

「鋼牙が任せた人達だから、私は晴人さん達を信じます」

「そっか……鋼牙って人を凄く信頼してるんだね」

その後、数十分、街中を歩いた後、薄暗い森に入っていくのだが、東京都内にこんなところがあったのか……。

その薄暗い森で二人の男が行く手を阻む……ファントムだ。

「見つけたよ」

「見つけたよ」

帰宅するのを狙うのは予想通りだ……一気に片づける!。

晴人「凜子ちゃん、瞬平! カオルさんを頼んだ」

(シャバドゥビタッチヘンシーン!)
(シャバドゥビタッチヘンシーン!)

「変身!!!」

(フレイム、プリーズ)
(ヒー! ヒー! ヒーヒーヒー!)

「さあ、ショータイムだ!」

「ちょぉぉぉぉぉっと待った! ファントム発見!」

どこから、ともなく現れたのはビーストに変身した仁藤。

「いいとこに来たな。丁度、二匹いるから手伝えよ」

「言われなくてもやるっつーの! さぁ、ランチタイムだ!」

俺はウィザーソードガンを剣型のソードモードに切り替えクーシー兄に向かっていく。

今日、クーシーと対決して分かった事、クーシーは基本、二匹で滑るようなに移動するスピードを活かしたコンビネーション技でこそ真価を発揮するファントムだということ……もう一匹は仁藤が相手をしている為、強さは半減……単体相手なら苦戦するような相手じゃない。

剣を巧みに操りクーシー逆にを翻弄する……そして俺が使う武術、エクストリーム・マーシャル・アーツは空手やカポエラ等を始めとした様々な武術が融合した踊るように戦う武術。

クーシーの攻撃を避け、いなし、それでいて隙あらば切り込んでいくその姿は正しく、蝶のように舞い蜂のように刺すが如く。クーシーは体から火花を散らしながら後退を余儀なくされていく……弱い……正直、今まで戦ってきたファントムの中でも屈指の弱さではないだろうか……。

俺は、ダメ押しに出る。
左手の指輪を赤の丸い指輪から緑の逆三角形の指輪へと嵌め変え、シフトレバーを操作し、ハンドオーサーを左に傾け手を翳す。

(ハリケーン、プリーズ)

俺が手を頭上に向けると、そこに出現したのは緑の風を纏った魔方陣。

(フー、フー、フーフーフーフー!)

そこに立つのは風のエレメントを身に宿すウィザードの俊敏形態ハリケーンスタイル。
ハリケーンウィザードリングで変身するその姿は緑の逆三角形のマスクと体には緑の装飾。
手に持っていたウィザーソードガンを逆手に持ち変える。

クーシーは口から吹雪を放つが、俺はは風を纏い空を駆け、吹雪をもろともせずに、上空からクーシーを斬りつける。その後も、切っては離れ、切っては離れのヒット&アウェイ戦法で敵を翻弄する。


そして、どんな華麗なショーも終焉の時を迎える……今がその時だ!。

「フィナーレだ!」


(キャモナ、スラッシュ、シェイクハンズ!)
(キャモナ、スラッシュ、シェイクハンズ!)

「ハリケーン、スラッシュストライク!」

(フー、フー、フー!)
(フー、フー、フー!)

ウィザーソードガンの刀身がハリケーンの属性である風を纏う、ウィザードの必殺技、『スラッシュストライク』。
纏った風を刀に込め、振るうことで斬撃として放つち、それはクーシーに直撃し、クーシーは断末魔の悲鳴をあげながら、四散していく。

