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日本版NSCの密室と中国との戦争 - ロシアとの密約
日本版NSC法案が衆院特別委で可決された昨日(11/7)、中国山西省の省都太原の共産党委員会前で連続爆破テロがあった。夜は右翼の櫻井よしこがテレビに登場し、改憲プロパガンダを吐き散らしていた。後世の歴史は、この日をどう書くことだろうと思いを馳せる。ボストンで同じ爆破テロが発生したのは、半年前の4月のことだった。圧力鍋を使用し、中に入れた鉄釘などを飛散させ殺傷力を高めていた点など、ボストンの犯行と手口が酷似している。犯人はボストンの事件を見て真似ている。ボストンの事件が起きたとき、日本のマスコミは、犠牲になった市民に弔意を表し、標的とされた都市に同情を言い、悪逆非道な犯人への憤りを口にした。ボストン市に対して、テロに屈せず、今後も伝統の大会を継続するよう励ましの言葉を送った。今回、同じテロ事件なのに、報道の論調は全く逆で、テロを起こした犯人に共感を示し、社会的背景を説明して事件の必然性を語り、その動機の正当性を伝える内容になっている。格差と貧困に不満を持ち、独裁政権に抵抗する者による行動だろうと、恰も義挙のように言っている。被害に遭った市民を気遣う視線は全くない。ボストン市に対してはいたわりの言葉を送ったが、太原市に対しては、お前らが汚職と圧政を続けているから、民衆の怒りを買ってこんな結果を招いたのだと、ざまあみろと罵倒して糾弾している。


報ステの報道と古館伊知郎の口調はその典型だった。因果応報だと言い、北京に続いて太原で起き、これから中国全土で起きて共産党政権を崩壊に追い込むのだと言わんばかりの、まるで中国でのテロの連鎖と拡大を期待し歓迎するような姿勢だった。テロの犯行を正義であるかのように構図化して報じた。これは、視聴者の気分への追従でもある。中国に対して84%が好感を持たず、悪意と敵意を持って身構えている現実に対して、テレビ局が商売として「正しく」順応した報道のあり方だ。そしてまた、その日本国民の気分と感情は、2005年の反日デモ以来、日本のマスコミが念入りに大衆に刷りこんできた反中プロパガンダの産物であり、長い洗脳工作の果てに固まりついて持病となった常識と観念からのものでもある。心の病(ナショナリズムの病気)だ。マスコミ報道は、最早、過熱し先鋭化した反中世論に逆らうような意見を出せず、大衆に迎合し、それを刺激し扇動することによって商売を続けるしかできなくなっている。週刊誌も、テレビも、新聞も。麻薬中毒患者にさらに強い劇薬を与えて興奮させ、脳神経の麻痺と錯乱の度を強め、そのことによって部数と視聴率を維持している。80年前の戦前の状況と同じだ。日本の中国報道は、デフォルトでネガティブな中国叩きでしかなく、それ以外に市場的余地がなくなってしまっている。そして、中国に対する挑発でしかなくなった。

日本版NSC法案が成立し、秘密保護法案も国会を通過し、J-NSCで謀議されて策定される軍事外交案件は、すべて特定秘密の法的ガードの下に置かれ、絶対に外には漏れ出なくなる。JNSC本体か事務局の重要会議には、おそらく米国の関係者 - マイケル・グリーンかケビン・メア - が陪席すると思われるが、そんな事実が外に漏れては不具合なので、(真に重要な)会議がいつ開催され誰が出席したか、何が議論され何が決定されたかは、マスコミ報道で公表されることはないだろう。U-NSCも同じだが、この機関は、昔の日本で言えば「大本営・政府連絡会議」である。この機関は戦争政策について論議し決定するのであり、戦争すること、戦争があることが前提だ。陸軍参謀本部や大本営が、作戦についての情報を国民に流すなどあり得なかったように、J-NSCも情報をマスコミに提供することはない。J-NSCの情報はすべて軍事機密である。それは「特定秘密」にされ、国民の目から完全にシャットアウトされる。厳罰の法のカーテンで仕切られた機密空間で、彼らは自由に中国との戦争を準備し、諜報の計画を練り、謀略工作を設計するのである。どう挑発してどう戦端を開くか、部隊をどう動かすか、国内対策はどうするか、各国にはどう動き、国際社会にどう宣伝するか、その方針と施策を話し合って決めるのだ。1930年代と同じである。秘密保護法は、何よりもそのための法律であり、J-NSCのための法制だ。

特定秘密とは、第一義的には「中国との戦争」に関わる機密情報である。これから、日本国家は勢いよく戦争へ滑り出し、国家と国民は決定的に分離し、国民の知らないところで知らないことを国家が動くようになる。これまでは、国家(政府・警察・自衛隊・裁判所・皇室etc)の動きは、マスコミがそれなりに国民との間に入り、二者間のコミュニケーションを繋いでいたが、今後は、政府は国民に嘘しか言わなくなり、マスコミが事実を検証して報道することはない。1930年代と同じ。すべては戦争が終わった後で、戦後に暴露された資料情報を見て、そうだったのかと国民は真実の一つ一つを知ることになる。手元にある「図説・東京裁判」(河出書房新社)という本の中で、1946年7月に「満州侵略」に入った裁判をこう書いている。「ダルシー検事は、満州制圧から日中戦争にいたる日本軍の謀略と侵略性を具体的に追及していった」「柳条湖事件は、日本軍が満州全土を侵略するために起こした謀略事件であると断定し(略)長城以南へ本格的に侵攻するための布石を築いたと陳述した」「そして起訴事実のこの部分について、最も積極的に参与した被告として荒木貞夫、土肥原賢二、橋本欣五郎、広田弘樹、板垣征四郎、松岡洋右、南次郎、大川周明の8名を名指しした。冒頭陳述を終えた検察側は、約六十通の書証を提出し(略)証人を新たに出廷させて、日本軍内部の暗闘や、在満州の関東軍のさまざまな謀略や陰謀を次々と暴いていった」(P.67-68)。

