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戦時中の強制徴用で日本企業に賠償命令 日韓専門家の見方

2013年11月03日 22時06分53秒 | Weblog


戦時中の強制徴用で日本企業に賠償命令 日韓専門家の見方
日本経済新聞
2013/11/2 3:30

 戦時中の強制徴用をめぐり、韓国で日本企業に賠償を命じる判決が相次いでいることについて、日韓の専門家に評価を聞いた。
■「韓国政府が救済怠った」 浅田正彦・京都大法学部教授 

――韓国での戦時徴用工問題の再燃をどのように見ますか。

 「日韓請求権協定の締結によって、当時、無償・有償で計5億ドルが日本から韓国に支払われた。
韓国政府はこの資金をもとに植民地支配を含む被害者への救済を行わなければならなかったが、歴代政権は十分に被害者の救済をしてこなかった」
 
「今なお韓国国民が救済が不十分だと言うのなら、それは韓国政府の不作為の結果にほかならず、その責任を日本に転嫁しようとしているのが問題の構図だろう」

 ――訴訟の当事者は日本企業ですが、日本政府はどのような対応ができるのでしょうか。
 「判決が執行された場合、韓国が自国内で日本国民を公正に取り扱う国際法上の義務に反し、不当な司法判断によって企業に損害を与えていると主張することは理屈上は可能だ。

どの国も、自国民の外交的保護を行う権利があるからだ。だが、国際司法裁判所や仲裁で問題の解決を図ろうとすると2国間の合意がなければならず、現状では実現性は低いだろう」
 
――国際法上の手段はないのでしょうか。
 
「最後の手段としては『復仇』もしくは『対抗措置』と呼ばれる手段がある。

自国民が相手国で違法行為による損害を受けた場合、同等の行為によって相手国に損害を与える行為で、国際法上認められた適法行為だ。

例えば、相手国が自国製品に不当な関税を課せば、同程度の不当な関税を相手国の製品に課すのも類似の措置だ。もちろん武力行使は認められていない」
 
「ただ、相手国の行為と均衡が取れた措置でなければならず、さらに日本国内での手続きも必要になるので簡単ではない。最終的には政府判断になる」
 
――日本政府の対応をどう見ますか。
 「『請求権協定により解決済み』と言うだけではだめだろう。

協定で国家と国民の請求権の問題を完全かつ最終的に解決したことだけでなく、被害救済を念頭に当時5億ドルを支払ったことなども改めて強調し、『それでもなお』と言うのなら、それは韓国政府が対応すべき問題であることを明確にすべきだろう」

「反対に、絶対にやってはいけないことがある。日本政府や企業が賠償をすることだ。

請求権協定で全てが解決したのではないことを自ら認めることになって、雪崩を起こしたようにあらゆる問題が再燃するだろう。


言うべきことをはっきりと言い、自国民の救済を怠ってきた韓国政府側にボールを投げかえす必要がある」
 
――相手は「心からの謝罪」を求め続けています。
 
「難しい問題だ。従軍慰安婦の問題でも、アジア女性基金との関係で償い金に添えて日本の首相がおわびの手紙を書いたが、韓国内では基金からお金を受け取らないよう圧力をかけた団体もあったと聞く。何を言っても一緒という恐れはある」

■「財団設立で和解を」 魏哲煥・大韓弁護士協会長
 
――2012年5月の大法院(最高裁)判決以降、相次いでいる日本企業への賠償命令をどうみていますか。

 「肯定的に評価している。
日本では同様の訴訟で原告敗訴が確定しており、結論が異なる。それは両国の憲法が異なるからだ。

韓国憲法は日本の植民地支配を不法だったと規定する。韓国の憲法精神に反する日本の最高裁判決を受け入れることはできない。

日本側は国家総動員法や国民徴用令など当時の法令に従った措置だと主張するが、強制徴用は民族の正統性に反する行為だ。
韓国において一連の判決は、誰もが納得できる内容だ」

 ――賠償請求を含む請求権の問題は1965年の国交正常化時に結んだ日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」というのが日本政府の立場です。

「非人道的な不法行為や植民地支配に伴う個人の損害賠償請求権まで協定で消滅したとみるのは難しい。

日韓両政府どちらからも当時の外交交渉で個人の請求権をどう扱ったかの資料がでてこない。

当時の被害者はまだ生きており、被害は現在進行形だ。『過去のできごとを現在の基準で判断するのはおかしい』という指摘には同意できない」
 ――韓国政府も、強制徴用の被害補償は国交正常化時の経済協力金に含まれているとの見解で、韓国司法の判断と食い違っています。
 


「行政府は条約の有権解釈はできるが、最終的には大法院の判断が優先する。韓国政府は現在、裁判を見守る姿勢だ。最終的には判決を尊重するしかないだろう」

 ――このままでは深刻な外交問題に発展してしまいます。
 
「大韓弁護士協会は『財団方式』による和解を提案している。

具体的には両国の政府と関連企業が資金を拠出して財団を設立し、被害者に賠償する。

日本側は新日鉄住金などの被告企業、韓国側はポスコなど国交正常化時に日本が供与した経済協力で恩恵を受けた企業が参加する枠組みだ。

ポスコは昨年、資金拠出の意向を表明した。解決案は韓国政府にも伝えてある」
 
「政府に申告した強制徴用被害者は22万人以上いる。すべてを裁判で解決するには時間がかかる。

原告が選択することだが、日本企業があくまで賠償支払いを拒めば、韓国内の資産の差し押さえもあり得る。

強制執行になれば企業も困るし、お互いの国民感情も悪化する。

投資や技術協力など経済にも影響がでる。そうした事態を回避するためにも、未来志向的な解決の道を探るべきだ」
 
――賠償の名目で日本企業が資金拠出するのは難しいとの指摘があります。財団方式は最終的な解決になり得ますか。
 
「被害者が賠償を求めているのは明確だ。

しかし、表現の仕方などは調整可能ではないか。財団ができた後でも、被害者があくまで訴訟するといえば止められない。円満解決のために被害者を説得することが財団設立の前提になる。

長年、訴訟などで支援してきた大韓弁護士協会は被害者らと信頼関係がある」
 
――日韓請求権協定による仲裁や国際司法裁判所(ICJ)での決着も選択肢ではないですか。
 
「問題解決の助けにならない。自然権である個人請求権は国家間の協定で剥奪できないというのが大法院の判断だ。

仲裁に従えといわれても被害者たちが受け入れるのは難しい。個人の請求権に関する問題はICJでの議論にそぐわない」
(聞き手はソウル支局長 内山清行)


ジャンル:
政治
キーワード
植民地支配 国際司法裁判所 国家総動員法 国民徴用令 現在進行形 韓国の憲法 アジア女性基金 外交的保護 従軍慰安婦 日本経済新聞
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