「ふぃ~」

「ごっつぁん!!……それにしても今回のファントムは手応えなかったな!」

ファントムを倒した、俺達は油断していた……一息ついたのが、命取り。

急に全身が締め付けられ、俺とビーストは宙吊りにされる。
こんな芸当ができるのはファントムの中でも屈指の実力を持っているメデューサしかいない。

「クーシー達は囮……貴方達を誘き出す為のね」

ミサの髪の毛は大蛇に変形し、完全に手足を拘束され、動く事が出来ず、手も足も出ないという言葉が当てはまる状況であった。

「これで貴方達は終わり……ゆっくりと絞め殺して、あ・げ・る」

締め付ける力にさらに拍車がかかる。

苦しい……意識がどんどん遠のいていく。

これでは勝ち目はない……なんとかしなければと焦る程、余計な体力を使い、苦しくなる悪循環に陥っていた。

……もうダメなのか……だが俺達の命運は尽きていなかった。

突如として、俺達の身体はミサの締め付けから解放された。

「助かった……サンキュー!」

俺達の窮地を救ったのは、鋼牙の剣だった。

鋼牙の剣がミサと俺達を繋ぐ大蛇を切り裂いたのだ。

そして、息があがりきった俺達に飄々と鋼牙は言い放つ。

「気にするな、カオルを守ってもらった礼だ。この女の相手は俺がする」

「おい! あんた、バカなこと考えんな! 相手はファントムなんだぞ!?」

「仁藤、待て! あの男なら、心配ない。ここはお手並み拝見といこう」

「はぁ!? 晴人! 正気か!? 魔法使いでもない普通の人間がファントムの相手なんてできるわけねぇーだろ!」

「とりあえず、落ち着け」

俺は今にも、飛び出しそうなビーストを身体を張って制止した。
ビーストの言い分は、最もだ。
魔法使いでもない、なんの魔翌力も持たない普通の人間ではファントムに掠り傷一つ負わせることはできないし、相手になるわけがない……ただし、その言い分は鋼牙が普通の一般人だったらの話だ。
初めて、見た時から、思っていたこと……何気なく立っているように見えるが、隙がない。
普通の人間だとは、思えなかった……あの鋭い目つきは、俺達と同じ、戦いに、修羅の道に身を置いている……もしくは置いていた者の目だ。

何より、俺は見て見たかった……「ああいう連中の扱いには慣れている」その言葉の意味を知りたかった。

「魔法使いでもない人間が相手をするだと?」

「人間の力を見縊ると痛い目に遇うぞ」

「随分と自信があるようだけど…人間如きに負けるわけないでしょ?」

「それはおもしろい。果たして、蛇が狼に勝てるかな」

「まぁいいわ……あなたに死の絶望を見せてあげる」

ミサは横髪を両手でサラッとかきあげると、頭部は口元が人間の女性と同じだが、眼にあたる部分がゴーグルのような形状で、蛇のような頭髪が生えてくる。。 最早、黒髪で美しい美少女の姿は邪悪で妖艶なファントム、メデューサに変わっている。
普通の人間なら、怪人態のメデューサの姿を見ただけで、絶望するか、腰を抜かすか、死への恐怖に打ちひしがれるだろう……普通の人間なら……。

「グール、遊んであげなさい」

鬼のような風貌をした灰色の人間大ファントムがメデューサによって数多く、召喚される。

魔戒騎士として戦ってきた鋼牙に死への恐怖や絶望といった負の感情は持ち合わせてはいなかったのだろう。
この状況でも含み笑いをし、一歩前に出る。

グールは量産型のファントムで俺達などは簡単に倒せるのだが、それでも彼らは槍を武器に持ち、普通の人間では太刀打ち出来ない強さを誇る……しかし冴島鋼牙の前には無力であった。
しかし、実力が違った……格が違った……その実力差はまるで獅子と蟻。

鋼牙の剣が唸りをあげ、瞬く間にグールの群れを崩壊させていく。
グールの槍を一度たりとも、その身にも剣にも受けず、まさしく流れるような剣捌きだ。

グール隊は鋼牙の剣技の前に成すすべなく、一匹残らず、壊滅し、あれだけの数のグールと戦闘したのにもかかわらず、鋼牙は息ひとつきらしていない。
ここからが勝負だと、鋼牙本人も分かっていたのだろう……今まで以上に目つきが険しくなる。

「晴人、よく見ておけ。金色の希望をな!」 

鋼牙が剣を頭上で振り上げ、円を描くと、太陽より、何倍も眩い光の円形が現れ、金色の鎧が次々と腕や足に装着されていく。
そして鋼牙の身体が全て、金色の鎧に包まれたとき、神々しくも鮮やかに輝く金色の狼の姿があった。
眼は緑にギラリと光り、腹を空かした獣が獲物と相対した時のような低く、攻撃的な唸り声を発する。
その姿は紛れもなく「面影堂」で鋼牙達に渡した絵画に書いてあった絵そのもの。
俺達はガロの鎧が放つ眩さに顔を背けた。

