米グレンデール市で、「慰安婦像」をめぐる問題が再び燃え上った。設置慎重派として知られる市長が、姉妹都市である東大阪市に「謝罪文」を送付したと地元紙や韓国メディアで報じられ、猛攻撃を受けている。
グレンデール市と東大阪市は1960年以来姉妹都市の関係にある。ところが慰安婦像設置に際し、グレンデール市では東大阪市を含む各姉妹都市が協力するという趣旨の文章を公式サイトに掲載、「事実無根」として東大阪市が2013年7月25日付で抗議文を送付していた。
「日本のインタビューで慰安婦像を設置したくなかったなどと述べた米グレンデール市長が、今度は日本に謝罪文まで送ったことが明らかになりました」
「韓国系住民たちは強く反発しています」
男女のキャスターが、硬い表情でニュースを読み上げる。韓国の大手テレビ局MBCは11月6日、グレンデールのデイブ・ウィーバー市長の「謝罪」問題を厳しい論調で伝えた。
この事実は、2日に地元紙グレンデール・ニュース・プレスが最初に報じたものだ。これが在米韓国人向け新聞などで「『慰安婦像建立』を謝るなんて……」などとさらに煽り立てられ、韓国メディアでも今週に入り相次いで大きく取り扱われている。
問題の書簡の中でウィーバー市長は、
「本件は日本と韓国の間の国際的な事項であり、グレンデール市がどちらかに偏った形で関与するべきではない」
という立場から、慰安婦像の設置に自身は反対しているという以前からの立場を繰り返すとともに、東大阪市側からの上記の抗議に対し釈明、そして、
「今回のような問題が、東大阪市および日本とグレンデール市の間に深い溝を作ってしまった事を残念に思っています。なんとかしてこの状況を変えたいのですが、私にはその権限が与えられておりません」
と述べている。原文では「regret(残念、遺憾)」といった表現で、ただちに謝罪といえるかは微妙だが、韓国メディアでは「謝罪」と決めつけられてしまっている。
東大阪市によれば、この書簡は10月1日付のものだという。これまで米国、韓国ではほとんど取り上げられていなかったが、11月に入り地元で話題となり、にわかに問題化したものらしい。
ウィーバー市長は当初から慰安婦像設置に慎重な立場を取っており、市議時代に行われた設置の採決でも、ただ1人反対票を投じていた。市長就任後も、7月の除幕式には出席していない。9月には日本の保守系メディア「チャンネル桜」の取材に応じ、
「当市に住んでいる日本人はほとんどいないが、韓国人は1万2000人以上住んでいる。誰が力を持つか、想像すれば分かりますよね」
「私は日本人が好きだが、我々は、今となっては『日本で最も憎まれる都市』になってしまったと受け止めており、非常に遺憾に思っている」
などと発言、特に韓国紙から猛烈なバッシングを受けていた。
その矢先の「謝罪」問題は地元でも波紋を広げている。市議たちからは市長の「スタンドプレー」だなどとして、
「ウィーバー市長の意見は、ほかの議員の立場と正面から対立する。(慰安婦像の存在ではなく)それこそが葛藤を起こす原因だ」
「すべてを満場一致で決めることはできないとはいえ、いったん決まったことは尊重されねばならない」
などといった声が上がる。5日には、韓国系住民などが市内で「ありがとうグレンデール」などといったプラカードを掲げてデモを行い、その後開かれた議会でも反対派議員と一緒になって市長を「吊るし上げ」にした。ウィーバー市長は自らへの非難を、ただ黙って聞いていたという。
東大阪市文化国際課の担当者は、10月1日付の書簡が今になってこうした騒動に発展していることに驚いた様子だった。もっとも同市では、上記の書簡は「こちらが抗議した内容について直接的に返答したものとは取れなかった」として、31日付で再度抗議を行ったところだという。今後は姉妹都市としてのあり方を再検討することも含め、引き続きグレンデール市側の動きを引き続き注視していくとした。
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