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もんじゅへの道路、土石流対策急務 寸断で住民一時孤立、不安消えず
(2013年10月19日午前7時01分)
台風18号の大雨で日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市白木)につながる一本道で相次いだ土砂崩れは、1カ月が過ぎた今も住民に不安を残している。県道、もんじゅ敷地内道路の2カ所とも土石流とみられ、対策が急務だ。白木―浦底の迂回(うかい)路の完成は6年後。住民は早期整備を求めるとともに、現道の対策強化を望んでいる。
美浜町丹生の県道の土砂崩れ現場は、白木トンネル入り口から南に百数十メートルの地点。泥水や倒木などが県道を寸断し、19世帯、60人余りが住む白木は一時孤立した。元市議で長年区長を務めた橋本昭三さん(85)は「雨が降るたびに不安になる。県はしっかり気を配ってほしい」と住民の思いを代弁する。
現場の斜面は岩石があらわになり、谷のような筋が走っていた。丹生の民家を直撃、女性1人が死亡した土砂崩れ現場にも程近く、県敦賀土木事務所の高鳥佐太一所長は「民家を襲った土石流と同じ形。谷を伝うように泥水が流れ続け、土砂や木の撤去がなかなか進まなかった」と話す。
県は敦賀半島の県道で2010、11年度に防災点検を行い、19カ所で斜面対策が必要とした。12年度から3年かけ、モルタルの吹きつけや擁壁設置などの対策を順次進めている。ただ、今回の土砂崩れ現場は対策箇所に入っていない。このため県は災害復旧で、小さな砂防堰堤(えんてい)を造る方向で検討している。来春には工事に着手し、夏ごろまでに完成したい考えだ。
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もう1カ所は、もんじゅ敷地内を通るトンネル南側入り口付近。原子力機構によると、ここも土石流とみられる。土砂や倒木、枝などが道路をふさいだだけでなく、ケーブルの断線により国へのデータ送信が止まるトラブルも重なった。
「ご心配をおかけしておわび申し上げます」。9月26日、河瀬一治市長にもんじゅの改革計画などを説明するため、市役所を訪れた文部科学省の幹部は頭を下げた。
機構は、土のうを置くなどの応急措置を取り、具体的な対策は検討中。大雨の場合は体制を強化して対応するとしているが、地元のあるお年寄り女性は「2カ所も通れなくなったのはショック。もし事故と自然災害が重なったら、事故対応、住民避難が難しくなる」と不安を口にした。
通行止めの発表も遅かった。未明の発生後、早朝に通行止めとしたが、対応に追われていた県は昼ごろ、原子力機構は午後にずれ込んだ。
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原発6基が立地する敦賀半島の原子力防災道路をめぐり、県は先端部を通る白木―浦底(4・9キロ)の迂回路を本年度に着工し、19年度開通する見通しを示した。
橋本さんは「一日も早く完成させてほしい」と強く要望。さらに「今回の大雨で敦賀半島には至る所で谷のような筋を通って土砂が流れ出た。大雨になれば、また土砂崩れによる寸断が起こる危険性がある」と現道の対策強化も求めている。
県は台風26号接近に備え、美浜町丹生の土砂崩れ現場に大きな土のうを積み、近くに重機を置くなどの対応を取った。高鳥所長は「対策は追いかけっこみたいなもので、これで良いというのはないが、今はとにかく迂回路を早く造るしかない」と話している。
