発売から3ヵ月近くが経った今も、いまだに人気を集めている「AKB48」の32ndシングル「恋するフォーチュンクッキー」。33rdシングル「ハート・エレキ」が発売されたにも関わらず、根強く支持されている。ファンの間でも“神曲”として評判が高いが、実際に街中などで耳にする機会も多い。

■ロングヒットの要因 "ミュージックビデオ現象"

 大手カラオケチェーン「JOYSOUND」のランキングによると、週間&月間とも総合1位を記録しており、これからの忘年会シーズンに向けてますます人気を集めそうだ。旬が短いとされる昨今の音楽業界では珍しいロングヒットを記録している同曲だが、その特徴の一つと言えるのが“ミュージックビデオ現象”にある。

 「HKT48」の指原莉乃ら選抜メンバーがパフォーマンスする公式動画が公開されると、親しみやすくノリの良い楽曲やキュートなダンスが評判となり、ファンを中心に同曲を愛する人たちや団体、組織が次々に同曲のミュージックビデオをモチーフにした映像を大手動画投稿サイト「YouTube」に投稿。

 この現象をAKB48サイドが好意的に受け止めたことで、現在「YouTube」の「AKB48オフィシャルチャンネル」には、佐賀県の古川康知事や県職員らがダンスを披露している「佐賀県庁バージョン」や兵庫県の川辺郡・猪名町の町民有志がiPhoneだけで撮影したという「猪名川町バージョン」、神奈川県の黒岩祐治知事をはじめとする神奈川県職員らがパフォーマンスする「神奈川県バージョン」など、30作品近くが“公式動画”としてアップされている。

■海外でも”恋チュン”旋風

 しかも、AKB48グループのメンバーたちがまったく出演していない、“副産物”とも言うべきこれらのメンバー不在の公式動画が3000万回を超える再生回数を記録。ここまで来ると一種の社会現象だが、“恋チュン”のブームは日本国内のみならず、海外にも広がっているとか。

 「『YouTube』には、アメリカのファンがイギリスやインドネシア、オーストラリア、スウェーデン、フランス、ベルギーなど世界中の同志とコラボして自主製作した『ファンバージョン』もアップされていますが、『恋するフォーチュンクッキー』は特に海外でも人気が高い。日本の文化に造詣が深いアメリカやフランスはもちろん、何故か遠くバリ島でも最近よく繁華街で流れているそうです」とはレコード会社関係者。

■バリ島でのブームをけん引 「JKT48」

 バリ島でブームとは意外な印象もあるが、調べてみるとインドネシア・ジャカルタを拠点とする海外姉妹グループ「JKT48」の影響が大きいようだ。同曲は「JKT48」の楽曲として仲川遥香がセンターを務め、「Fortune Cookie in Love」のタイトルで現地でもリリースされており、これが大ヒットしているという。

■懐かしさを感じさせるメロディー

 世界中で旋風を巻き起こしている同曲の魅力を芸能評論家の三杉武氏はこう分析する。

 「どこか懐かしさすら感じさせる、老若男女に受け入れられる耳に心地よいメロディーや前向きな歌詞、見ているだけで楽しくなるダンスなど“多幸感”にあふれているのが『恋するフォーチュンクッキー』の最大の魅力でしょう。メロディーラインも、ダンスも、決して複雑なものではないですが、聴いている人や見ている人を魅了する要素が多分に含まれている。近年まれにみる“参加したくなる曲”ですね」

 “恋チュン”ブームはまだまだ世界を席巻しそうだ。

(文責・JAPAN芸能カルチャー研究所)