「その内容は(略)衝撃性に満ちており、日々新聞を読む国民はただただ唖然とするばかりであった」(P.68)とある。東京裁判によって、国民は初めて1930年代の真実を知る。生々しい真実が明らかにされる前、GHQ占領下の日本国民は東京裁判に対して冷淡で、どうせ勝者が敗者を裁く政治ショーだろうと高を括って見ていた。日中戦争に関する冒頭陳述で真実を知り、衝撃を受け、東京裁判に対する関心が俄然高まり、言わば法廷への信頼度が上がって、その審理と判決を正当なものと受け入れるようになるのである。その衝撃と開眼が、平和憲法を支持する精神的基盤になる。嘗ての日本の軍国主義を自ら否定する契機となる。1930年代を通じて、国家は国民に真実と正体を隠したまま別のことをして、最終的に国民全体を悲惨な戦争に導き入れるのである。おそらく、今回も同じ道を辿るだろう。関連して、先週のロシアとの日露2+2会合について見方を述べたいが、これは中国との戦争の前哨戦であり、戦争準備の一つの布石である。後方を固めたという意味だ。日本と中国とが交戦状態になったとき、ロシアは日本とは平和条約を結んではいないけれど、局外中立を守り、中国と連携して日本を挟撃する行動には出るなという要求であり、それで合意している。要求に対しては見返りが必要となる。外交は取引だ。今回、おそらく、日本政府はロシアと秘密協定(密約)を結んでいるはずで、その中身は、従来の四島返還の方針を放棄するという約束に違いない。

ロシアからすれば、日本側から2+2の提案があり、領土問題も決着してないのに、しかも、条件なしに2+2を定期開催しようと呼びかけられたわけだから、これほど国益に有利な外交はない。なぜなら、相互に防衛閣僚の顔合わせをするということは、二国間には安全保障上の懸案事項はないということを意味し、日本の方から北方領土問題を捨象したことになる。棚上げというよりも、外国から見れば、事実上の放棄に近い。北方領土には執着しないとロシアに態度したのだ。ロシアとすれば、日本と2+2会合を重ねれば重ねるほど、日本側の北方領土への無関心を既成事実で固めたことになる。その証拠(事実)を積み上げる結果になる。日本側から四島返還の要求を立てず、2+2を重ねて日露両軍で軍事協力を深めるということは、この問題でのロシアの立場を外交上黙認するという意味に他ならず、ロシアからすれば、これに乗らない手はない。安倍晋三が国後と択捉を放棄して、ロシアとの軍事連携とロシアの局外中立の約束を得たのは、南方で中国の攻勢が激しく、米国の後退が著しく、それに対抗して一手を打って反撃する必要があったからだ。南の情勢で中国に負けていたから、北で挽回を図り、中国に対して攻勢を見せつけたのである。南シナ海問題は、中国が周到にベトナムを取り込み、フィリピンを孤立化させることに成功しつつある。もしロシアと密約を交わしていた場合、これは当然ながら「特定秘密」で、絶対に外に出ないものだ。情報を探れば逮捕され、罪状も不明なまま懲役になる。

中国との戦争が終わった後に勝者である中国に暴かれるか、その前に米国のCIAあたりから情報漏洩で判明するだろう。



by thessalonike5 | 2013-11-07 23:30 | Trackback | Comments(2)
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Commented by 上海往来人 at 2013-11-07 21:32 x
 今回の北京や太源での事件での日本の週刊誌、テレビ報道は、中国の格差、汚職、独裁政権に対する正当な抗議であるようなコメントばかりで辟易しています。
特に右翼の差配下のネット上では、中国共産党政権の崩壊前夜とか中国自滅まっしぐらとかのコメント一色で、まるでお祭り騒ぎのようなアホラシサです。
ネトウヨのバカらしさ・アホラシイで終わってしまえば良いのですが、どうやら今の新聞・テレビの風潮からすると、本当に戦争と謀略の1930年代の過去の渦中にいるような気がします。
隣国への憎悪・嫌悪・敵愾心を煽り立て、その後に戦争を仕掛ければ、一気に共産党政権が自滅・崩壊して、大陸に「民主的政権」が平穏に樹立するかのような幻想期待で洗脳されつつあるのが今の日本です。
共産党政権を打倒するのが、再びの大東亜聖戦の大義であるかのようなトチ狂った日本国・国民が正直怖ろしいです。
冷静に考えれば、1発の非核ミサイルが日本のもんじゅか柏崎を直撃するだけで、日本列島が消滅してしまう脆さであるのにです。
Commented by カプリコン at 2013-11-07 22:19 x
「アメリカも中国もそれぞれの国の行いの報いとしてテロ攻撃を受けている」のは、間違いないですよね。ただ、中国の今回続いた爆破事件は日本が今、戦争に関係ある法案をたくさん審議している最中なので、不気味さを感じています。

ロシアとの今回の協定からは「日ソ不可侵条約」が思い出されました。TVやネットでのあからさまな自国文化の持ち上げ、韓国・中国の文化や生活習慣などの罵り方からは戦前から続く中国や朝鮮などへの根強い差別意識を感じます。

それにしても、日本の平和を脅かし国民の生活を破壊するような法案が毎日のように決まっていく・・・。
TPPへの参加だけでなく減反補助金削減、他にもまだまだ・・・。
誰も幸せになれない。
そして、気がついた時には戦争が始まっているなんてまっぴらごめんです。
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