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大泉洋 三谷幸喜監督の“思いつき”「信じられない」
映画「清須会議」特別対談(上)
大阪城・西の丸庭園内の茶室「豊松庵」で対談する三谷幸喜監督(左)と大泉洋
Photo By スポニチ |
映画監督や演出、脚本家などで活躍する三谷幸喜氏(52)と、俳優の大泉洋(40)。日本屈指の“大人気喜劇人”2人による夢の対談が、スポニチ本紙で実現した。大泉が羽柴(豊臣)秀吉を演じた三谷監督最新映画「清須会議」(9日公開)の裏話、2人の出会いや私生活も激白。けなし合っても、互いへの信頼と愛が伝わる絶妙トークを2回にわたり連載する。
いまや日本を代表する人気監督と役者だが、映像での本格タッグは「清須会議」が初めてだ。日本史上初、議場で歴史が動いた瞬間を描く斬新な戦国時代劇。大泉は、織田信長の後継選びをめぐり、役所広司(57)演じる主役柴田勝家と対抗する秀吉役を務めた。
大泉 大学時代から三谷ファンだから幸せだったけど、大役だし共演者が大物で不安でしたよ。
三谷 実は僕の中に、好きな俳優の系譜があって。ジャック・レモン(※注)が好きで、西田敏行さんを見た時に「日本のレモンだ」と思った。レモン、西田ときて、(三谷主宰劇団東京サンシャインボーイズ所属だった)西村雅彦、大泉と続く流れが僕の中にあった。一緒に仕事をしたいと感じてました。ちゃめっ気があり、裏では冷淡、奥底に熱い魂を持つ複雑な秀吉を、大泉さんならできると思った。
大泉 初の三谷現場で驚くこともありました。監督は結構、“思いつきの人”でね。清須会議当日の朝、秀吉と参謀の黒田官兵衛が最後の打ち合わせをする場面の撮影で、「2人に歯磨きさせたい」と言いだした。急きょ、美術さんが木の枝で当時の歯ブラシを作ったはいいけど、磨くと木の皮が大量に歯に挟まるんです。気持ち悪いけど、重要な場面だし、僕も官兵衛役の寺島進さんも我慢して磨き続けた。なのに、まさかのカットです。
三谷 どんな熱演でも必要ないシーンは残せない。心を鬼にしました。
大泉 歯磨きなんかするから、場面に緊張感がなくなって入れづらくなったんでしょ。秀吉が竹馬に乗る場面もそう!自分で思い付いたくせに、「大泉君が竹馬名人で、どうしても乗りたいと言ってるから竹馬を用意して」とうそついて、スタッフに作らせた。
三谷 監督ってのは、現場で信頼されなきゃいけない。スタッフに「監督、また変なこと思い付いて」と疎まれたくないので、大泉さんの名を利用して…。お陰で滞りなく現場が進んだのに、本番で竹馬を壊しやがって。
大泉 やがって?(笑い)急きょ作った竹馬だから壊れまして。僕は持ち前の反射神経で無傷でしたけど、スタッフは平謝り。そんな中、監督だけが「大泉君、弁償かな」って言ったんです!
三谷 スタッフの力作を壊し、修復に1時間待ち。腹に据えかねるところがありまして…。
大泉 信じられない。
――ところで、2人の出会いは?
大泉 「恐れを知らぬ川上音二郎一座」(07年、三谷演出舞台)の楽屋です。初対面から僕と遊んでくれたというか、イジってくれて感激した。
三谷 そもそも、なんで楽屋に来たの?
大泉 出演者の堺雅人さんや常盤貴子さんにごあいさつに。その時、三谷さんが僕の所に来て「今度、一緒に仕事しましょうね」って。うれしくて「ぜひ食事も」って誘ったら、三谷さんが「いや、僕はそういう付き合いは一切しないから!」とバッサリ。
三谷 当時のことは僕も覚えてるけど、面倒くさい人だなと思った。
大泉 何が面倒なんですか(笑い)。
三谷 普通に話したかったのに、“イジってくれ”って感じで。誘って断られて、そこで終わればいいのに、もう一回「いや、でも行きましょう」って…煩わしい!また「僕はそういう付き合いは…」と返すしかない。
大泉 逆!三谷さんが、いかにも「ほら大泉君、ここだぞ!また言って来るだろ?」って空気を出すから、声を掛けざるを得ない。(笑い)
「一緒に仕事を」という三谷の約束は4年後、三谷演出舞台「ベッジ・パードン」(11年)で実現。以後も舞台「ドレッサー」(13年)、今映画と大泉の出演が続く。だが主演作はまだ、ない。
大泉 僕の主演作の構想をお聞きしたい。
三谷 芸人みたいなイメージもあるけど、大泉さんは芝居がちゃんとできる役者さん。舞台でも立ち姿がとてもいい。でも…ラジオドラマかな。
大泉 立ち姿が見せられないよ?(笑い)
三谷 この人は格好つけるところがあって、それがイヤ。自分は本来カッコイイ男だ、みたいな。まずそれを封印させたい。
大泉 フハハハ!とにかくカッコ悪い役しかもらえないんです。
三谷 少し哀愁のある役もいいし、いつも明るくやってる人だから、暗い役や絵に描いたような悪漢もやらせてみたい。それをどう、ラジオドラマの声だけで表現するか見ものです。(笑い)
大泉 ハハハハ!やっぱラジオドラマですか。(続く)
※(注)1950〜70年代を中心に活躍した米俳優。「お熱いのがお好き」「アパートの鍵貸します」などビリー・ワイルダー監督作で、ユーモアと悲哀を巧みに表現できる喜劇役者の地位を確立した。「セイブ・ザ・タイガー」(73年)でアカデミー賞主演男優賞受賞。88年に米映画協会から生涯功労賞が贈られた。2001年死去。
◇映画「清須会議」 1582年、本能寺の変で織田信長(篠井英介)が死去。筆頭家老柴田と盟友の丹羽長秀(小日向文世)は、後継者に信長の三男でしっかり者の信孝(坂東巳之助)の推薦を決める。一方、秀吉は、参謀的存在の黒田とともに、信長の次男で天然ボケの信雄(妻夫木聡)を推す。命運を決する会議のため、清須に集合した面々。織田家の象徴的存在である信長の妹お市(鈴木京香)や急きょ会議メンバーに選ばれた池田恒興(佐藤浩市)らを取り込む根回しなど、両陣が5日間の頭脳戦を繰り広げる。
◆三谷 幸喜(みたに・こうき)1961年(昭36)7月8日、東京都出身。日大芸術学部演劇学科卒。脚本家としてドラマ、舞台などで活躍。監督映画は「清須会議」で6作目。
◆大泉 洋(おおいずみ・よう)1973年(昭48)4月3日、北海道出身。劇団TEAM NACS所属。96年、北海道テレビのバラエティー番組「水曜どうでしょう」で人気に。主演映画「探偵はBARにいる」(11年)で日本アカデミー賞優秀主演男優賞受賞。
[ 2013年11月7日 09:15 ]
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