佐藤可士和氏がGUというファッションブランドのロゴをリデザインしたそうです。まぁ言ってしまえば元のロゴも大して良くはないのですが、その新ロゴというのが笑止千万な出来なので徹底的に図解して非難したいと思います。
まずはその新ロゴ。和文の方もグリッド多用しまくりで個人的には酷いと思うのですが、まぁ欧文書体デザイナーの自分としての本題はGUなので和文は さておきます。またネットでは色がIKEAだとかTSUTAYAだとかEUだとかブックオフだとか色に関してのツッコミが多いようですが、やはり自分とし ては文字の形そのものに注目したいと思います。あ、あとGUの配置も右寄りすぎますが文字の形そのものに以下同文です。なにせブログをなかなか継続して書 けないこの自分を書かせる気にさせるほど酷いんですから。
ソースの画像は低解像度で図解にはうまく使えないかと思ったのですが、イラレで試しに再現してみたら完璧に同じものが出来ました。あとでそのレシピも解説します。
GUのロゴは幾何学的で、Futuraそのまんまではないか?という意見があるそうですが、Futuraではありません。というかFuturaその まんまでも何も悪いことはありませんし、そのほうが百倍マシです。とりあえず商用の幾何学的サンセリフでいろいろGUと打ってみました。ちょっと宣伝です が、Harmonia Sansは2011年発売という最近の書体で、個人的にはかなりお気に入りのものです。ぜひともチェックしてみてください。
幾何学的サンセリフは一見すると直線と円弧だけで作られたような印象がありますが、本当にそうやって作るといろいろ不自然に見える部分が出てきま す。なので書体デザイナーは「幾何学的に見える」ようにするために、さまざまな視覚調整を施します。ちなみにこの視覚調整はプロのデザイナーだから知って いるということではなく、タイポグラフィの授業でいの一番に教わるようなことです(少なくとも学生の間に)。自分が卒業した武蔵野美術大学の視覚伝達デザ インでは一年生前期で習いました。ここではGUの印象が最も似ているHarmoia Sansを使って解説しましょう。
さて、GUに関しての視覚調整の内容は以下の通りです。
線幅の調整。縦線と横線が同じ幅だと横線の方が太く見えてしまうので、横線はやや細くなる。また曲線と直線では、曲線の方が少し細く見えてしまうことが多いので、曲線はやや太めにする(これはクリックして拡大して確認してください)。
真円率の調整。真円は人の目には菱形に見えるため、やや四隅を膨らませる。円とGを重ねる(それぞれ赤と黒)とGの方が膨らんでいる(黒い淵が出ている)ことが分かる。また円形はGのプロポーションとしては広すぎるため、やや狭める。これは書体によるが。
また直線と曲線が繋がる部分(Uの下半分)は、単純に直線と円弧を使うと接続部が角ばって見えてしまうため、なるべく緩やかに繋げる。ちなみに文字 以外の領域では、高速道路やジェットコースターでも同様の調整が施してある(円弧から急に直線に切り替わるように道路を設計すると首の骨が折れてしまうほ どの衝撃になるという)。これはクロソイド曲線なんかを調べると理解が深まるはず。
佐藤可士和氏の作ったロゴにはこれらが一切見られません。全てが純粋な幾何学で作成されており、デザイナーとして恥じるべき仕上がりになっていま す。それでは張り切ってGUのロゴのレシピを解説していきましょう。さぁ、皆さんもお手持ちのイラレを立ち上げて!無かったら定規とコンパスでも構いませ んよ!上に書いてあることは一旦全部忘れましょう!
縦線と横線の幅は同じ!
Gは真円で、外側の直径は線幅の6倍。単純明快なり!
Gの横棒はちょうど中央からスタートするよ!横棒の上のアキも線幅と同じ!
Uの幅は線幅の約5倍!(ピッタリ5倍かと思いましたが、さすがに広すぎると判断したんでしょうか?それとも元の画像が粗くて、本当は5倍でいいのか?分かりませんが4.8倍ぐらいです)
Uのケツも真円!
はい、一丁上がりです。文字通り「こんなもん俺でも出来るわ」と言っていいロゴです。機械でも作れるんじゃないでしょうか。
プロのデザイナーがどれだけ文字を自然に見せるために労力を割いているかを一切踏まえず、仕事をさっさと終えるために理屈に頼って作業するデザイ ナー、それが佐藤可士和です。彼の作った「ロゴ」や「書体」はほぼ全てグリッドや幾何学に頼って作られたものです。「可士和氏が作ったにしてはおかしい なぁ」みたいな意見もネット上で見かけましたが、自分に言わせれば、可士和氏はいつもこんな感じですよ。「前提、前例は全て疑い、本質を探っていく」なん てカッコいいことを言ってるらしいですが、担当したクライアントを焼け野原にして去っていくだけの方が多いような。個人的には、一度可士和氏にお願いした クライアントに「またお願いしたいか」を聞いてみたいところであります。
また色の選択に関しても同じことが言えるかと思います。明治学院大学のヴィジュアルアイデンティティーを担当した佐藤氏は真っ黄色を選んだ理由に 「Yellow 100%は業者に指定しやすくブレがない。カラーマネージメントの観点から楽だから」といった旨のことを言っています。彼が他の作品でも原色を好む理由 は、文字にグリッドを使うのと同様、「その方が楽だから」ということでしょう。「その方が美しいから」ではありません。こんな低質なデザインで大金をふん だくるからこそ、そりゃぁ「デザインの対価なんて無料でも良くないか?」と思われても仕方がないでしょう。実際に無料でデザイナー募集を始めちゃった大阪 市天王寺区と、可士和氏が大阪府市の特別参与に就いているというのはなんとも皮肉なもので…(天王寺区はその後完全に募集を仕切り直して、良い方向に舵取 りを始めていると感じていますが)。まぁ言いがかりもいいとこでしょうが。
デザインにおいて数学的、幾何学的な補助は確かに必要ですし、これを疎かにする人間も同様に非難されるべきだと思います。ただしそういった理屈は、 あくまで目的のビジュアルを生み出すための「補助」であり、理屈だけで完成はできません。最後には冴えた眼を持つプロの手が入らなければいけません。上の 図解からも分かるように、それらプロの技は一見すると非常に些細な修正かもしれませんが、その差は誰にでも分かります(一般の方はその違和感を言葉で説明 できないだけ、または知ってても自分で実行できないだけ)。これは伝統的な古くさい技というわけではなく、理屈を超えて作品に命を吹き込むために絶対必要 なステップであり、いつの時代も求められるものです。ちゃんとした技術を持ったプロには正当な対価が支払われて然るべきですし、それを備えずに名前ばかり 大きくなっているような輩の化けの皮はさっさと剥がされて然るべきなのです。
あれ、ところでこれもGU?
うん、どう見てもGU。
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