「貴様……ナニモノだ!?」

「教えてやろう……我が名はガロ! 黄金騎士だ!」

ガロが一歩、前に歩く度に吹き上げるように金色の炎がうねりをあげる。
その金色の炎に共鳴するかのごとく、鋼牙の手にしていた剣がもう一段大きくなる。


「黄金騎士だと!?……ファントムをナメるな!!」

ガロの鎧を無数の蛇が締め付ける……蛇の尾を模した長髪で相手を絡め取る、メデューサがよく使う戦法だが、ガロの鎧に巻き付いていたメデューサの髪がステーキを焼くかのようにジューという音がして、灰になり焼け落ちる。

「これでも喰らえ!!」

無数の蛇で覆われた球状の光弾をガロに向けて放つが、ガロは防御するわけでもなく、避けるわけでもなく、ただ、その光弾を浴びながら、ゆっくりとメデューサに向かって歩を進める。
それでも、メデューサは光弾を放ち続けるが、ガロの歩みを止められない。

「なっ!?……こんな、バカなことが!?……私の攻撃が通用しないだと!?」

さすがのメデューサも一歩後退する。

「この鎧を侮ってもらっては困るな……ガロの鎧はかつてこの鎧を纏い、戦った英霊達によって守られている! 貴様の攻撃など、ガロの鎧に傷一つつけることはできない!」

メデューサは得意の石化能力で近くにあった大型トラックを石化させ、ガロに放つが、その巨大なトラックをガロは右手の拳一つで粉々に粉々に粉砕してしまう。

ここまで要した時間は僅か約40秒……痺れをきらしたのか、メデューサは蛇が絡みついたような打撃武器として扱う形の杖「アロガント」で接近戦でガロに勝負を挑むが、それは、逆に自殺行為に近い。
しかし、メデューサは知らなすぎた……そして侮っていた……ガロが剣術を極め、その剣技を武器に数々の強敵を打ち破ってきたことを知り、警戒していれば、また違った結果になったかもしれないが……。

ガロの剣とアロガントが二度、交わる……そこから弾き一閃……メデューサの身体から火花が散る。

その後も、攻防一体で戦うガロに付け入る隙はなく、メデューサは終始苦戦を強いられた。

劣勢のメデューサは杖から蛇を大量発生させ、ガロを強襲するが、それを全て、叩き斬られる。
メデューサもここまで、苦戦した相手は初めての経験だろう。
だが、いかにメデューサと言えど、今回の戦いでは、明らかに分が悪いと判断したのか、紫色の光に身を包むと、捨て台詞を吐き、退散した。

「ここでやられるわけには……黄金騎士ガロ!……貴様の名前は覚えておくぞ! この私に恥をかかせてただで済むと思うな」

普通のファントムなら、怒りに身を任せて、戦闘を続け、返り討ちになるパターンの展開だが、そこはさすが計算高いメデューサだ。
不利な戦いと見るや、退散し、また現れる時は露骨な手段を使ってでも相手を苦しませる。
ガロは……鋼牙は想像以上に強かったが、もしメデューサがしっかり準備をして、再び再戦したら、今日のように圧倒はできるか分からない。
それは今日、メデューサと交戦した鋼牙が一番感じていることだろう……。

「おいおい……ウソだろ……幹部クラスのメデューサを圧倒するなんて……」

「あんたも食えない奴だな……あんたくらい強ければ、俺達の助けがなくても守り切れたんじゃない?」

ガロの鎧が天に戻るように、身体から解除されて、鋼牙の顔が露わになる。

鋼牙「いや……カオルを守りきれたのはお前ら、魔法使いのおかげだ。礼を言う……これからも皆の希望であり続けろ」

そう告げると、鋼牙はその場を立ち去ろうとする。

そんな鋼牙を俺は呼び止めた。

「あんた、俺達と一緒に戦う気はないか?」

ファントムから人間を救えるのは、魔法使いだけと思っていたが、それは間違いだったようだ。
今まで、知らなかった……俺達魔法使い以外にもファントムに対抗でき、希望になれる存在を。
もし鋼牙が手助けしてくれれば、今まで以上に希望を守れる可能性は増す。

「ファントムはお前らの敵だ。俺は干渉しない。だが、お前らとはまたすぐに会える気がする……その時は共に戦おう」

鋼牙は去っていく……今度は呼び止めなかった。
それは俺も鋼牙と同じで、またすぐに会う予感がしてならなかったからだ。
この戦いは序章にすぎないことを、俺も鋼牙も薄々、感じ取っていた。

_________________________________________________

かつて彼らは、友であり、兄妹のような存在だった……。

そして二人の男女は再び、怪奇現象の多発する高校で巡り合う……。

次回『邂逅』

その再会は戦いを意味する……。



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