財務省 採用案内 2013
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46Message職員からのメッセージ<大学編>(問1)(問2)(問3)名目4%成長率が実現すれば増税なしに財政再建ができるとの意見もあるが、いまのままで財政は大丈夫か(YesかNoか)。公的債務残高(対GDP)が先進国史上最高水準に達しているにもかかわらず、長期金利が低い理由は何か。2050年には、1.2人の現役世代で1人の高齢世代を支える時代が来るが、いまのシステムのまま、日本経済はそのような時代を克服することができるか(YesかNoか)。第1線の研究者が集う研究組織の一員に成長のみで財政再建ができるか政策の質をさらに高める「試み」小黒 一正一橋大学経済研究所准教授[平成9年入省]PROFILE●平成9年●平成11年●平成12年●平成13年●平成15年●平成16年●平成17年●平成20年証券局総務課広島国税局調査査察部金融庁総務企画部京都大学大学院経済学研究課関税局調査保税課課長補佐関税局監視課課長補佐財務総合政策研究所研究部(財)世界平和研究所研究部「政策」と「研究」に境界はない~高度な政策立案が求められる時代~ いま日本は、世界に類を見ない少子高齢化が進む中で、公的債務残高(対GDP)は先進国史上最高の水準に達し、財政・社会保障の抜本改革は喫緊の課題になっています。また、改革の停滞により、孫は祖父母よりも1億円も損をするという世代間格差はさらに拡大しつつあります。 このような状況の中、私は今、一橋大学経済研究所・世代間問題研究機構に出向し、准教授を務めています。世代間問題研究機構は、2007年に、一橋大学経済研究所に新たに設置された組織で、内外で活躍する第1線の研究者等を集め、財政・社会保障を含む「世代間の問題」を解明し、具体的な政策提案を行うことを目的としています。 私はこの組織で、子育て支援の効果や財政破綻の確率、また、同じ大学の教授陣との共同研究として、国債のデフォルトリスクと財政再建ルールの関係等についての理論的研究を進めていますが、実際の研究は奥が深く、参考文献を読み込むだけでも、時間は瞬く間に過ぎる日々を過ごしています(もっと時間を…)。 研究というと、難しいイメージがありますが、私が設定している問題意識の裏側は極めて単純です。そこで、学生の皆さんにいくつか質問させてください。 さて、第1線で活躍する研究者も含め、この質問に明確な回答をすることができる方々は何人いるでしょうか。いまの私の浅い見識では、(問1)は明らかに「No」であり、(問2)についても一定の回答を持ち合わせていますが、(問3)の回答は模索中です。ですが、これらは、課題が山積するいまの日本が回答を求められている質問の一部に過ぎないように思います。 また、もし(問1)の回答が「No」であるならば、「Yes」と思っている方々に、その理由を論理的に説明し、説得する必要がでてきます。そのためには、「思い込み」は禁物であり、科学的な手法を用いつつ、過去の学術研究をはじめ、マクロ経済学や内生的成長理論などの先端研究、場合によってはモンテカルロ法と呼ばれるコンピューター・シミュレーション手法についての知識も吸収し、その概要を誰でも分かりやすい形で説明する水準にまで加工する努力や能力も求められます。 これは、通常の行政現場ではなかなか難しい作業ですが、財務省は、内部に抱える財務総合政策研究所の強化のみでなく、大学への出向等を通じて「政策」と「研究」の境界を取り払い、このような問題にも何とか回答を模索していこうという強い意志をもっているように思います。 それは、経済のグローバル化が進む中で、急速な少子高齢化に直面している日本の行政が極めて高度な政策立案の能力が求められており、財政というツールによって国家のあらゆる政策に関与する財務省としては、財政・社会保障のみでなく、成長戦略や教育・労働市場のあり方も含め、政策の質的向上が中長期的に日本の将来を左右する可能性が高いと判断しているからです。 このような財務省の幅の広さについても、ぜひ官庁訪問で感じとってほしいと思います。
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